マネックス証券で暗号資産アナリストを務める松嶋真倫 a.k.a まりんです。今回もビットコイン相場の振り返りと今後の相場展望について解説します。
ビットコイン相場:6月の振り返りと今後の相場展望
2024年6月のビットコインは、米国で主要経済指標及びFOMCの結果を受けて利下げ観測が後退し、現物ETFからの資金流出も目立つなかで売り優勢の展開となりました。5月米雇用統計が市場予想を大幅に上回ったことが、利下げ開始時期の不透明感を強めました。続いて発表された5月米消費者物価指数は2ヵ月連続で低下し、インフレ鈍化が示唆されました。
しかし、FOMCではパウエルFRB議長が金利据え置きと利下げに慎重な姿勢を示し、年内の利下げ回数予想も1回に減少しました。これら一連の流れのなかで、イーサリアム現物ETFの取引開始への期待で反発する場面もみられましたが、ドイツ当局やマウントゴックスに関連したビットコインの大口送金が確認されると、その売り圧が警戒されてBTC=1,000万円を割り込みました。
今後のビットコインは、さらなる下落リスクは残りますが、底堅い展開を予想します。S&Pやナスダックの史上最高値更新が続いている一方で、特にNVIDIAの株価高騰からは市場の過熱感もうかがえます。ビットコインは米国株の先行指標としてみられることもあり、この流れで米国株が売りに転じた時には、ビットコインもさらに売られる可能性があります。
7月のFOMC、8月のジャクソンホール会議にかけては米国の金融政策を巡って相場が左右されるでしょう。またマウントゴックスの弁済開始に伴う売り圧にも警戒が必要です。
まりんの注目銘柄:アバランチ(AVAX)
今回は日本でも活用事例の多いアバランチ(AVAX)について紹介します。アバランチは2020年9月にイーサリアムキラーの1つとして誕生したブロックチェーンプロジェクトです。Ava Labsを中心に開発が進められており、独自のアーキテクチャとコンセンサスアルゴリズムを採用することで秒間4,500件を超える早いトランザクション処理を実現しています。
イーサリアムと同様に、Trader JoeやGMX、GoGoPoolなど数多くのDeFiアプリが作られており、CoinMarketCapの時価総額ランキングでは11位に位置しています(2024年6月末時点)。
アバランチの最大の特徴は「サブネット」と呼ばれる独自のネットワークを構築できる機能にあります。これにより企業は、アバランチ本体のインフラを使いながら、メインチェーンとは独立したブロックチェーンシステムをニーズにあわせて柔軟に作ることができます。
サブネットの作成からアプリケーションの構築など、従来のWeb2.0エンジニアでも開発しやすいように設計されています。こうした開発の柔軟性や利便性から企業が採用する事例も増えており、日本でもコナミやネクソン、Pontaポイントなどがアバランチを使用してWeb3.0関連プロジェクトを立ち上げています。
またアバランチは、クロスチェーン機能やさらなるスケーリングソリューション、EVM互換性の強化など、エコシステム全体の発展に向けた開発アップデートを続けています。そのネイティブトークンであるAVAXは、直近はビットコインに対してやや売りが強まっていますが、今後、企業がアバランチ上で展開するサービスの数が増えれば、それとともに中長期的に伸びていく可能性はあるでしょう。
マネックス証券 マネックス・ユニバーシティ暗号資産アナリスト
松嶋真倫 Masamichi Matsushima
Profile
大阪大学経済学部卒業。都市銀行退職後に暗号資産関連スタートアップの創業メンバーとして業界調査や相場分析に従事。2018年、マネックスグループ入社。マネックスクリプトバンクでは業界調査レポート「中国におけるブロックチェーン動向(2020)」や「Blockchain DataBook 2020」などを執筆し、現在はweb3ニュースレターや調査レポート「MCB RESEARCH」などを統括。国内メディアへの寄稿も多数。2021年3月より現職。
https://cryptobk.jp/
関連記事
ビットコイン相場4月の振り返りと今後の相場展望 最大の注目ポイントは6月のFOMCと利下げ開始時期 | マネックス証券・松嶋真倫
2024年ビットコインの相場展望 | マネックス証券・松嶋真倫