「デジタルトランスフォーメーション」こと「DX」は直訳すれば「デジタルによる変容」だ。
一般的には「デジタル」の部分ばかりに注目が集まりがちだが、最も重要な部分はデジタル技術を用いた「変容」の方にある。
この問題に直面しているのは民間企業だけではなく、地方行政、地方自治体も同様。民間企業よりも可視化されづらい地方自治体の「自治体DX」とは、いったいどんなもので、何を行っているのか。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進というテーマは、一般的には民間企業において聞く話題だ。しかしながら、このテーマに頭を悩ませているのは行政、地方自治体においても同様となっている。特に地方自治体では、地方自治体ならでは問題や課題が数多く発生している。
こうした地方自治体のDX推進は「自治体DX」とも呼ばれている。この自治体DXとはそもそも、どのような内容を示しているのだろうか。
具体的にはデジタル技術やデータを駆使し、自治体を始めとした各種公共機関や施設などの行政サービスに変革を行い、地域社会への貢献を目指すことになる。
実際に、各地域のデータを適切かつ効率的に収集、管理、分析、そして活用することで、地域住民へのより有意義で快適な行政サービスを提供することが可能だ。収集したデータをビッグデータとしてAIなどを駆使し、適切な運用を行えば、住民の利便性が上がることは間違いない。
またデジタル技術やAIをうまく取り入れることで、業務効率化が行え、サービスの向上だけではなく、人材を今までにないあらたなサービスに割り当てることもできる。
総務省は2020年には「デジタル・ガバメント実行計画」の閣議決定時に「自治体DX推進計画」を発表。2021年にはデジタル庁が中心となって、「Gov-Cloud(ガバメントクラウド)」という、統一化された基幹業務システムの構築を目指す方針となった。
これが進めば、全国の地方自治体がSaaSやIaaS、PaaSといった複数のクラウドサービスをできるようになる。多くの業務がウェブ上で実施できるようになり、コストを抑えて業務のスピードも上がる。
そして何より、国と各地方自治体同士のデータ上の連携も取りやすくなることが期待されている。国全体を上げてDXを推進していく機運が高まっているのだ。
「時代の波」と「社会のさまざまな課題」が差し迫る状況下で、地方自治体のDX推進は長きにわたる課題
こうしたなかで特に地方自治体のDX推進においては現実的な必要性に迫られている背景もある。
総務省の「地方公共団体の職員数の推移」によれば、地方自治体の職員数はこの20年間で40万人以上削減されている。いわば万年人手不足な状態が続いており、行政サービス業務の効率化は急務の課題となっている。
また、 2020年以降の新型コロナウイルス騒動の対応をめぐって、地域間、組織間をまたぐ横断的なデータの活用や連携ができていないことが浮き彫りになったことも背景に存在する。
2021年に岸田文雄政権が誕生すると、岸田首相は「地方からデジタルの実装を進め、あらたな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めます」という所信表明を発表した。
岸田首相就任前に設立されたデジタル庁ではこれを受けて「地方におけるデジタルイ ンフラの整備などによる『デジタル田園都市国家構想』の実現」、「データ戦略の推進」、「行政のデジタル化の強力な推進」を「3つの柱」として推進し重点的に取り組むとしている。