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世界No.1 DeFiサービス「Cega Finance」豊崎亜里紗独占インタビュー

2024/01/29ナガトモヒロキ
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世界No.1 DeFiサービス「Cega Finance」豊崎亜里紗独占インタビュー

世界初、そして世界No.1のDeFiサービスを生み出した日本人起業家が語る“金融の未来”

累計取引高500億円以上。DeFiデリバティブ市場を牽引する「Cega Finance」を生み出したグローバルで活躍する日本人Web3.0起業家の1人である豊崎亜里紗氏。そのルーツとグローバルスタンダードでみた日本、そして彼女が見据える未来、DeFiやWeb3.0の展望に迫る。

世界No.1のDeFiサービスを生み出した豊崎氏の「ルーツ」

アジア最大級の暗号資産カンファレンスである「TOKEN2049」。毎年9月にシンガポールで開催され、世界中からクリプト関係者たちが集まるビッグイベントだ。その壇上で流暢な英語でプレゼンをする1人の日本人がいた。豊崎亜里紗氏だ。彼女は分散型金融の専門家でありDeFiデリバティブのパイオニアである。

起業家として日本から世界を舞台に活躍する彼女のルーツ。豊崎亜里紗個人としての活動とCEGA社としての展開にフォーカスして話をうかがった。

失敗をベースに考えるのではなく、20代、30代のうちはとにかくやってみたいものすべてに挑戦すべき

ナガトモヒロキ(以下、ナガトモ):豊崎さんは幼い頃から起業家になることを考えていたのですか?

豊崎亜里紗(以下、豊崎):子供の頃はこれといって夢はなかったのですが、あれもこれも興味あることは全部やってみたいと思う性格でした。起業という点では両親の影響が大きいですね。2人とも別の会社でゼロからビジネスを構築して売却も経験している起業家でもあったので、自分も自然と起業家の道に誘導された感じはあります。

ナガトモ:初めての起業がCEGA社になるのですか?

豊崎:いえ、実は大学在学時にグラフィックデザインの会社を起業し、少額ですが、売却をした経験があります。Googleで働いていた時には副業でマツエクと眉毛ワックスのサロンを経営しておりました。

ナガトモ:行動力にびっくりです(笑)。現在、グローバルで活躍されている豊崎さんですが、海外と日本を比べた際に感じる違いにはどのようなものがありますか?

豊崎:日本は生活水準も高く中流階級の幸福度が高いので、日本人としてのモチベーションや、海外に出て成功してくるといったハングリー精神が足りないと感じます。

仕事の進め方に関しても、日本は文化的に村社会化しているのでトップダウンではなくボトムアップで周りとのコンセンサスを取らなければ決議ができないケースが多い。意思決定のスピードが速い海外と比べると小さいことを行うにも時間がかかるのは非効率的で非常にもったいないと思います。

ナガトモ:豊崎さんの経歴をみると華々しいキャリアなのですが、それを手放してまで起業を決意された背景にはどのような考えがあったのですか?

豊崎:まずキャリアを手放すという発想が間違いですね。キャリアを手放すという表現には2度と戻ってこないというアサンプション(思い込み)が入っています。スキルセットが身についていたり、自分の能力や成長を磨いていれば大手企業にはいつでも戻れると思います。

Google時代の私の上司には、2回Googleを辞めてスタートアップに挑戦して戻ってくるといったキャリアを歩んでいる人もいました。日本には終身雇用の考え方が根付いていますが、キャリアは一本道ではなくフレキシブルなものだと考えております。

失敗をベースに考えると歩み方がどうしてもコンサバティブ(保守的)になってしまうので、むしろ「ワンチャンいけるかも?」というマインドセットで特に20代、30代のうちはとにかくやってみたいものすべてに挑戦すべきだと思っています。

起業は目的ではなく、あくまでも手段。面白いアイデア、ビジネスチャンスがあれば今すぐ起業すべき

ナガトモ:豊崎さんは若者の起業支援なども行っていますが起業したい若者へはどのようなことを伝えていますか?

