トレジャリーではない、イーサリアムの“エバンジェリスト”へ ——「クシム」改め「HODL1」のDAT戦略の本質と覚悟 田原 弘貴 インタビュー

2026/01/30 10:00
ナガトモヒロキ
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トレジャリーではない、イーサリアムの“エバンジェリスト”へ ——「クシム」改め「HODL1」のDAT戦略の本質と覚悟 田原 弘貴 インタビュー

きっかけは中小企業診断士の勉強会

サマリ

1. 「トレジャリー企業」ではなく、イーサリアムの“エバンジェリスト”になるという宣言

HODL1(旧クシム)は、DAT(デジタル資産トレジャリー)を単なる財務戦略としてではなく、イーサリアムという中立的な金融インフラを社会に根付かせるための手段と位置付けている。深い技術知見を持つ開発チームを強みに、日本がグローバルなイーサリアム経済圏から分断される事態を避けるべく、「思想を伴ったDAT」を掲げている点が最大の特徴である。

2. DATは目的ではなく手段——技術普及・保有・事業実装を循環させる三位一体モデル

同社のDAT戦略は、①イーサリアム技術の開発・コンサルによる採用拡大、②自社によるETHの本格保有と株主還元、③将来的な自社プロダクトを通じたエコシステム拡張という3つの柱で構成されている。ETHの価値向上と自社価値向上を連動させる「自ら好循環をつくりにいく設計」が、他のDAT企業との差異となっている。

3. 社名変更「HODL1」に込めた覚悟——アジアNo.1のETH戦略企業へ

社名を「HODL1」へ変更するのは、イーサリアムに長期コミットする姿勢を象徴的に示すためであり、「DATとして完璧であり、DAT以上の存在になる」という意志表明でもある。短期的な価格変動や話題性ではなく、日本におけるイーサリアム・レイヤー2を含む基盤整備に関与し、社会的に意味のある金融インフラを育てる存在として、アジアNo.1のDAT戦略企業を目指している。


現在、国内外の金融領域で「DAT(デジタル資産トレジャリー)」という言葉が急速に広まりつつある。しかし、その多くは財務戦略としての暗号資産保有にとどまり、思想や事業との接続が曖昧なケースも少なくない。

そうしたなか、「トレジャリーではなく、イーサリアム(ETH)のエバンジェリストでありたい」と明言する企業があらわれた。

東証スタンダード市場に上場する株式会社クシムだ。同社は1月末の株主総会を通じて社名を「クシム」から「HODL1(ホドルワン)」へ改める予定で、イーサリアムにフルコミットする覚悟を示している。なぜイーサリアムなのか。

なぜ今、DAT戦略なのか。そして、同社はどこへ向かおうとしているのか。今回、代表の田原氏に思想の原点からDAT戦略の全体像や野心などを率直に語ってもらった。

ナガトモ:田原さんが暗号資産やブロックチェーンに関心を持つようになったきっかけを教えてください。

田原弘貴(以下、田原):きっかけは大学時代です。当時は中小企業診断士の勉強をしていて、関連するアルバイトもしていました。その流れで中小企業診断士の勉強会に参加していたのですが、ある時「講師をやってほしい」と頼まれたんです。

ちょうどその頃、法律とAI・データ分析の両方を勉強していたので、これらをテーマとして話そうとしたら僕の前の講師の方が同じテーマを扱っていて。そこで、「ビットコイン(BTC)やブロックチェーンならまだ誰も知らないだろうし、新規性があって面白いんじゃないか」と思ったのが始まりです。

ナガトモ:そこから本格的に勉強を始めたということですね。

田原:2016年の終わり頃に、勉強の一環としてビットコインやイーサリアムを少し買ってみたり、今となっては名前も覚えていないような草コインを触ってみたりしました(笑)。いろいろと試すなかで、「これは結構面白いな」と感じたのを覚えています。

ナガトモ:田原さんが起業されたのも大学時代ですよね。

田原:はい。大学在学中に「チューリンガム」という会社を立ち上げました。ただ、最初から事業をやろうと思って作ったわけではありません。

2018年にチェコで開催されたイーサリアムのイベント「Devcon」に、大学の補助を受けて参加する機会がありました。そこでたまたま日本の方と知り合い、帰国してから一緒に立ち上げたのがチューリンガムです。

最初はスタートアップというより、DeFiや独自ブロックチェーン、暗号学といった専門的な領域を調べたり、コードを書いたりする、研究組織寄りの社会人サークルに近い存在でした。学生もいれば企業勤めの社会人もいて、「起業した」というより、「集まって探究していたら会社になっていた」という感覚に近いです。

その後、チューリンガムを続けるなかで「このメンバーでちゃんと事業をやろう」という話になり、本格的に事業会社として動かし始めたのが2020年です。

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