脳裏に浮かぶ2022年の「テラ・ルナショック」の再来 不信感が広まるなかビットコインに吹く“追い風”要因とは? 仮想NISHI Vol.3

2025/11/29 10:00
仮想NISHI
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脳裏に浮かぶ2022年の「テラ・ルナショック」の再来 不信感が広まるなかビットコインに吹く“追い風”要因とは? 仮想NISHI Vol.3

サマリ

1. 10~11月の暗号資産市場は「事故連鎖」により急落──USDe・USDXの担保割れが決定打

10月上旬にBTCは一時124,000ドルを突破する好調相場だったが、Hyperliquidの資金流出事故(32億ドル)を皮切りに、BinanceでUSDeが0.6ドルまで急落。担保割れによって史上最大規模となる約300億ドル清算が発生し、市場は急速に冷え込んだ。

さらに11月には MEXCの資産凍結疑惑や Balancer の流出(130億円)、USDX のディペッグが重なり、100,000ドル割れを2度記録。2022年のテラ・ルナ崩壊の“縮小版”が再現された格好となった。

2. トレジャリー企業は財務悪化リスクが拡大──下落局面では「売りが売りを呼ぶ」構造

BTC価格下落により、トレジャリー企業は保有資産の評価損が膨らみ、東証スタンダード上場廃止基準(債務超過リスク)に直面。

保有BTCの平均取得価格を市場価格が下回ると、財務悪化 → BTC売却 → さらなる下落 → 他社にも波及、という悪循環が起きる可能性が高い。

また、金融庁が「BTCを分離課税へ移行する案」を議論しており、課税明確化により“企業株とBTC自体の比較”が厳格化される点もあらたなリスクとなっている。

3. 2025年末に向けてはFRBの利下げと量的引き締め終了が追い風

外部ショック(DeFi/CeFiの信用事故)がなければ、米国株式が最高値圏にあることからBTCも上昇基調を維持する可能性が高い。

FRBは10月会合で連続利下げを決定し、12月に量的引き締め終了を表明。流動性拡大はBTCに明確なプラス材料で、12月10日のFOMCでも緩和方向が確認されれば、年末にかけてさらに追い風となるとみられる。


──「Uptober(アップトーバー)」とも呼ばれる暗号資産相場にとって相性のよい時期にもかかわらず、10月~11月の暗号資産市場は軟調に推移しました。その背景や要因についてお聞かせください。

仮想NISHI:まず忘れてはならないのは、10月上旬の市場が極めて好調であった点です。10月6日にはビットコイン価格が一時124,000ドルを突破し、史上最高値を更新しました。背景には、一時的な米政府機関の閉鎖によって、国家に依存しない「無国籍資産」としてのビットコインの存在感が増したことがあります。安全資産としてビットコインが逃避先として選ばれたことが、上昇を牽引した主因でした。

しかし中旬以降、市場は一転して急落局面を迎えました。最初の下落要因は、DeFiプロトコルのHyperliquidにおける約32億ドル規模の資金流出事故です。この混乱のなか、最大手取引所Binanceにおいてステーブルコイン・USDeが仕掛け売りにより0.6ドルまで下落し、USDeを担保としていた多くのポジションが担保割れに陥りました。

これにより、連鎖的な清算(フラッシュクラッシュ)が発生し、結果として暗号資産市場全体で史上最大規模となる約300億ドル(約4.5兆円)の清算を記録しました。この出来事は市場参加者の新規買い余力を著しく削ぎ、以降の市場停滞を決定付ける転機となりました。

その後の11月初旬には、オフショア取引所MEXCが一部大口投資家の資産を凍結したとの報道がSNS上で拡散し、投資家心理が急速に悪化しました。同時期にDeFiプロトコルのBalancerでも約130億円規模の資金流出事故が発生し、MEXC・Balancer両者への不信感が広がるなかでビットコイン価格は11月4日、一時100,000ドルを下回る展開となりました。

さらにBalancerの流出は次なる波紋を呼びます。Balancerからの流出により、ステーブルコイン・USDXの担保割れが生じ、価格が0.6ドル付近までディペッグしました。ディペッグの影響で、xUSDにおいても担保不足が露呈し、11月7日には再びビットコインが100,000ドルを割り込む主因となっています。

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(注)2025年11月10日時点(出所)仮想NISHI氏提供データをもとに編集部にて作成

この一連の構図は、2022年に発生した「テラ・ルナショック」の縮小版ともいえるものです。テラ・ルナ崩壊以降、市場では「無担保」から「担保重視」への信用創造の転換が進みましたが、再担保に関するリスク評価が甘く、同様の脆弱性が再び露呈した格好です。

執筆時点では、この影響はDeFi・CeFiの双方に波及しており、ステーブルコインの信認低下が暗号資産市場全体の構造的課題として浮き彫りになっています。

ステーブルコインへの信頼が揺らぐ局面では、一時的にビットコインが「相対的安全資産」として買われる場面もありますが、発行体や関連企業が経営危機に陥った場合、保有資産の売却が連鎖的な下落を引き起こすリスクも孕みます。市場は引き続き、これらの信用動向とステーブルコイン担保構造の行方を慎重に見極める必要があります。

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