2023年に入りWeb3.0に内包されるさまざまな分野で動きが活発化してきている。特に暗号資産領域では、企業に対する税制を始め、個人取引における課税の在り方などについても議論が加速するなど、徐々に変化があらわれつつある。
Web3.0のマスアダプションを進めていく上では、日常生活のなかでの体験が大きなカギを握る。そして日常の流れで体験できるものの1つとしては、「決済」が挙げられるだろう。現代社会において日々生活をしていく上では、モノ・サービスに対して必然的に通貨を対価として支払っている。
海外では暗号資産決済に対応するサービスも増えてきており、ある意味では本来の利活用がなされているといえる。しかし、日本に目を向ければ暗号資産決済が浸透しつつある状況とは言い難い。そもそも、日本国民のほとんどが銀行口座を持っており、それでいてキャッシュレス決済やクレジットカード決済なども当たり前になっていることから、暗号資産を決済で利用する必要性が薄いというのが現状だ。1度の暗号資産決済時でも課税対象になってしまうという日本の税制も要因の1つであるといえる。
国内だけではなく、グローバルで決済ソリューション「Slash(スラッシュ)」を提供する佐藤伸介氏は現状の大きな問題点をどのように捉えているのだろうか。その真鍮や今後の計画について赤裸々に語ってもらった。

「Slash(スラッシュ)」創業のきっかけ
ナガトモヒロキ(以下、ナガトモ):佐藤さんの経歴とクリプトに触れるようになったきっかけを教えてください。
佐藤伸介(以下、佐藤):私のバックグラウンドとしては、もともと日本で10年ぐらいクリエイティブデザインやシステム開発・マーケティングなど、Web領域でオールラウンドな業務を行える会社を経営していました。日本でこれまでやってきたことを踏まえて環境を変えたいなと思い3年前にシンガポールに移住しましたが、そのタイミングでコロナ禍となってしまいフィジカルな仕事ができなくなりました。
もともとビットコイン(BTC)など暗号資産は多少持っていましたが、コロナ禍で時間ができたこともあり、クリプトについて深く学ぶ時間が増えたことや、シンガポールのCEXと仕事をしたことで業界との接点がすごく増えました。その延長でDeFiを触るようになり「こんなに面白いものがあるんだ」とのめり込んだのがきっかけになります。
ナガトモ:どのようなきっかけがあってSlashを創業したのですか?
佐藤:まずCEXの決済周りのシステムを作る機会が大きなきっかけです。その上で、自分がDeFi領域の事業を立ち上げる際にリサーチをしていくなかで、常に投資が入り続けなければ成り立たないサービスではなく、しっかり現実社会に根付いたプロダクトを作りたいと思うようになりました。総合的に考え、自分にとって身近な事業である決済という領域を選びました。
ナガトモ:どの部分で一番苦労しましたか?
佐藤:Slashは自前で流動性を持たず、さまざまなDEXをアグリゲートして決済システムのFX部分を補っています。日本国内では謎に「DEX=悪」みたいな風潮があり、有益なソリューションを理解する前に話も聞かず一蹴するような人も多くいました。とにかく浅い知識でDEXだから危ないと頭ごなしに拒否をする人が多かったので、そのネガティブ要素を取り払う意味では特に苦労しました。