ドバイの夏は40度を超える。灼熱を避けるかのごとく、夏になると多くの人が母国や避暑地へ旅立つ。ゆえに空港の7月は普段より混雑する。そんな私も涼を求めて久々に帰国をしたひとり。帰国早々に感じた印象。日本も十分暑いではないか。体感はあまり変わらない。

最高気温をみると+5度ほどは違うのだろうが、サウナも5度くらいの温度幅では変わらないように、おそらく人間の体は気温に対してある一定のレベルを超えると一色単に感じるのだろう。
先日予約注文をしてまで買った書籍があった。「美食の教養─世界一の美食家が知っていること─」浜田岳文さんという方が書いた本だ。浜田さんの経歴は興味深く、南極から北朝鮮まで、世界127ヵ国と地域を踏破された方で世界のベストレストラン50や世界中のミシュラン店を毎年巡っているクレイジーな方だ。
フーディーと名乗っていいかはわからないが、そんな私もまぎれもなく食の為に旅をする部類の人間だ。今となっては笑い話だが、大学受験で福岡へ行った際には参考書ではなくグルメ本を持って行きB級グルメやラーメン屋を巡っていた。参考書よりグルメ本の方に付箋が貼ってあったし、そっちを読む方が楽しかった。過去にはお付き合いしていた方と旅先でどうしても行きたいレストランがあり、8時間レストランを待ったことで大喧嘩をした淡い経験もある。
大人になりさまざまなご縁でヨーロッパを中心に食を通じて文化的交流を図ってきた経験がある身としては、浜田さんのこちらの書籍は美食の定義がとてもわかりやすく解剖されており、なおかつおそらく普段多くの食通の方が感じていた言葉にできない感覚を見事に言語化してくれた、まさに食の哲学書ともいえる本だと思う。
今年を振り返るとすでに10ヵ国訪れている。7月に至ってはアジア各国を毎週巡っていた。絶賛円高中の今となっては懐かしく感じるが、つい1ヵ月前までは円安で特にヨーロッパを訪れた際は大変だった。こんな円安渦中にこれだけ海外に出向いている一般人は大変珍しいと思う。
先日訪れた香港ではランチもディナーもミシュラン店での会食だったのだが、両方のコース料理で得意ではないナマコが1本丸ごと出てきて大変だった。1日2匹ものナマコをまる1本食べたと思うとゾッとする。
そのほかにも食べ方がわからない鳥の足が出てきたり、よくわからない貝や謎の果物など、訪問先での歓迎を食を通じて受けることは1番わかりやすいコミュニケーションでもあるが、時に胃やお腹を崩すこともある。食の文化的交流は意外とハードで知的好奇心がないと耐えれないだろう。そして胃も限られた資産であることを痛感させられる。