イーロン・マスク(Elon Musk)氏が設立したAI企業「xAI」は26日、シリーズB資金調達ラウンドで60億ドル(約9,400億円)の資金調達に成功したことを発表した。
この調達した資金は「xAIの最初の製品を市場に投入し、高度なインフラを構築し、技術の研究開発を将来加速させるために使用される」と述べている。
これまでにxAIは、X(旧Twitter)経由で利用できるAI「Grok」をリリースしている。このチャットボットは現在「Xプレミアム」加入者のみが利用できる。
マスク氏はXへの投稿で、今回の資金調達で同社の企業評価額が180億ドル(約2兆8,000億円)に達したことを発表した。投資家にはシリコンバレーの大手アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)、セコイヤ・キャピタル(Sequoia Capital)、サウジアラビアのアルワリード・ビン・タラール王子などが含まれている。
ドイツ銀行のアナリストは、最新の調査レポートでAIの最新動向について「すでに驚くほど強力な生成AIモデルが絶えず改良されていることは、この技術が業界のリーダーにとって必須のものになっていることを示している。業界の主要プレイヤーは市場での地位が確立される前の初期の競争で遅れを取る余裕はない」と述べている。
各社のAI投資は加速
2022年後半にChatGPTを発表したオープンAI(OpenAI)は、1年の間に企業評価額が3倍の800億ドル(約12兆5,000億円)に達した。そのうち130億ドル(約2兆円)はマイクロソフト(Microsoft)が投資した。
また、2021年に設立されたアンソロピック(Anthropic)は、アマゾン(Amazon)からの資金を中心に約80億ドル(約1兆2,500億円)を調達し、評価額は約150億ドル(約2兆3,500億円)に達した。グーグル(Google)やメタ(Meta)などの大手IT企業も自社のAI技術に数十億規模の多額の投資を行っている。
これらの投資は、テキスト、音声、画像を生成するために膨大な処理能力を必要としている生成型AIシステムの運用にかかる高額なコストを反映している。AI開発を支えるハードウェアはかなり高額であり、エヌビディア(NVIDIA)のBlackwell B200 AIグラフィックカードは30,000~40,000(約470万〜630万円)ドルほどの価格となっている。
xAIはGrok AIのアップグレードとしてエヌビディアが提供する現行のH100チップを10万個用意する可能性があるようだ。マスク氏は投資家に対して、2025年秋までに新データセンターを設立する計画であると伝えたという。
テスラ(Tesla)やスペースX(SpaceX)、そしてXを率いるマスク氏は、2015年にオープンAIの共同設立者となったが、その後企業の方向性の違いなどの理由で同社から離脱している。マスク氏は、今回の資金調達でオープンAIを始めとする他社とのAI競争に勝ち、人類にとって最も優しいAIを開発することを目指すという。
参考:発表
画像:Shutterstock
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