
法改正の要点を掴む 日本のステーブルコインの現在と未来 前編
ステーブルコインに関する法律がついに施行
変更点や利用ケースについて解説
現在、暗号資産に関する規制整備が各国で行われている。 一方、日本は先んじて法制化を進めており、世界情勢も踏まえWeb3.0を推進する追い風が吹いている。
そんななか、世界に先行する形でステーブルコインの定義付けを明確にした法改正が6月に行われた。 これを受け、国内の暗号資産及び決済ビジネスなどはどのように変化するのだろうか。
暗号資産市場を支えるテザーの時価総額推移
▶︎CoinMarketCapより引用
2023年6月1日に施行された改正資金決済法により、ステーブルコインに関する規制が初めて明確化された。これに伴い、ステーブルコインへの注目度が日に日に高まっている。
法改正によってステーブルコインの定義付けがされたことは、すでに関連ビジネスを行う事業者、そしてこれから行うことを検討する事業者にとって大きな意味を持つ。
ステーブルコインは海外とのクロスボーダー取引や会計処理等、これまで時間を要していた決済領域を中心に効果を発揮するとされている。また、国内で法定通貨建てのステーブルコインを発行することが可能になったことから、既存の暗号資産ユーザーにとっても前向きに捉えることができる法改正といえる。
そもそもステーブルコインとは英語で「Stablecoin」と表記され、その意味としては「安定した通貨」を指す。 暗号資産はボラティリティが非常に高いことで知られるが、ステーブルコインは裏付け資産などを有し価値を安定化させていることが最大の特徴だ。
一概にステーブルコインといっても、その種類は多岐にわたる。代表的なところでは、日本円や米ドル等の法定通貨と価値連動する「法定通貨担保型」、特定の暗号資産に価値が裏付けられた「暗号資産担保型」、金(ゴールド)や原油、プラチナ等のコモディティ(商品)と連動する「コモディティ担保型」があげられる。
このほか、アルゴリズムや指標等をもとに市場の需給バランスに沿って発行される「アルゴリズム型」のステーブルコインもあるが、現在は主流であると決していえない。
これは昨年発生した「テラ事件」とも呼ばれる騒動が発端としてあげられる。この騒動では、米ドルと連動するテラUSD(旧UST)の価格が乖離し、結果的にエコシステムの崩壊を招いた。
テラUSDはテラブロックチェーン上で発行されるステーブルコイン。テラブロックチェーンのネイティブトークンとしてはテラ(旧LUNA))があり、テラUSDとは密接な関係にあった。
しかしテラUSDの価格が米ドルから乖離したことでテラの価格も暴落し、負のスパイラルを招くと、完全に需給バランスは崩壊。以降、テラUSDの価格が戻ることはなかった。
米国を始め多くの国の規制当局がこの事件を問題視し、早急にステーブルコイン規制を整える姿勢を明確に打ち出している。
日本では改正資金決済法でアルゴリズム型ステーブルコインの取り扱いについても明記している。法定通貨建てステーブルコインについては大きく2つに分類し、具体的には電子決済手段等で用いられる「デジタルマネー類似型」とそれ以外の「暗号資産型」にわけられる。
アルゴリズム型や暗号資産担保型、コモディティ担保型ステーブルコインはデジタルマネー類似型に当てはまらない全般を指し、暗号資産や金融商品として扱われる形だ。
一方のデジタルマネー類似型は日本円等の法定通貨と連動した価値で発行され、発行価格と同額で償還を約する、あるいはこれに準ずるものと定義されている。
発行者も銀行や資金移動業者、特定信託会社などのライセンス取得者に限定し、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策の一環で疑いのある取引のモニタリング等の対応を行う必要があるなど厳格化された格好だ。
また、デジタルマネー類似型は先述の通り電子決済手段等で用いられることが前提となる。電子決済手段については1号から4号までの4つの類型に定められており、暗号資産ユーザーたちに馴染みのある米ドルに価値を裏付けられたテザー(USDT)やUSDコイン(USDC)などは「物品の購入や代価の弁済に使用でき、なおかつ不特定の者との間で購入及び売買することができるもの」として、基本的な性質としては1号に分類される。
このことからもわかるように、実は改正資金決済法によって、日本の法律では法定通貨建てのステーブルコインは暗号資産に該当しないということになる。これにあわせて、暗号資産の取引を仲介する暗号資産交換業者と同様に、取引を仲介するためには銀行業免許、資金移動業、電子決済手段等取引業といったいずれかのライセンスを取得する必要が生じるケースもある。
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