ユーザーフレンドリーなプロダクト、暗号資産の公共性を活かした社会貢献プロジェクトはWeb3.0のマスアダプトに寄与する
Web3.0の可能性にワクワクした
——現在日本女子大学ではどのようなことを学んでいますか?また、現在の学科(理学部数物情報科学科)を専攻したいと思ったきっかけをお聞かせください。
和田朋子(以下・和田):現在、暗号理論の研究室に所属していて、現代社会のさまざまな場所で使われている暗号について学んでいます。具体的には、古典的な暗号から公開伴暗号の基礎理論まで学習し、その応用として暗号資産・ブロックチェーンについて学習しています。
数物情報科学科を志望したのは、「情報化社会」に興味を持ったことがきっかけです。社会はデジタル技術の導入と活用を積極的に推進していますが、そこには利便性というポジティブな面が存在する一方で、何らかのネガティブな面も伴っていると考えられます。
具体的にいえば、オンライン会議において、人と人との深いつながりや富んだ経験が希薄になっているようなところです。そこで、具体的に「情報化社会」を支える物の仕組みを勉強したいと思い、現在の学科を選びました。
——ブロックチェーンの技術を活用したプロダクトで注目しているものはありますか?
和田:注目しているプロダクトは「Umi Protocol」です。Web3.0に興味を持って初めてのイベントに参加した時に、Umi Protocolのプレゼンをみました。そこに登壇していたwasabiさんが、Umi Protocolには、『現在の経済ネットワークでは測れない価値に流動性を与え、ネットワーク参加者全員にとって最適なリソース分配を実現する』というビジョンがあると仰っていたんです。
現在の経済ネットワークでは限られた資産のみが流動性を享受していますが、Umiはこれを拡張して、特に標準化されていない生産物や人的資本なども含めた価値に対して流動性を提供します。今ある経済ネットワークで測ることのできなかった価値に流動性を与えることができるという点に、Web3.0の可能性を感じワクワクしました。
学生団体「WeCreate3」
▶︎WeCreate3:全国の学生が主体となり、Web3.0領域のポテンシャルや安全性について正確な情報を発信。
▶︎5月に行われた「学生Web3& Metavers超会議第3弾」は、東京・港区のアクセンチュア・イノベーション・ハブ東京で開催。Web3.0・メタバース領域を代表する起業家らのセッションのほか、平将明衆議院議員による講演も行われた。
——日頃、Web3.0やブロックチェーン分野に関わる機会をどのように得ていますか?
和田:日頃、Web3.0と社会との接点を模索するために、「WeCreate3」という学生団体で活動しています。この団体は、Web3.0に対する正しい認識を広めることを目的としており、学生が主体となって勉強会やイベントを開催しています。
WeCreate3での活動では、Web3.0やブロックチェーンの基本的な知識を共有し、学生同士でディスカッションを行うことを大事にしています。参加してくれる学生にとって、技術的な側面だけでなく、社会に与える影響についても深く理解し、考えを共有できる場所になるように務めています。
また、日本政府がWeb3.0を国の成長戦略の一部として位置付けているにもかかわらず、日本社会においては暗号資産などに関する誤解や偏見が根強いことが問題視されています。そのため我々は、人々にブロックチェーンのポテンシャルや安全性についての正確な情報を共有し、誤解を解消するために尽力していきます。
——Web3.0に対する学生の注目度や認知度はどのくらいあると認識していますか?また、マスアダプションをするためにはどのような活動やプロダクトが必要だと考えますか?
和田:正直、Web3.0に対する学生の認知度は高くないと思います(笑)。多くの学生はWeb3.0の技術や概念についてあまり知らないかもしれませんが、NFTというワードを知っている学生は多いと思います。そのため、NFTはWeb3.0のマスアダプションにおいて重要な役割を果たす1つの鍵になるのかなと考えています。
一方で個人的には、日本における暗号資産の受け入れと活用には慎重な議論と検討が必要であると考えています。仮に暗号資産があらたな経済の支えとなるのであれば、広く受け入れられる形での普及が重要であると思います。
多くの人が暗号資産の価値を理解し、積極的に使用するような、ユーザーフレンドリーなプロダクトと、暗号資産の公共性を活かした社会貢献プロジェクトがWeb3.0のマスアダプションを手助けすると信じています。
人それぞれの個性や能力を価値として認識し、それに見合った評価がなされる世界にしていきたい
——最後にこれから挑戦していきたいことをお聞かせください。
和田:これから挑戦していきたいのは、暗号資産を用いて人的資本を適切に評価し、その価値を社会に反映させることです。特に、福祉介護や医療などの職業は社会にとって必要不可欠ですが、従事者は労働量に対して十分に評価されていないと感じています。
Web3.0は分散型のプラットフォームであり、個人の自律性を重視しています。これを用いて、個人のスキルや貢献に基づく評価システムを構築することができます。
また、個人が組織内で働く場合、組織全体としての評価と個人としての評価の間にギャップが生じることがよくありますが、Web3.0の技術を活用して、これらの評価を連携させ、一貫性を持たせる仕組みも可能であると考えています。
最終的には、社会が物の生産やサービスだけでなく、人それぞれの個性や能力を価値として認識し、それに見合った評価がなされる世界になれば良いと考えています。究極的には、家庭内での家事労働など、これまで対価を得ることのできなかった活動にも評価が与えられ、対価を得られる社会になればと願っています。
Profile
◉和田朋子│Tomoko Wada
日本女子大学理学部数物情報科学科4年生。暗号理論を専攻する研究室に所属。暗号資産やブロックチェーンの技術的背景を学び、これらの専門的な事柄が、具体的にどのように社会へ貢献するかについて探求している。また、「WeCreate3」という学生団体の一員として活動。WeCreate3では、Web3の時代に即した情報を広め、その技術が社会にどのような影響をもたらすかを考察し、学生の立場からその接点を創出。この活動を通じて、あたらしいデジタル時代に必要な理解と対話を推進。
◉日本女子大学
日本女子大学は、日本初の組織的な女子高等教育機関として創立し、2021年に120周年を迎えた。私立女子大学唯一の理学部を有し、文理融合の教育環境をもつ女子総合大学。今年度は「国際文化学部」を開設し、今後も2024年建築デザイン学部、 2025年食科学部(仮称・構想中)と、新学部の開設を予定。「私が動く、世界がひらく。」のタグラインのもと、自ら学び、自ら行動し、新しい価値を創造できる人材を育成する。
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