2026年だからこそ生まれた“生成AI×サスペンス”映画 AI時代に問うクリエイティブへの向き合い方——近藤亮太インタビュー

2026/07/30 10:00 (2026/07/30 10:13 更新)PR
Iolite 編集部
文:Shogo Kurobe
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2026年だからこそ生まれた“生成AI×サスペンス”映画 AI時代に問うクリエイティブへの向き合い方——近藤亮太インタビュー

「5秒で完全犯罪を生成する方法」

本記事のキーポイント

1.生成AI×サスペンス映画の誕生
映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』は、対話型生成AIを活用した完全犯罪のシナリオと人間の葛藤を描くサスペンス作品だ。完璧に構築された物語構造に対し、演出面で各登場人物に丁寧な人間味を付与することで、時代を象徴する作品に仕上げている。

2.緻密な脚本と人間味溢れる演出
岡田道尚氏による完成度の高い脚本に対し、近藤監督は登場人物の将来の夢や葛藤といった要素をプラスした。AIという先端技術をテーマに据えながらも、物語の本質である家族関係や葛藤といった人間の泥臭いドラマを色濃く浮かび上がらせている。

3.AI時代のクリエイティブと人間の手癖
近藤監督はAIをアイデア創出の壁打ち相手として捉えつつも、作品の面白さを決めるのは人間の手癖や感情だと語る。過渡期にあるテクノロジーと人間の距離感をリアルに切り取った本作は、今後のAI時代の創作のあり方を示す記録としても機能する。


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9月11日(金)より全国公開!

出演:重岡大毅、原菜乃華、田中みな実
原案・脚本・プロデュース:岡田道尚
監督:近藤亮太
配給:ギャガ

©2026 Gaga Corporation/Storm Labels Inc./Studio i3

公式サイト:https://gaga.ne.jp/5byodeseisei/

あらすじ

意図せず殺人を犯した妹・幸来(原菜乃華)を救うため、兄・航(重岡大毅)が対話型生成AIに「完全犯罪を成立させる方法」を問いかけ事件の隠蔽を図る新時代サスペンス。AIが導く綿密なシナリオと予期せぬ事態、人間の葛藤が交錯する2026年必見のエンターテインメント。

エンタメの骨格に、人間味を吹き込む

──映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』の脚本を最初に読んだ時、どのような印象を持ちましたか?

近藤亮太(以下、近藤):すごく現代的だなと感じました。これまでの企画は、最終的に脚本を書くのは脚本家さんだとしても、自分の頭で考えて、企画の出発時点で自分が発想しているものが多かったです。しかし、岡田道尚さんが書かれた脚本は、キャラクターの描き方、物語の運び方、テーマの取り扱いなど、あらゆる面において、自分には思いつかなかった面白さがありました。

──近藤監督の作品には、「何かいるかもしれない」という不気味な怖さや無音の間が独特に使われている印象があります。それも今回の作品に散りばめられているなか、脚本の岡田さんと近藤監督との間で、良い意味でのギャップはどこに感じられましたか?

近藤:キャラクター1人の解釈の仕方をとっても、結構違う目線でみているなと感じました。私は普段ホラー作品に携わることが多く、どちらかといえばエンターテインメント寄りの内容というわけでもありません。

一方、岡田さんはより大衆に開かれたエンターテインメントのキャラクター造形を行う印象です。ですから、まずは岡田さんが作ってくださっている領域の、しっかりした骨格とドライなところに、自分なりの人間の見方をすり合わせていくような作業がありましたね。

Ryota Kondo1

──岡田さんがキャラクター像を作り上げ、そこに近藤監督が息を吹き込むような行程があったかと思うのですが、ここではどのようなことを意識されたのでしょうか?

近藤:最終的に監督としての私の仕事は、俳優がこの脚本やキャラクターの設定を受け取った時に、それをどれだけ人間的に落とし込んで魅力的にしてくれるかという演出の領域です。物語の機能としては完璧に仕上がっている状態でしたので、私は私自身が考える人間性のようなものを加えていくことを意識しました。実際、「物語上は一切言及されていないが、本当はこういう面もあるのではないか」という要素をちょっとずつ足していくことが多かったです。

この作品はAIをテーマにしたものですが、根本的な部分は“人間性”に関するお話だと思っています。登場人物が何を犠牲にしているか、何を失うことをおそれているかということを表現していく物語だろうと解釈しました。

「何を失うことをおそれているか」という点では、“兄妹の関係性”があげられます。たとえば私にも兄姉がいますが、家族を大切だと思っている気持ちと、その一方で仕事を大事に思う気持ちは時に葛藤を招きます。妹の幸来(さら)にしても、兄である航(わたる)が大事だという前提はありつつも、やはり彼女なりに夢があるはずだと考えました。

初期段階では、幸来の将来の夢という設定はありませんでした。そこで私から提案し、幸来がパティシエになりたいという夢を持っていることを強く打ち出すようにしました。

物語の流れには大きく影響しないのですが、彼女ら一人一人が持っている「時間」のようなものが多少感じられると、よりこの作品の面白さを引き出せるのではないかと考えたからです。そのため、各キャラクターに対して「ここをプラスできると人間味が感じられるのではないか」ということをかなり提案しました。

テクノロジーの過渡期を切り取る記録

──撮影時に苦労されたことや、生成AIに関する作品に触れたことによって、今後活かせると思えたあたらしい発見はありますか?

