──「令和の米騒動」「小泉米」などのキーワードがメディアを賑わせていますが、つい最近まで日本人の米離れなどといっていたのが嘘のようです。国が備蓄米を放出したところで、「物流の目詰まり」という根本的な問題の解決にはならないと感じていますが。
佐々木俊尚(以下・佐々木)):業者が買い占めているとか、JA(農協)が流通を止めているとか、犯人探しの視点で語られることが多いですが、実際にはさまざまな要素が重なり合っていると感じています。売店へ届くまでに、複数の仲介業者を経由しているという構造があります。ただ、今回の米不足の原因は必ずしも複雑な流通構造だけではないようです。
米の収穫量の目安となる「作況指数」でみると、2023年は米不足が予想されていましたが、2024年の指数は100を超えていたため収穫量は標準以上と見込まれていました。実際には米不足は解消されていません。米農家に話を聞くと、2024年は米の粒が小さく、精米時の選別で多くがふるい落とされたため、みかけの作況指数よりも実質的に不作だったそうです。
米の消費構造の変化もあります。日本人の主食は米と思われていますが、現在日本では、米より小麦の消費量の方が多いんです。農林水産省は食糧自給率の観点から、国内で生産できる米を優先して守ろうという強い気持ちが働きます。だから「減反政策」など、市場を無視した価格誘導を行ってきました。米価格はずっと不自然な状態だったんです。そんななか、一昨年の米不足をメディアが大きく報じた結果、それまで米をあまり消費しなかった人々が一斉に米を買い求めた。需給バランスが崩壊し、今回の事態を招いたというのが実情でしょう。