本気でDXを推進するならUIを完璧にやらないとダメではないか?
——UIの進化と日本のDX推進を阻むUI問題についてご見解をお持ちでしょうか。
佐々木俊尚(以下・佐々木):まずDXが推進するなかでUIが進化してインターネットが使いやすくなるというのが間違いなくあるわけです。
今から20年以上前、90年代にパソコンがようやく日本社会に普及して、インターネットが使われるようになった時代を振り返ってみると、あの頃書店に行くとパソコンの使い方入門みたいな本がたくさん売ってたんですが、スマホ時代になって、PCも含めて入門書を読んでいる人というのは少ないと思います。それはそれだけUIが進化して使いやすくなったということなんですが、 Android OSにしろiOSにしろ、直感的に使えるようになっているので、まったく予備知識なしに使い始めてもそこそこ使いこなせるくらいにはなってきています。それも年々使いやすくなってきている。
UIの進化というのはMS-DOS時代のCUIから、80年代後半から90年代にかけてMacやWindowsのGUIとなり、2000年代半ばぐらいのスマートフォンの登場でディスプレイをタッチ操作するようになるんですが、マウスで操作するか指で操作するかの違いで、基本的にはパソコンのGUIと同じ操作系だったので、過去数十年のパソコンなどのUIの進化は実質1回しか行われてないともいえるんです。
——今後はUIが劇的に変わる可能性がありますか?
佐々木:そうですね。生成AIが登場してから今後はOSがUIの中心になるといわれるようになったなかで、今後のUIの進化を考えると、ひとつは音声で入力するのが当たり前になるということです。また、Apple のVision ProのUIがジェスチャーの動きだけということから、もうひとつの方向性として、Appleが次に考えているようなジェスチャーUIですね。
そのジェスチャーUIと生成AIが音声対応するという方向性がリンクする可能性もあって、最終的な着地点というのは音声とボディーランゲージでコンピュータと会話するという方向なんじゃないかと思います。
——デバイスと会話するのが当たり前の時代になる?
佐々木:そう、まさに我々人間が人間同士で喋る時と同じ感じですよね。メニュー画面とか全部なくなって、我々が人と喋るのと同じようにコンピューターとも喋り、ボディーランゲージで話すという方向に最終的に行き着くんじゃないかと。
さらには音声とボディーランゲージだったら、今のスマートフォンの形態は必要なくなるので、デバイスの形態が超小型化して、我々が日常的に目にすることはないという可能性があるわけです。
——もはやデバイスとも呼べない形態になる?
佐々木:一時的にはそうですね。でも、やはり人間というのは何か目の前にいないとコマンドが出しにくいんですよ。それは音声とボディーランゲージだからこそ、それに対する反応が自然言語プラス自然な身体表現みたいなところが必要なわけで、そうなるとデバイスの最終着地点というのはロボットなんじゃないかと思います。
だから、何十年後か先にきっと小型のロボットを連れて歩いたりとか、小さなロボットを肩に乗せてしゃべり続けているという世界がやってくるかもしれない。そうなると基本的にはUIの使いづらさというのは完全消滅するんじゃないかなと思います。