近藤:苦労した点はたくさんありますが、長編映画になるため前作(デビュー作『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』)とまったく異なる規模感には苦労しました。

メインスタッフは前作とほぼ同じチームで、ほとんど自主映画をやった時の延長のような体制でこの規模の作品を撮りました。改めて振り返ると、それを許可してくれたプロデューサー陣はすごいなと感じます。しかし、いかんせん経験が豊富なチームではないので、何ができて何ができないのかを徐々に理解していく必要がありました。

撮影期間も前作の約3倍はあったのですが、結果として思い描いていたほど余裕はありませんでした。それでも、短期間で制作する作品と変わらない点が意外とあり、それはあらたな発見ですし経験できてよかったと思います。

Ryota Kondo2

──生成AIをテーマとして描く意義について、本作を通じてどのように感じられましたか?

近藤:私自身、相談事や簡単な壁打ち、企画の相談などでフランクにAIを使っています。だからこそ、この作品を通じてAIという最先端のテクノロジーとの距離感が縮まればいいなと思います。

また、私はこの作品を「過渡期的な作品なのかもしれない」と感じています。作中に出てくる技術のなかには「正直今の技術では厳密には実現できない」という領域もあります。

その反面、「今となってはもう驚くようなことではないかもしれない」と思う部分もあるんですね。ですから、5年後、あるいは来年になってからみた時とは全然印象が違っている可能性があります。後から振り返った時に、技術の過程のようなものが記録されている作品になるかもしれないですね。

AIは“壁打ち相手”、作品に宿るのは“人間の手癖”

──あらゆる領域でAIによる利便性の向上が期待されるなかで、クリエイティブに関しては著作権・倫理問題などさまざまな課題があります。こうした状況で、近藤監督は“AI時代におけるクリエイティブとの向き合い方”、そして“AIとの共存”についてどのように考えていますか?

近藤:私もAIを活用していますが、もちろん気をつけなければいけないことがたくさんあります。最終的にアウトプットするものにおいて、AIを無制限に使うというのは、少なくとも現時点では適切ではないケースも多いと思います。

しかし、スマートフォンやインターネットの登場時もそうですが、あたらしいものが出てきた時にそれをどう扱うのかという合意形成のようなものは時間をかけてやるものだと思います。ですから、あまり「AIが即座に怖い」とか「良くない」とは考えていませんし、逆に「バンバン使っていけばいいのに」とも思っていません。

私の使い方として、今のところは「ザッピング」としての用途がメインです。マンガ家の手塚治虫さんが、原稿を書いていて詰まったらとりあえずテレビをつけてひたすらザッピングをする、というお話を聞いたことがあります。理由もなくひたすらチャンネルを変え続けるらしいのですが、私も携わる作品の制作の間に映画をみることで、あらたなアイデアが生まれたりします。

AIの役割もこれに近いです。企画の相談などをしても、正直大したことは返ってきません。「そんなことはわかっている」ということしか今のAIは出力できませんが、ふとした時にフックとなるようなフレーズやキーワードを思い起こすための壁打ち相手としては非常に有効だと思います。

ただ、最終的な出力として脚本をAIが書くといったことなどは現実的ではないと感じています。一定のレベルにはなると思いますが、やはり人間の手癖や、その時の気分が盛り込まれている方が面白かったりします。“人間らしさ”を表現するのにはまだ時間を要すると思いますね。

Ryota Kondo3

──最後に、「5秒で完全犯罪を生成する方法」のみどころと読者やファンの方々に向けてメッセージをお願いします。

近藤:本作のキャラクターは俳優さんたちのお芝居によって非常に魅力的なものとなっています。そのなかで「AIを使った完全犯罪」という、今だからこそ出てきた発想のエンターテインメントの物語が展開されています。2026年だからこそ生まれたタイプの作品だと思いますし、さまざまな切り口から面白さを感じることができると思いますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらうれしいです。


Profile

Ryota Kondo4

近藤亮太(Ryota Kondo)

1988年生まれ。日本ホラー映画大賞で2年連続受賞をはたし、長編映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』で商業デビュー。独自の恐怖演出や無音の間に定評があり、最新作として映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』の監督を務める。


スタッフ

取材◉Noriaki Yagi

文・撮影◉Shogo Kurobe


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