ナガトモ:もともとグローバルをみていたとのお話がありましたが、日本でサービス展開するに至ったきっかけは何ですか?
佐藤:Slashをローンチするタイミングで、日本でWeb3.0という言葉が流行り始め、波を感じたので初期に活動するマーケットを日本に決めました。もちろんSlashですといっても誰も知らないので、その時に「新型のおあいそ」というコメディ動画を制作して、まず知ってもらうきっかけを作りました。Web3.0が流行り始めてきたタイミングで、暗号資産ってなんかすごいぞという波があり、ライト層に届くというか、こういう未来が実際に今できるんだということをアピールする意図がありました。
ナガトモ:Slashの経済圏、導入店舗はどのように増やしていったのですか?
佐藤:Slashの経済圏を広げるという以前に、そもそも暗号資産決済という認知を広げることの方が必要で、最初の1年間に関してはそれに徹していました。先ほど話した動画はSlashがどういうものなのかを事業者に理解してもらうのにかなり活躍しました。
「新型のおあいそ」の動画を見ると飲食店とかリアル店舗の方が多いように思うかもしれませんが、実際はそんなことはなくて、オンラインサービスの方が需要も多く、決済金額という面でもボリュームが多いです。
ナガトモ:決済という文脈では暗号資産決済でなくても、日本ではキャッシュレス決済も普及しております。キャッシュレス決済との違いや共存の可否についてはどうお考えですか?
佐藤:2023年現在はブロックチェーンで現物を移動する決済体験より、PayPayやSuicaなどキャッシュレス決済の方が確実にUX的にも良いと思います。データベースとフロントエンドの整合性が完全に取れているのでユーザーにとってもストレスがない状態で決済ができます。
対して暗号資産決済は現物を動かさなければならないので、どうしてもブロックチェーン上でのトランザクションをフロントエンドである我々のデータベースが追わなければなりません。データベースとブロックチェーンが分離されていると決済までの時間もかかります。時間軸でユーザビリティを考えると暗号資産決済は不利になります。
ですので、これだけ便利なものがあるにも関わらず我々がそれに置き換わるものをわざわざ作る必要があるのか?という問いは常にありました。その結果、2023年現在はキャッシュレス決済を置き換えるのではなく、「価値の移動」にフォーカスすることがSlashの大きなテーマになっています。
たとえばSlashを通じてイーサリアム(ETH)の価値を〇〇Payにチャージするなど。そこに存在する価値をシームレスに移動することの実現を現在のテーマにしています。
ナガトモ:Slashがマスアダプションするための次なる戦略はどのように描いておりますか?
佐藤:ギフトカード市場に大きな可能性があると思っています。結局のところユーザーが望むことは暗号資産の価値をモノに変えたり、暗号資産の価値で何かサービスを受けたいということです。ですから暗号資産の価値をモノやサービスに移動する最短ルートが、Slashを通じて暗号資産をギフトカードに変えることだと思っています。
ナガトモ:最後にSlashが目指す未来について教えてください。
佐藤:決済を通じて滑らかな価値の移動を実現していくことです。たとえばギフトカード市場以外にもオンライン旅行の業界にも我々は注目しております。どんなモノでもどんな価値でもシームレスに移動していく未来を我々は実現していこうと考えています。
Profile
◉佐藤 伸介(Shinsuke Sato)
Slash Vision Labs CEO
2011年、クリエイティブ制作をメイン事業とするHolydayを設立。2020年よりシンガポールを拠点に決済システム開発事業を展開し、Web3分野のプロジェクトマネジメント支援や開発パートナーとして活動。2021年からシンガポールで自身初のWeb3プロジェクトとしてSlashプロトコルの開発を始め、2022年5月にバージン諸島にSlash Fintechを設立。
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