事業体が抱える課題に目を向ければ、Web3.0領域の法整備にまだ未熟な点があることで、企業が関連サービスを提供するハードルが高いことも問題だ。
日本の法整備は世界基準で見てもトップクラスであることは間違いないが、サービスを提供する側としてはどこまで踏み込んでも良いのかという線引きが判断しにくく、加えて会計処理の煩雑さや事業設計のビジョン構築が難解であることもあり、企業がWeb3.0領域へと足を踏み入れにくい状況にある。
国内だけではなく、グローバルで弁護士として活躍する森和孝氏は現状の大きな問題点をどのように捉えているのだろうか。その真鍮や今後の計画について赤裸々に語ってもらった。
弁護士としてプロジェクトとどのように関わるのか
ナガトモヒロキ(以下、ナガトモ):森さんはどのような背景から暗号資産の業界に踏み込んだのでしょうか?
森和孝(以下、森):もともとは大阪で一般的な弁護士業務を行なっていましたが、新しい分野やワクワクする案件をやってみたいと思い、2016年にシンガポールに移住しました。当時シンガポールはICOバブルで盛り上がっていましたが、日本人弁護士で暗号資産を取り扱っている人はほとんどいませんでした。
大きなきっかけとしては、仲の良かったプライベートバンカーからICOのシステムを作る会社を紹介され、コンサルティングやマーケットメイキングの案件に携わったことです。彼らからレクチャーを受けながら業界の知識を深めていきました。その後も多くの案件をいただき、現場で経験しながら詳しくなっていった感じですね。
ナガトモ:弁護士としてプロジェクト側とどのように関わり仕事をしていますか?
森:ありがたいことに、お問い合わせはずっと多い状態です。ただ、案件の依頼が多くなりすぎると対応しきれずご迷惑をかけてしまう可能性もあるので、現在は顧問契約を中心にお受けしております。この分野は変化が早いので、表面的な知識は使い物になりません。顧問先や業界のサービスを自分自身で利用することで知識を深めております。
ナガトモ:弁護士という特殊な立ち位置から業界を見て、最近の業界の面白い動きはありますか?
森:日本の暗号資産業界は独自の進化を始めている感じがします。海外では流行りのレイヤー2開発などもそうですが、テクノロジーの進化など「競争」という面が強いように感じます。今ある技術を活用して世の中を良くしていこうというより、今より良いものを作ろうという感じですね。
一方、日本ではWeb3.0領域に関わる方々の「世の中をもっと良くできるのではないか」という優しい雰囲気が感じられます。大企業もSDGsやESGという文脈でWeb3.0の要素を取り入れたいよねという感じで、海外勢がこの業界のデファクトスタンダードを競っているのと対照的なイメージです。これは、良い悪いではなく、それぞれがマスアダプションに向けた重要なファクターになってくると思います。