AIチャットブームに火をつけたChatGPTが歴史上最速でユーザー数1億人を突破するなど、AIサービスは瞬く間に世界中へと広がっている。
しかし、実際に使ってみると「思った通りに動かない」という声も多い。その理由は、AIの特徴を理解して正しく”プロンプト”を打ち込んでいないからだ。
正しく使えばさまざまな業種で、業務効率化やあらたなビジネスに使えるAI。今のうちに徹底的に理解しておこう。
AIを使いこなすためには、自分が求めているものをイメージし、それを言語化する能力が必要になる
話題になっているAIサービスを使ってみたが、思い通りの回答が得られなかった、あるいは単純な質問をして回答をみただけで、それ以上の使い方がわからない、という人は非常に多い。
何やらすごい技術であることは間違いないが、普段の生活で使う意味はない、と感じる人も多いのではないだろうか。事実、2022年11月にリリースされAIブームを巻き起こしたChatGPTも、2023年6月のリリース以来、初めて月間アクセス数が減少している。
AIは何でも簡単に、人間が求めるものを出力してくれるわけではない。AIを使いこなすためには、人間側にもテクニックや知識が求められるのだ。特に汎用性が高いと思われる文章生成や画像生成については、プロンプト(AIに命令するための文)の質によって出力が大きく変化する。
たとえば「Web3.0について教えて」というプロンプトよりも、「Web3.0に関係するテクノロジーを列挙して」、「Web3.0と呼ばれる技術によって何が変わるのか教えて」と書いた方が、より詳細で正確な回答を得られる。AIは人間から与えられた情報をもとに、文章や画像を出力することしかできないため、人間が求めるものを正確に伝える必要があるのだ。
考え方としては、人間とのコミュニケーション、あるいは部下へのマネジメントに近いといえるだろう。相手が必要としている情報を与え、自身が求めるものを正確に伝えた上で出力を求めれば、より良い回答を得やすくなる。
自身が求める回答を明確にイメージして、それを整理した上で質問の意図を相手に伝える力が必要になるのだ。AIは何でも勝手にやってくれると思われがちだが、実際は高度なコミュニケーション技術が求められるものだといえるだろう。
最近では、質が高いプロンプトを作成する技術のことを指して「プロンプトエンジニアリング」という言葉まで誕生した。そして、インターネット上を検索すれば、より良い回答を得るためのプロンプト例が大量に転がっている。もちろんそれらを収集し、暗記すれば、最適な出力を得られる可能性はあがるだろう。
しかしそれだけでは、本質的な解決方法にはならない。なぜならば、AIソフトは日々進化しており、「良いプロンプト」もさまざまな条件によって変化するからだ。当然、文章生成AIと画像生成AIでは、求められるプロンプトの内容も変わってくる。さらに、サービス毎に「良いプロンプト」は違うものになる。
AIの特性を理解し、自分が求める回答を得るためのプロンプトを作成できるように、言語化能力を磨くことこそが、AIを使いこなすために求められる能力といえるだろう。それさえ身につければ、AIサービスは単なる文章作成や画像作成にとどまらない効力を発揮してくれる。
ChatGPT活用方法
たとえばChatGPTは質問に回答するだけではなく、文章の要約、プログラミング、グラフ作成、データ分析といったことにも利用できる。いずれも、ビジネスにおいて多くの人が自身の手を動かしてやっていることだろう。このような活用方法を知っているだけでも、日常業務を大幅に効率化できるようになるはずだ。
実践!ChatGPT
実際にAIサービスがどのような場面で使えるのかを、プロンプトの実例と共に紹介する。「AIを触ってみた」状態から、「AIを使いこなしている」という次のステップを踏むための参考にしてほしい。
上図は、ChatGPTにおいてより正確で質問者の意図に沿った回答を得るためのプロンプトを、段階的に例示したもの。BingやBardといった異なるAIチャットサービスにおいても汎用的に利用できるテクニックとなっている。
AIチャットは、「与えられた情報をもとに回答する」ということしかできず、質問の背景や事前知識などを勝手に推測して忖度してくれることはない。そのため、正確な回答を得たい場合には、それらの情報を明記して伝える必要があると理解しておこう。
明示しておくと希望通りの答えが得やすい項目には、次のようなものがある。
- 回答者の立場(例:教師・プロのライター)
- 質問者の立場(小学生・専門知識なし)
- 質問の背景(会社のレポートを作成するため)
- 回答の条件(専門用語を使わない)
- 回答の様式(300文字以内・実例をあげる)
これらの情報を記入するために、「#条件」といった書式で、質問本文と条件を切り離して記入することができる。AIチャットを使う時には「この程度のことは知っているだろう」という思い込みを捨てて、自分が求める回答を具体的にイメージする力が求められるのだ。
また、AIチャットは時に不正確な情報を出力する場合がある。そのため、自分がまったく知らない分野の知識を尋ねるような使い方は、現時点では避けた方が良いだろう。自分がある程度知っているが、文書作成や要約の手間を省きたい、といったケースで使用する方が良い。
画像生成サービスは、プレゼン資料への差し込み、Webサイトの制作など、幅広い場面で利用できる。Web上のイラスト素材サイトを探しても良い画像がみつからないような時は、自分で作成してみても良いだろう。
サービスとしては「Stable Diffusion」や「DALL・E2」、「Midjourney」などがあるが、いずれも初心者が利用するにはややハードルが高い。一定の事前知識が求められたり、無料では画像を作成できなかったりするからだ。また、基本的にはプロンプトを英語で記述する必要がある、という難点もある。
実践!Bing Image Creator
下図で紹介する「Bing Image Creator」は、日本語入力対応かつ無料で、画像のクオリティも高いので、誰にでもオススメできるサービスとなっている。
出力したい画像の条件を文章で入力することもできるが、プロンプトの文章は簡潔なものにして、それ以降はカンマで区切って細かい条件を書くのがオススメ。さまざまな条件を一文で表現しようとすると、AIにとって難解な文章になってし まうことが多いからだ。
どうしても上手くいかない場合は、ほかの人が作成した画像のプロンプトを参考にしてみるのが良いだろう。たとえばBing Image Creatorでは、サイトページにほかの人が作成した画像とプロンプトが掲載されている。それをもとに、不要なキーワードを削除して自分が希望するキーワードを追記すれば、理想的な画像を出力できるはずだ。
音声認識や音声変換、音楽作成技術も誕生している
AI技術の活用方法として、「音声」に関する分野も徐々に発展している。会議やインタビュー、Web会議などの音声を文書に書き起こしてくれる「音声文字起こしサービス」を使えば、誰が話しているのかを聞きわけて、非常に高い精度で発言を文字起こししてくれる。また、書き起こした内容を要約する機能もあるため、議事録作成などに活用できるだろう。
ほかにも、人間が話した音声をリアルタイムで変換するサービスも誕生している。これを使えば男性が女性YouTuberのふりをしてリアルタイム配信をすることも可能なため、いよいよネット上の性別は信用できないものになりそうだ。
さらに作曲をしてくれるAIサービスも誕生している。将来的には「作詞・作曲・歌唱:AI」の楽曲がヒットチャートを席巻するかも?
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