豊崎:起業したい人によく伝えているのは、「起業家になりたくて起業するべきではない」ということです。起業は目的ではなくあくまで手段です。市場に面白い機会があった時や、良いプロダクトのアイデアがあった時がタイミングです。面白いアイデア、ビジネスチャンスがあれば今すぐに起業すべきということを伝えています。

2020年にDeFiが飛躍した時の市場の動きをみて「自分ならこの分野で活躍できる」と思った

ナガトモ:豊崎さんの場合はどのようなアイデアで起業に至ったのですか?

豊崎:私の場合、自分のスキルセットがUBS証券で培ったデリバティブというニッチかつ専門的な分野だったのと、Googleで学んだブランディングやマーケティング戦略だったので、それを掛け合わせて何が生まれるかを意識しました。

私はビジネスの戦略を考えたりプロジェクトを一から起こす方が好きなので、2020年にDeFiが飛躍した時の市場の動きをみて、自分がこの分野で活躍できると思いました。アイデアなしに起業をするのは良い選択肢ではないと思います。

ナガトモ:初めて暗号資産に触れた時のお話しを聞かせてください。

豊崎:大学時代に遡るのですが、コンピューターサイエンスを専攻していたこともあり、学校の授業でビットコインのことを知りました。2013年当時は1BTCあたり20数ドルでした。学生ということもありたくさん購入したわけではないですが技術に衝撃を受けたことを覚えております。

ナガトモ:現在シンガポールを拠点に活動されておりますが何故シンガポールを選んだのですか?

豊崎:CEGAのやりたいことを考えた時にシンガポールかドバイかの選択になりました。もともと香港に住んでいたのでアジアの金融事情にも詳しかったこともあるのですが、シンガポールは政策面の良さでDeFiプロジェクトが世界中から集まってきており、ビジネスのスピードを肌で感じられる点も大きな決め手になりました。あとはご飯が美味しい部分でしょうか(笑)。

日本の将来を見据えた「個人の活動」

ナガトモ:豊崎さん個人としてはどのような活動をされているのですか?

豊崎:私個人の活動としては、大学や企業で分散型金融技術の講義などをして啓蒙活動を行っています。

日本ブロックチェーン協会(JBA)の理事も務めておりますが、DeFiは歴史的にもあたらしい技術なので社会の理解が追いついていないこともあり、日本の大きな機関にパイプラインを持っているJBAを通じて、政府や大企業にその技術の素晴らしさを知ってもらう活動をしたり、JBAの分科会を通じて日本の若い方達に海外プロジェクトの情報をもってきたり、日本から海外へ挑戦しようとしている起業家を応援する取り組みを行っています。

起業の推進という観点ではWeb3.0プロジェクトへのエンジェル投資などもやっています。

日本経済の衰退を止めるには文化的・政策的に変わらないといけない
そのカギを握るのが若い世代

ナガトモ:なぜ若い世代の支援に力を入れるのですか?

豊崎:現在、私自身日本の将来を危惧しています。今年世界のマーケットキャップTOP50に初めて日本企業が入らなかったというニュースが話題になっていましたが、これは日本経済の衰退を示していると思っています。

何かしら文化的や政策的に変わらなければならないタイミングが今で、そのカギを握っているのが若い世代です。どうやって日本の若い世代をハングリーにさせるのか、逆ピラミッド型の大企業に入ることをゴールとしない文化をどうつくっていくかを考えています。

世界初となるDeFiデリバティブサービスとなった「CEGAでの活動」

ナガトモ:何故DeFiデリバティブという分野で勝負しようと思ったのですか?発想の原点を教えてください。

豊崎:暗号資産を使ったオプション自体は2016年にデリバティブトレーダーとして働いていた頃につくりたいと思っていました。

当時、働いていた会社でつくることはできないかと提案もしたのですが、当時は政策はもとより、DeFiというアイデアすらない時代だったので新興市場のレベルにすら達しておらず、大企業なりに難しい部分もあり実現に至りませんでした。

そこからはずっと市場の動向を注視して実現の機会をみていました。

ナガトモ:DeFiデリバティブを製品化しようと思ったタイミングはいつでしたか?

