ナガトモ: どのようなことがきっかけでBybitを創業することになったのですか?
ベン: 私はとてもラッキーでした。Bybitを創業する前に、XMという外国為替の取引所にいました。今では有名な企業ですが私が参加した2010年当時は創業期で有名でもなく、私は7番目か8番目のスタッフとして入社し、中国のジェネラルマネージャーとして6~7年働きました。
2017年にICOバブルなどの影響で暗号資産について知ることとなったのですが、将来この業界は今よりもっと大きなものになる確信がありました。その後、Bybitを創業することになった大きなきっかけは、自分自身が暗号資産のトレーダーとして活動していた時の経験です。
当時、取引所はいくつかあったものの、選択の幅も少なく、使い勝手のよいシステムを提供している取引所はありませんでした。市場が動いたり、BTCが大きく動くたびにシステムが停止することもよくありました。
私がBybitを創業したのは単に顧客(ユーザー)にもっとよい取引経験を提供したかったからです。当時、外国為替取引で当たり前にできることが暗号資産取引ではできませんでした。
ナガトモ: 世界Topの取引所を経営しているベンさんは世界中を飛び回っており多忙を極めていると思いますが、休みの日はどのようにすごしていますか?
ベン: スポーツをしたりジムで体を鍛えたりしています。テニスもしますし、冬は家族を連れてスキーやスノーボードをしにニセコに行きます。週末は取引先が訪ねてくるので会食や飲みに行くことも多いです。
ナガトモ: ベンさんの趣味や最近個人的にハマっていることがあれば教えてください。
ベン: ここ数年はウエイクボードにハマってます。シンガポールは川がないので基本的には海で楽しみます。マレーシアとの境目によいポイントがあるので週末に船を出して仲間と楽しむことも多いです。
ナガトモ: Bybitがここまで大きく成長した最も大きなターニングポイントを教えてください。
ベン: 2021年の年末がターニングポイントだったと思います。我々は2018年から2021年まではデリバティブに特化した取引所を運営していました。パーペチュアル契約やインバース契約などです。
日本人もレバレッジ取引が好きですよね。2021年末にWeb3.0というあたらしい言葉、概念が登場したことで我々は暗号資産が単なるデジタル通貨ではないとうことに気付きました。どうすればもっとBybitを大きく成長できるのか、チームと毎日考えました。
たとえば暗号資産取引所に新規で入ってくるユーザーが100名いるとしたら、トレーダーはそのうちの5名ほどでしょう。大多数の人たちは現物取引やそのほかのものを好みます。我々が取引所として拡大し続けるにはトレーダー以外のユーザーによい体験を提供できるサービスの構築が必要でした。
現在提供しているSpot、Fiat、Earn、Bybitカード、などは2021年の年末に決断した追加サービスでした。これはとても大きな決断であり難しい決断でした。しかしその決断が今のBybitの成長につながっていると思います。
ナガトモ: 世界Topの取引所としての地位を確立する為に特に重視している戦略や差別化ポイントがあれば教えてください。
ベン: 実行力と効率性です。我々は決断してから実行するまでとても早い組織です。あたらしくほかの取引所からBybitに来たシニアマネージャーからのフィードバックを聞いてもBybitの実行スピードには驚いています。今日決めたことが明日にはスタートするようなスピード感です。
あたらしいプロダクトについてもチームでの議論を行いオンラインに公開するまで通常2-3週間で完結します。暗号資産業界は現在も急成長しており、あたらしいことが次々に起こります。つい最近はミームコインが流行りました。その前はNFTが流行りました。
我々は世界Topの取引所として業界で最も話題になっているものは何なのかを常に最初にキャッチアップすることが求められます。このように、我々がスピード感を持ってさまざまなアイデアを実行するからこそユーザーが集まってくると考えています。
戦略の部分でいえばKOLマーケティングもその一環です。Red Bull Racing(F1)のスポンサードやそのほかの取り組みを行っていますが、結論、何より重要なものはチームの迅速な動きです。
▶出典:Digital PR Platform
ナガトモ: 次は規制についてのお話しです。今Bybitはリトアニア、キプロス、オーストラリア、ニュージーランド、カザフスタン、UAE、オランダ、モーリシャス、ケイマン諸島でライセンスを取得されておりますが、今後展開を狙っている国はどちらですか?
ベン: 今後はヨーロッパ、インド、南アフリカ、マレーシア、ナイジェリア、インドネシア、香港、台湾でのライセンス取得を実行していきます。
ナガトモ: これらの地域で特に注目している場所はどこですか?
ベン: 今1番注力しているのはヨーロッパです。ヨーロッパは世界のどの取引所にとっても非常に大きなマーケットです。ですので現在ヨーロッパの暗号資産規制をしているMiCAやMiFIDなどのライセンスの取得を進めています。
ナガトモ: 欧州内のいくつかの国ですでにライセンスを取得しているにもかかわらず、ほかの欧州の国でもライセンスを取得するのはなぜですか?
ベン: 我々はスピード感を持ってMiCAライセンスを取得したいので、規制当局を選ぶ際にはチームやインフラが整っていることが最低条件になります。早くライセンスを取得できるということはそれだけライバルとの差別化ができることになります。そのため、私たちはさまざまな国の規制当局(MiCA チーム)と議論を重ねました
ナガトモ: ヨーロッパでは暗号資産の市場規則であるMiCAが段階的に始まりますが、この規制の動きは業界にどのような影響をもたらすと考えていますか?
ベン: これは非常に大きな影響を与えると思います。なぜなら、これまではヨーロッパの各国それぞれの国の規制にあわせたWebサイトを作り、ルールに則って運営を行わなければならない状況だったのでとても大変でした。
ですが、MiCAライセンスですべてがひとつにまとまれば、どの国でもルールが統一されるので運営がとてもやりやすくなります。さらに、MiCAライセンスを取得した場合には銀行との接続も可能になる為、より多くのユーザーが国を跨いで流入することになるでしょう。我々の場合、「Bybit.eu」ですべてが一元管理できることは大きなメリットです。
このように、よい面もあれば悪い面もありますが、間違いなくいえるのは多くのユーザーがオンボーディングできるようになるということです。