サマリ
1. 「ワークライフバランス」より重要なのは“裁量権”
佐々木俊尚氏は、女性活躍推進の議論において最も欠けているのは「働き方の裁量」であり、ワークライフバランスだけでは問題が解決しないと指摘。リモートワークの普及後も監視強化で自由度が下がり、社員が自分の判断で働けない状況が不満を生んでいると語る。
2. 現代女性のキャリアと少子化──構造的問題としての“出産の遅れ”
女性のキャリア形成期(20代後半〜30歳前後)と出産期が重なる現実が、出産の先送り・高齢出産につながっている。これは日本だけでなく都市化が進む国々で共通の課題で、女性が“輝く”とは何を意味するのか、国の期待と個人の幸せの不一致が浮き彫りになっている。
3. テクノロジーが拓く“選べる働き方”──自動運転とメタバースの可能性
働き方の変革にはテクノロジーの進化が不可欠とし、スマートグラスやメタバース、生成AIを用いた自動運転などが「距離の制約」を解消する鍵になると解説。移動コストが激減すれば、都市と郊外の距離感が変わり、育児とキャリアの両立を阻んできた構造が大きく動く可能性があると展望する。
今問われる女性の働き方
──自民党の高市早苗総裁による「馬車馬のように働く」という発言への批判をみて、女性活躍推進の矛盾を感じます。女性活躍社会実現のためには何が必要なのでしょうか?
佐々木俊尚(以下・佐々木):最近、私が提唱しているのは「ワークライフバランス」よりも「裁量権」の方が大事ということです。ワークライフバランスの議論では自営業の人たちからは「もっと働きたいのに、なぜ働く時間を減らされなければならないのか」という反論が必ず出てきます。
自営業は仕事の量や配分を自分の意思でコントロールできるため、好きなタイミングで休むことが可能です。つまり、自営業の人たちは裁量権を持っている。
その一方で、会社員には時間や働き方に裁量権がなく、コロナ禍を機にリモートワークが発展してもPC監視ソフトで業務を監視されるなど、逆に自由が制限されてしまった。結果的に「リモートワークでも裁量権がない」という状況が生まれたわけです。さらに、会社員に聞いたアンケートをみると「ホワイトすぎて仕事が覚えられない」という不満も出てきているんですよね。
要するに、ワークライフバランスを保てばすべてが解決するわけではないのです。完全に仕事がリモート化すると同僚とのコミュニケーションが不足し、うまく機能しなくなるという問題もこの不満を加速させています。
そのため、今の働き方の主流は週に2〜3日だけ出社する“ハイブリッド型”が多くなっていますが、本質は「リモートワーク」か「出社」かという選択ではなく、社員がどこまで自分の判断で働けるかという裁量があるかが重要なわけです。