最大の注目ポイントは6月のFOMCと利下げ開始時期
マネックス証券で暗号資産アナリストを務める松嶋真倫 a.k.a まりんです。今回もビットコイン相場の振り返りと今後の相場展望について解説します。
2024年4月のビットコインは、米国金利が上昇するなか、米国株とともに軟調に推移しました。雇用統計を始め米国経済指標が市場予想を上回る結果となり、利下げ開始時期の予想が先延ばしになりました。
また、イランによるイスラエルへの攻撃によって中東地域の緊張が急速に高まり、金融市場ではリスク回避の売りが強まりました。
4回目となるビットコインの半減期への期待で買われる場面もみられましたが、通過後にはその勢いも衰えています。
こうしたなか、4月の後半にはブラックロックのビットコイン現物ETF「IBIT」への連続資金流入がストップするなど、米国のビットコイン現物ETF買いも失速し、BTC=1,000万円を割り込みました。
30日には香港でビットコインとイーサリアムの現物ETFが上場しましたが、初日出来高が期待外れとなり、失望感が広がりました。
今後のビットコインは6月の米FOMCで利下げ開始時期の見通しが立つかが最大の注目ポイントです。現時点では7月以降の利下げ開始が予想されていますが、この予想がさらに後ろ倒しになった場合、米国金利の高値圏維持によって相場が売り優勢になることが予想されます。
香港や英国、豪州など、米国外におけるビットコイン現物ETFへの期待で買われることは考えられますが、マクロ経済の影響で株式市場が大きく値崩れしないことが必要条件になります。
半減期を通過してビットコインが材料難となるなか、より大きなボラティリティを求めてミームコインなどのアルトコイン物色が加速する可能性はあります。
しかし、中長期的な上昇のためには大きな資金を促すためのあらたな材料が必要になるでしょう。
まりんの注目銘柄:トンコイン(TON)
今回はメッセージングアプリ・Telegramとのつながりが深いトンコイン(TON)について紹介します。
Telegramは世界で約9億人のユーザー数を抱える巨大アプリで、暗号資産界隈では馴染みのあるコミュニケーションツールとなっています。
トンコインはTelegramの創業者が始めたブロックチェーンプロジェクトで、The Open Network(TON)という独自のブロックチェーン上で発行されています。
最近の動向からCoinMarketCapの時価総額ランキングでは9位まで急上昇しています(2024年4月末時点)。
トンコインが注目される理由の1つは、やはりTelegramとのつながりです。2018年に創業者であるパベル・ドゥロフ氏のもとプロジェクトがスタートしてから、規制強化の影響で運営の解体や開発の中断を余儀なくされる時期はありましたが、現在までコミュニティ主導で活動が継続しています。
そうしたなか、2024年3月に同氏がTelegramのIPOについてメディアで言及し、その期待でトンコインは大きく上昇しました。
また、もう1つのあらたな材料として、トンコインは手のひらのスキャンデータに基づいたデジタルアイデンティティの開発にも取り組んでいます。
Telegramとトンコインの関係は、サム・アルトマン氏が率いるOpenAIとワールドコイン(WLD)の関係にも似ています。
今後、Telegramが抱える数億人規模のユーザーに対してトンコインがどのように関わっていくのか注目です。
Profile
◉松嶋 真倫(Masamichi Matsushima)
マネックス証券 マネックス・ユニバーシティ 暗号資産アナリスト
大阪大学経済学部卒業。都市銀行退職後に暗号資産関連スタートアップの創業メンバーとして業界調査や相場分析に従事。2018年、マネックスグループ入社。マネックスクリプトバンクでは業界調査レポート「中国におけるブロックチェーン動向(2020)」や「Blockchain Data Book 2020」などを執筆し、現在はWeb3ニュースレターや調査レポート「MCB RESEARCH」などを統括。国内メ ディアへの寄稿も多数。2021年3月より現職。
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