豊崎:DeFiが大きく飛躍した年は2020年で、ユニスワップの成功をみて、「スマートコントラクトをベースにデリバティブ製品をつくっていくのは理にかなっているのでは?」と考えるようになりました。

実はその時、すでにDeFiでオプション的な製品は出てきていたのですが、当時の製品はつくっている側が金融工学の知識が伴っていなくて、製品の金利やリターンが実質的な利益を生まないものが多かったり、結局ポンジスキームだったりと、利率が長期的にサステナブルではない状況が蔓延していました。

DeFi自体が匿名性の高い業界だったので、モラルがしっかりしていないプロジェクトもたくさんあり、せっかく良い技術なのに信用を損なう動きをする人もいましたね。

あとは、DeFiのカルチャーとして成功しているプロトコル、たとえばUniswapとかをフォークするような動きがすごく多く、界隈にはあたらしいものをつくろうとする創造性も足りなかったと思います。

ナガトモ:そういった業界の穴がCEGAの顧客ニーズを掴んでいくのですね。

豊崎:はい。2021年にスマートコントラクト上でエキゾチックオプションという条件付きのオプションをつくることによって、これまで界隈には存在しなかったあたらしい製品、創造性を保った製品をつくるとともに、実質的な利益を長期的に伴う安全性の高い製品をつくるべきだと、私の実名とともにホワイトペーパーを公表しました。

そのホワイトペーパーのアイデアを本来は既存のDeFiプロトコルに持っていってつくってもらいたいと思っていたのですが、気付いたらいろいろな投資家にホワイトペーパーがわたっていて、ほかのDeFiプロジェクトも自分たちには専門的な知識はないから製品をつくるのは難しいけれども、これはぜひつくるべきだと界隈からの後押しもたくさんいただきました。

その結果、累計取引量が500億円を突破したのでDeFiのエキゾチックオプション界隈では世界No.1になることができ、やはりユーザーニーズがあったんだと再確認することができました。

ナガトモ:CEGAはどのようにチームメンバーを集めたのですか?

豊崎:社会人経験が長かったことから自分の強み弱みをわかっているつもりではあったので、人種やロケーションにはこだわらずに、自分がどういう人と相性があうのかだけにフォーカスをして共同創業者にインタビューを行いました。

ニューヨークのDeFi系のミートアップに参加した時にお腹がすいてタコスのフードトラックに並んでいたのですが、実はその時に私の後ろにいた人が今の共同創業者です(笑)。ちなみに、チームで日本人は私だけです。

ナガトモ:CEGAを組成するにあたり、難しかった部分、苦労した部分は何でしたか?

豊崎:これは主に3つありまして、まず2021年は圧倒的にデベロッパーの数が少なかったのと、マーケットが盛り上がりすぎていたのですべてにおいてコストが高かったです。ガス代もインフラも人材もすべて高かったですね。そこをどうやって効率的に長いランウェイを持たせるかはとても悩みました。

2つ目は人材探しです。CEGAは1つのポジションを埋めるのに200人ほどスクリーニングをしています。Web2.0系企業と比べたら多いと思います。

理由としては、リモートワークをするにあたり自分がプロジェクトのオーナーシップを持って最初から最後までドライブできるという責任感に加え、それに伴う能力が求められるのと、実際に物理的にチームメイトがいなくてもモチベーションを保てられる精神的に強い人をスキルセットにプラスして探していたからです。プロセスは当たり前に大変でした。

3つ目は教育です。エギゾチックオプションはデリバティブのなかでも数学的に難しい分野です。最初は金融商品の知識がある人間が自分だけだったので、先物とは何か、オプションとは何か、といったチーム内での金融工学の教育にはかなりの時間を費やしました。

ナガトモ:一般の人がデリバティブと聞くと難しく考えてしまいますが、どういったメリットがあるのですか?

