
「NEXT SNS」大手企業がこぞって目指すスーパーアプリ化の未来 前編
WeChatから始まったスーパーアプリ化の流れは大きなトレンドとなった。
AIに注目が集まる今、スーパーアプリはダークホースだ。
Web3.0のマスアダプションは洗練されたスーパーアプリの先にあるのかもしれない。
以前より、Web3.0領域に内包されるNFTやメタバース、暗号資産においてどのように「マスアダプショ ン」を達成するかどうかが課題とされていた。
米国の社会学者Everett M. Rogers氏が提唱した普及モデルが指す、イノベーターやアーリーアダプターから、いかにしてアーリーマジョリティへのキャズムを越えるか。2023年という節目に入り、その様相が一層強まっている。
Dappraderの調査によると、2021年から2022年の間に世界のNFT取引高は251億ドルから247億ドルへと減少した。一見するとNFTは、コロナ禍以降の世界的な金融緩和で投資マネーが溢れたことによって咲いた徒花のようにもみえるが、取引量が大幅に増加したこともわかっている。
2021年に5,860万回であったNFTの取引量は、2022年に1億100万回と増加しているのだ。この数字からは、今までの投機的な目線でのNFTの購入から、実際に利活用され始め、ユーティリ ティ性を価値基準としてNFTが求められるフェーズになりつつあることを暗に示している。
また規制に関連して、日本と海外では大きなギャップがみられつつある。代表的な例としては、米国における「NBA Top Shot」の有価証券問題があげられる。
NBA Top Shotは、100万人以上のユーザーが利用しているトレーディングカードのデジタルプラットフォーム。SECは同NFTを有価証券であるとみなしたが、日本ではそのような事案は出てきていない。
これは、日本が世界に先駆けて暗号資産規制を強化した証左であるともいえる。裏を返せば日本国内において、ガイドラインを守ったNFTの活用はグレーなものではなく認められたものであるということだ。
これら次世代のテクノロジーが実生活に根付いていく過程で、切っても切れない存在がウォレット。カストディアルであるかそうでないかはさておき、次の時代の勝者はウォレット市場を制した者ともいわれ、基本的なKYCを利用開始時にすでに完了させているアプリケーションにウォレットが連携することで、SNSまたはアプリケーションの利用者数≒独自ウォレットの保有者という構図が生まれる。
Web2.0時代、SNSで事業を拡大した強者は、次のビジネスチャンスがここにあるとみて動きを詰めている状況だ。つまり、2023年は多機能型のNEXT SNS(スーパーアプリ化)が出現する可能性が極めて高い年であるといえるだろう。
本特集では、既存のSNSがスーパーアプリ化を目指す理由を、スーパーアプリが生まれた歴史や未来予測から紐解き、それを踏まえたアプリケーションの今後の展開や有益な活用方法を提示する。
群雄割拠の多機能型アプリケーションの領域
SNSのスーパーアプリ化の流れは、中国のTencent(テンセント)社が提供する「WeChat」が始まりとされている。2011年1月、「WeChat」リリース時は、メッセンジャーとしての機能を主とするアプリケーションだった。
その後2013年8月にQR・バーコード決済サービス「WeChat Pay」を開始。2020年3月には「健康ID」と呼ばれる機能を実装し、新型コロナウイルスの流行に伴い、交通機関を利用するユーザーの健康状況のチェックに用いられたほか、感染者を特定できた場合には過去に感染者と 接触した者へ警告する機能が備わっており、さまざまなところで活用された実績もある。
下図には、すでにスーパーアプリ化を進める サービスとスーパーアプリ化を目指す事業を掲載。
一度は目にしたことがある企業が名を連ねており、今後スーパーアプリ化に向けて市場競争が激化することも予想される。
国外では、2022年にゲームチャットアプリとして知られるDiscord(ディスコード)が、新規ユーザー獲得に向けプラットフォーム内でのミニゲーム提供やYouTubeのシェア視聴アプリの提供を始め、月間アクティブユー ザー数が1億5,000万人にまで達した。
Discordは複数のBotを活用してコミュニティを構築できる点、「role(ロール)」という機能を活用してコミュニティ内の役割分担を明確にし、より円滑な組織運営を実現できる点など、Web3.0関連のプロジェクトにマッチした機能があるところもアクティブユーザーを伸ばした要因である。
決済機能等を導入し本格的にスーパーアプリとしての展開を進めると、シェアを加速度的に広げる可能性を秘めている。
国内に目を向けると、2013年にフリマアプリとしてサービスを開始したメルカリも注目の存在だ。2019年2月には、メルカリの完全子会社であるメルペイが非接触決済サービ スを開始し、2023年3月に完全子会社であるメルコインがメルカリ内の売上金や残高、ポイント等でビットコインを1円から購入できる仕組みを提供している。
サービスリリース後、わずか2週間で10万口座開設を達成。国内の暗号資産取引口座数は約640万口座、直 近1年間の月間口座開設数は6万口座とされるなか、メルコインが達成した2週間で10万口座開設という実績は、基本的なKYCが完了しているアプリケーションからの新規ウォレット開設が、いかに相性の良いものであるかを証明している。
スーパーアプリ化を表明していないアプリにも
可能性を秘めた存在が多々
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