暗号資産交換業者の一員としてビジネス構造を伝えていくことが重要
——天羽さんは、2023年の暗号資産及びWeb3.0領域の現状をどのようにみており、今後どのような動きになっていくと考えていますか?
天羽健介(以下、天羽):私はWeb3.0を「暗号資産やNFTなどトークンホルダーコミュニティを巻き込んだ共創」と捉えています。
NFTのユーティリティとしてコミュニティへのアクセス権が主流になってきており、コミュニティを創っていくことが不可避であることに感度の高い人は気付き始めていますが、コミュニティ運営の知見はまだ確立されていません。先に飛び込んで知見をためることが重要です。
NIKEやスターバックスがNFTを使ったWeb3.0コミュニティ形成を始めたように、2023年はマーケティング観点で多くの大手企業がNFTを使ったメンバーシッププログラムを市場に投入してくるでしょう。
また、著名人のファンクラブも、ファンクラブ2.0として、既存のサブスク型ファンクラブからNFTを使ったファンクラブに徐々に移行・融合していくと思われます。これに紐付いて、おそらく著名人のライブやイベント等のチケットもNFTになっていくはずです。
ブロックチェーンの特徴の1つであるトレーサビリティ(追跡可能性)はエンターテインメント業界固有の課題解決の一助となるのではないでしょうか。Web3.0とAIも交差し合流していくと思われます。AI周辺で知的財産権の侵害に関する線引きの論点が整理されれば、事業者の活用が促進され大きく普及が進むでしょう。
Web3.0とAIの合流地点がメタバースです。人は、職場や家族、友人や恋人などそれぞれのコミュニティでみせる自分自身、人格は少しずつ異なるものです。現実世界、メタバースを問わず、マルチバースでマルチ人格を操る時代が訪れるでしょう。
現実世界とメタバースの違いの1つに、外見から解放されることがあります。外見から解放された時に、自分は何者なのか、何がしたいのかをこれまで以上に考える機会が訪れるのは必定だと思います。
——今後、コインチェックとしてはどのようなポイントを重要視して事業を進めていくのか。また現在進めているNFT・メタバース事業ではどういったところに注力していくのかお聞かせください。
天羽:コインチェックは暗号資産取引所事業をコアに、NFT事業、メタバース事業の3つの事業を展開しています。
日本初のIEOも、暗号資産取引所初のNFT取引所も、マルチバースにわたってコミュニティを運営するメタバース事業も、これまでコインチェックが実現してきた事業はすべて一次情報を収集して飛び込み、もがきながら解像度をあげ、軌道修正しながら創ってきたものです。
スマートコントラクトを使った領域のトレンドはDeFiやNFTから、DIDやGameFiなどに移っていくと思われ、私たちも追いかけています。重要なことは、近視眼的になりすぎず、少し先のWeb3.0時代を見据えてトークンエコノミーの骨組みを創り、Web3.0エコシステムを形成することだと考えています。
この市場はとてつもなく速いスピードで進行するので、思うより早く流れが来るとみています。
Web3.0エコシステムを創る第一歩として、2023年5月に独自NFT「OASIS COMM UNITY PASS NFT」を発行します。独自NFTの発行はこれまで取引所プラットフォーマーとしてやってきた私たちの事業の延長線上にはないもので、トークンホルダーを巻き込んだコミュニティビジネスであるWeb3.0ビジネスに取り組むことの意思表示です。