【テクノロジーの教室 Vol.2】Rain Tree・橋本真希が学ぶNFTと「本物」の証明

2026/08/26 10:00 (2026/08/26 10:17 更新)
Rain Tree
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【テクノロジーの教室 Vol.2】Rain Tree・橋本真希が学ぶNFTと「本物」の証明

「本物です」を、どう証明するか

前回、Rain Treeの橋本真希(以下、橋本)が最後に投げかけたのは、NFTについての疑問だった。

自身が描き下ろした油彩作品のオークションで、入札にNFTの仕組みが使われる。その話を受けて、Iolite編集長・八木紀彰(以下、八木)はこうこたえていた——NFTは、誰がいつ入札したかという記録を、透明な形で残せる仕組みなのだと。

では、記録が残ると、いったいどんなメリットがあるのか。

第2回のテーマは、“NFTの基礎”。話は「本物であることの証明」から始まった。


Maki Hashimoto image1
撮影:Iolite編集部 「Gallery Blue 3143」にて

橋本:前回、NFTは記録が残る仕組みだと教えていただいたんですけど。この「記録が残る」ことの一番のメリットって何なんでしょう?

八木:質問返しになってしまいますが、橋本さんはNFTの魅力ってどこにあると思います?

橋本:やっぱり、デジタルデータに価値がつけられるようになったことですよね。簡単にコピーできちゃうデジタルのものでも、「これがオリジナルのデータです」って証明できる。ブランド品でいうところの、真贋証明みたいな仕組みができたのが大きいのかなって。

八木:ただ、ここは正確にお伝えしておきたいところで。NFTが証明しているのは、厳密には「そのデータの発行元が誰で、いまそれを持っているのが誰か」という記録なんです。

橋本:NFTの保有者が誰かは、はっきりわかるってことですね。でも、よく「所有権の証明」っていわれたりもしますけど、法的な権利が移るのとはちょっと違いますよね?

八木:勉強しているだけあって、よくご存知ですね。まさにそこで、法律上の所有権や著作権まで一緒に移るかというと、それは別の話なんです。そこは発行する側が、契約や規約で決めておく必要がある。

橋本:なるほど、法的な権利までは自動的にセットになるわけじゃないんですね。

八木:そうなんです。実際に、法的な権利まで結び付けているNFTはごく一部です。ただ、「誰が発行して、誰の手を経て、いま誰が持っているか」がずっと残る。これがあるだけで、本物かどうかを確かめられるようになった。そこが大きいんです。

橋本:だからこそ、改ざんされない記録が残ることが大事なんですね。

八木:そういうことです。その記録があるから、いま持っている人が本物の持ち主だといえる。ここがNFTの土台になっています。

2021年、75億円で売れた絵

橋本:その仕組みって、いつ頃からあるものなんですか? というのも、私があたらしくNFTという言葉を聞くようになったのって、ここ数年のなかでのことなので。

八木:技術としてはもう少し前からありますが、世の中に広く知られたのは2021年頃ですね。大きなブームがありました。

橋本:2021年。結構前からあったんですね。その頃に何かきっかけがあったんですか?

八木:その時、オークションでNFTが75億円で売れたんです。アートのNFTが。

橋本:75億円!? NFT自体がですか? ……すごい金額ですね。でも、どうして最初がアートだったんでしょう? ほかにもいろいろな分野で使えそうな気がするんですけど。

八木:まさに、さっき橋本さんがおっしゃったコピーの話です。データはいくらでも複製できてしまうから、作品として値段が付きにくかった。

橋本:あ、やっぱりそこなんですね。データだと簡単にコピーできちゃうから、アーティストからすると、自分の作品の価値を守るのが難しかったということですよね。

八木:そこにNFTが出てきて、「このデータが本物のオリジナルです」と証明できるようになった。一番困っていた場所に、一番効く道具が来たわけです。だからアートから広がったんですね。

いまも、半分近くがアート

八木:ちなみに橋本さん、NFTっていま何に一番使われていると思います?

橋本:えっ、なんだろう。……私が最初にNFTを知ったきっかけが、誰かが作った作品の価値を、デジタルにしても維持できる、そういうものに使うのがNFTだ、という話だったので。やっぱり、いまもアートですか? それとも、あらたな使い道が生まれているんでしょうか。

八木:正解です。リサーチ会社の調べで、だいたい4割から5割くらいがアートの文脈で使われています。最初の入り口がアートだった橋本さんの感覚が、そのまま市場の実態と一致しているということですね。

橋本:うれしいです。ちょっと自信が付きました(笑)。これからもっと、いろいろな分野で活用されていくのをみるのが楽しみですね。

1つの作品を、みんなで持つ

橋本:証明ができるようになると、ほかにはどんなことができるんですか?

八木:面白いところでいうと、「小口化」というものがあります。1つの作品を、何人かで分けて持てるんですよ。

橋本:えっ、そんなこともできるんですね。

八木:これも、記録がきちんと残るから成り立つ話なんです。誰がどれだけの持ち分を持っているかを正確に記録できるから、分けても混乱しない。

橋本:あ、そういうことか。

八木:たとえば、ちょっと下世話な話ですけど。橋本さんがアーティストとしても大成功して、絵の作品が1億円になったとするじゃないですか。

橋本:(笑)

八木:そうなると、もう誰も買えない。でも、自分を応援してくれている方々に届けたいと思った時、1人では買えなくても、小口化できればみんなでシェアして持つことができる。

橋本:それは、持ち分が何人かにわかれるということですか?

