人口減少率や経済縮小などが深刻な秋田を“秋田犬”と“Web3.0”で変革する「Web3村」などユニークな構想を描くプロジェクトの取り組みに迫る。
秋田が抱える課題を解決する上でもWeb3.0は有効なツールに
——秋田県を拠点としてMeta Akitaを立ち上げた背景を教えてください。
TASUKOF:Meta Akitaを秋田で立ち上げた理由は、メンバーの大半が秋田出身の有志である点に加え、長年秋田を取り巻くネガティブな現状を何とかしなければならないと考えたためです。
秋田県の人口は年間1万人以上減少しており、人口減少率は日本一です。東日本で最も女性の県外流出率が高い県でもあり、平均年齢をみても50歳超と日本で最も少子高齢化が進んでいます。それに伴い経済縮小のスピードも日本トップであり、非常に深刻な状況です。
我々はこの状況を変えるために、最初に秋田で事業を創発しようと考えたわけですが、仮に飲食や小売などの事業をあらたに始めても、県内需要自体が小さいため成功する可能性は低いと考えました。さらに、秋田は「陸の孤島」であり、大都市圏からのアクセスも悪く、県外から人を呼び込むことも容易ではありません。
その上で、秋田で何を起点にどのようなビジネスをするかを考えて出た条件が、1つは「少数精鋭でスモールスタートができる」点、そしてもう1つが「秋田の地理的条件と経済に捉われない」点です。
それらを考慮の上、まずはITビジネスを起点とすることにしました。私自身、2016年頃から大手企業でブロックチェーン事業のコンサルティングに携わってきたこともあり、インターネットの次世代型モデルの1つであるWeb3.0が、秋田が抱える課題解決に使えるかもしれないと考え、Web3.0をMeta Akitaのソリューションの1つに据えました。
——なぜ、Web3.0がITビジネスの次世代型と思われるのでしょうか?
TASUKOF:まず前提として、インフラとしてのインターネットというのは、本来中央集権的ではないと考えています。しかし結果的に現在のインターネット/ITビジネスはGAFAMを代表とする大企業に牛耳られています。
Web3.0についても根本には非中央集権という概念がありますが、実際のところは一部のノードがマイニングを占有していたり、大企業も多額の投資をしてWeb3.0すらも中央集権化(Web3へのゲートウェイを占有)しようとしています。我々としてはこの動きに対して一種の危機感を抱いています。
一方で、Web3.0は個人の貢献に対する透明性のあるインセンティブが実装しやすいので、分散化が進むことで、世界中の個人レベルであたらしいビジネスや技術革新が生まれる可能性を秘めていると考えています。私たちはこの点がITビジネスの未来のあるべき姿と考えており、Meta Akitaとしては地方から「ITビジネスの理想的進化」を推進していきたいと考えています。
——事業を立ち上げる上で「秋田だからこそ成功するだろう」と考えた部分をお聞かせください。
TASUKOF:まず、地方を世界にPRするためには、世界の人にとってわかりやすいものをビジネスのコアに選択する必要があります。秋田において最も世界的なIP(ブランド)といえばやはり秋田犬です。我々は秋田犬に焦点をあて、IT/Web3.0と組み合わせることで、秋田犬のブランドをうまく活用したビジネスを創出することにしました。
白幡雄大(以下、白幡):IPの活用は地方創生のカギだと考えています。秋田には秋田犬のほかにも、日本酒やなまはげなどといった知名度の高いIPがあり、それらを活用したビジネスにも可能性を感じています。また、IPをビジネスの中心に据えつつ、DAO的に個人が主導権を持ってその活動を牽引するというのは、Web3.0に適したモデルです。
私たちはWeb3.0の考え方・技術を活用したビジネスを展開しながら、秋田のIPを応援してくださる日本中・世界中の方々がその場にいながら秋田を盛り上げる活動に参加し、さらにファンが増えていくような未来をイメージしています。
TASUKOF:IPを活用したビジネスとあたらしい組織の形としてのDAOがうまく機能すれば、デジタル上ないしは物理的に、自然と人が秋田に集まってくる状態を作れると考えています。
世界中の秋田犬ファンもそうですし、一度県外に出た秋田県出身のスキル人材が秋田に戻ってくるかもしれません。そのような人とお金の流れを作ることができれば、まだ眠っているさまざまなIPを掘り起こすことができ、相乗効果も生まれると考えています。
私たちはこの状況を生み出すべく「世界最速で少子高齢化が進む街を世界一豊かさを誇れる街に」というビジョンを掲げて活動しています。