豊崎:デリバティブのすばらしいところは、今まで上か下かでしかベットできなかった相場を、たとえば横ばいのベットをしたり、投資方法の選択肢を増やすツールだと思っています。要はデリバティブを使えばローリスクで安定的な運用製品をつくることも、ハイリスクな商品をつくることもできます。

一概にデリバティブ=怖いと考えるべきではないですね。

ナガトモ:CEGAの製品の特徴を教えてください。

豊崎:先日リリースしたデュアルカレンシー製品についてですが、実は既存金融の資産運用のなかではとてもポピュラーな製品です。何がすごいのかというと、まず金利が良いです。

CEGAの製品は現在22%から最大で51%の金利になっている(1月17日時点)のですが、マーケットが上がっても下がっても金利がホールドされるという製品になっています。CEGAとしては上がり下がりが激しい相場のなかでも安全性を保った金利をつくることをミッションにしています。

もちろんレンディングや債券のような製品と比べたらマーケットリスクが存在する製品ではありますが、先物や一般的なオプションの取引と比べたらシャープレシオという、リワードに対するリスクの比率がDeFiデリバティブ界隈ではかなり高い製品になっています。

1月17日時点 累計取引高は3億673万ドル(約542億円)

CEGAのビジョンはDeFiのデリバティブ製品を通じて、あらたな経済圏をこの世界につくること

ナガトモ:CEGAのビジョンを教えてください。

豊崎:我々のビジョンはDeFiのデリバティブ製品の価値提供をあらたにつくることによって、あらたな市場であらたな経済圏をこの世界につくることです。そのミッションとして安全性が高く、実際に実質的な利益を伴うデリバティブ製品を、暗号資産を用いてつくっています。

中期的にやりたいことはオプションの製品だけでなく、オプションのライフサイクル、たとえばバリアイベントのマネジメントだったり、機関同士の決済や流動性供給者のポジション管理、このようなプログラムの実行をすべて自動的かつ強化したセキュリティを用いてつくるライフサイクルマネジメントツールを全部オンチェーンでつくりたいと思っています。

最終的なゴールとしては大きな機関でのインフラとしてDeFiを組み込んでいければと考えております。

ナガトモ:CEGAがプロジェクトを進める上で重要視していることは何ですか?

豊崎:CEGAのコアバリューは「良い人であること」。新興市場はモラルに問題がある人もプロジェクトも多いので信用が1番大事になります。

あとは今のDeFiのオプションプロトコルを見渡すとトレンドに乗っかるプロジェクトが多いのですが、そうではなく実際にバリューのあるもの、なおかつまだ誰もやったことがないものをどんどんつくっていくことが、我々CEGAが会社として重要視していることです。

DeFiは生まれてから3年程度のあたらしい分野
将来的には社会的な金融インフラの簡易化をDeFi上で起こせる可能性

ナガトモ:最後に、豊崎さんがみるDeFiの未来について聞かせてください。

豊崎:DeFiはブロックチェーン技術と混同されがちですが、ブロックチェーン技術は15年前から存在しているのに対し、DeFiは生まれてからまだ3年程度のかなりあたらしい分野になります。

DeFiが既存金融を完全に置き換えるとは思っていないのですが、よくいわれるパーミッションレス、トラストレス、アクセシビリティをベースに、使い方や信用度の部分で社会的な金融インフラの簡易化がDeFi上で起こるのではないかと考えています。


Profile

◉豊崎亜里紗(Arisa Toyosaki)
CEGA共同創業者兼CEO
1993年、名古屋生まれ。日本と中国で幼少期を過ごした後、アメリカのノースウエスタン大学を卒業。専門はコンピューターサイエンスと経済学。UBS証券香港にてデリバティブトレーダーとしてキャリアをスタートした後、Google日本法人に入社。検索サービスやAR事業のマーケティング業務を担当し、2022年に暗号資産による分散型金融プロジェクトのCEGAを創業。女性起業家や日本発のweb3プロジェクトに対するエンジェル投資も行っている。

◉ナガトモヒロキ(Hiroki Nagatomo)
コラムニスト
1988年生まれ。横浜市立大学在学中に起業。大手通信キャリアを主なクライアントとして人材派遣会社を展開する。30ヵ国以上の海外渡航で出会った海外富裕層との交流がクリプトに触れるきっかけとなる。2022年、Web3.0時代の資産形成プラットフォーム「BitLending」の立ち上げに参画。独自のネットワークを活かしてクリプトの今を追う。趣味は写真。トライアスリートとしても世界各国のIRONMAN RACEにチャレンジしている。


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