八木:そういう仕組みも作れます。もちろん、法律上の権利をどう扱うかは、さっきお話しした通り別に整理が必要ですが。もっと大きな例でいうと——たとえば、ある大きなテーマパークのリゾート施設全体に「投資しませんか」といわれても、普通は無理ですよね。

橋本:無理です(笑)

八木:でも「そんなにお金は持っていないけれど、ここが大好きだから、敷地の1,000分の1くらいの区画だったら関わりたい」。株式とは違う関わり方で、実際には不可能なこの願いが、ブロックチェーン上に乗れば実現可能になるんです。

橋本:すごい。自分1人ではできないことも、何人かでそうやって小口で叶えたり、手に入れたりできるようになるんですね。知らなかったです。

八木:本来は分けられないものを分けて、間口を広げる。この先、そういう動きが出てくると思っています。

橋本:選択肢が広がりますね。NFTができたことによって、いろんなことの。

握手会でもらう、あのNFT

橋本:そもそも私がNFTを気にしていた理由が、もう1つあって。暗号資産系って、ウォレットとかブロックチェーンとか、いろいろ難しいワードがあるなかで、一番身近に感じているものは何だろうと思った時に、NFTだなと思ったんです。

八木:というと?

橋本:それこそ、アイドルの握手会やイベントでも使われていますし。チケットを買うと、その後に特典としてNFTがもらえる、みたいなこともあるみたいで。暗号資産のなかでは、割と一般の方にも浸透しているイメージがあるので。

八木:まさにそこなんですよ。握手会に来てくださる方が、握手会の後にいただくNFTの裏側の仕組みまで理解しているかというと、そうではないと思うんです。

橋本:確かに。もらったファンの方も「なんだかよくわからないけど、特別な画像がもらえた!」くらいに思っている人が多いかもしれないですよね。

八木:でも、あれも真贋証明なんです。「あなたは確かに、あの日、あの場所にいた」という記録が残る。

橋本:あ……そうか。ただのデジタルなおまけじゃなくて、思い出が本物だっていう証明なんですね。

八木:その通りです。だから、仕組みを知らなくても価値が伝わる。前回お話しした「全部覚えなくていい」というのは、こういうことなんです。

橋本:つながりました。ファンの方はもう、知らないうちにNFTを受け取って、その恩恵を受けているんですね。仕組みを意識しなくても、自然と使えているってすごいことだと思います。

そして、彼女自身の絵へ

八木:そう考えると、今回のオークションもきれいにつながっているんですよ。

橋本:さっき教えていただいた、誰がいつ入札したかという入札の記録が改ざんされずに残る、という話でしたよね。

八木:はい。そして落札された後は、「この絵を確かに落札したのはあなたです」という証明にもなる。入札の透明性と、落札の証明。その両方を、NFTが引き受けているわけです。

橋本:なるほど。私が描いたアナログの作品自体をNFTにするというよりは、オークションで手に入れたこの絵が間違いなく本物ですよ、という証明書みたいな形で使われるということか。それなら、買った人も安心ですよね。

八木:おっしゃる通りです。

橋本:……そう考えると、いつかデジタルで描いた絵自体をNFTにできたら面白そうですね。私、いまは絵の具を使ったアナログでしか描いたことがないんですけど、デジタルアートにも結構興味があって。

八木:それは、ぜひやってみてほしいです。

橋本:デジタルだと、キャンバスを持ち歩かなくてもタブレットがあればどこでも描けますし、筆の種類もすごくたくさんあったりするじゃないですか。レイヤーを重ねて描くのも楽しそうですし。やってみたら、また今までとは全然違うジャンルの絵が描けそうで気になっていて。

八木:デジタルにはデジタルの表現があって、エフェクトを簡単に付けられるとか、アナログではできないことも多いですからね。そこで描いたものをNFTにする、というのはとても自然な流れだと思います。

橋本:今回の展示は全部キャンバスに描いた一点物の絵なんですけど、いつか、そういうデジタルの形もやってみたいです。表現の幅が広がりそうで、わくわくしてきました。

八木:楽しみにしています。

——ウォレット、ブロックチェーン、ガス代。3つの言葉から始まった講義は、「本物であることの証明」という話まで届いた。彼女自身の絵は、いまその舞台に上がった。

展覧会情報

Image via official website
出典: 雨の日の星空公式サイト

『雨の日の星空』
橋本真希(Rain Tree) × 東京藝術大学の学生9名による合同展

  • 会期:2026年8月18日(火)〜8月28日(金) 12:00–19:00
    ※最終日は18:00まで
  • 会場:Gallery Blue 3143(東京都港区南青山3-14-3 1F・2F)
    表参道駅 徒歩約5分
  • 入場:無料・予約不要

会期中、橋本真希が本展のために描き下ろしたF30号(910×727mm)の油彩作品のオークションを開催。入札はNFTマーケットプレイス「HEXA」を通じて行われ、落札者には現物の絵画が手渡されます。入札期間は8月18日(火)12:00から8月27日(木)19:00まで。落札額から手数料および諸経費を差し引いた額は、東京藝術大学へ寄附されます。

公式サイト オークションページ

Profile

1998年4月30日生まれ、埼玉県出身。美容専門学校を卒業後、美容部員(BA)として化粧品の接客に携わり、メイク術などをSNSで発信。Rain Treeの最年長メンバーとして、社会人経験に裏打ちされた高いプロ意識と包容力でグループを牽引。

撮影:Iolite編集部 (@linejka)
画像提供:株式会社オーバース


「Rain Tree」Official site:https://rt-official.jp/

「Rain Tree」公式X:https://x.com/RainTree_RT

CROSS FM 番組公式X:https://x.com/rt_crossfm


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