ステーブルコインは安全な通貨としてDAOとの親和性が高い。
Web3.0上で完結するdAppsにも大きな影響をもたらす。
法改正により事業者の動きは活発化
——改正資金決済法の施行を受け、今後日本ではどのようにステーブルコインが利活用されていくかお考えをお聞かせください。あわせて、今後国内でどのような影響がみられると思いますか?
峯荒夢(以下、峯):ステーブルコインについてはこれまで法律上の定義がされていませんでした。日本における傾向として、法律で定義されるまでは危ないから使わないということが往々にしてあります。そのため、これまでもステーブルコインの需要はあったのですが、積極的に活用しようという動きがありませんでした。
しかし当法案が昨年6月に可決、今年6月に施行されたことで、「この方法でやれば良いんだ」というものがみえてきて、事業者らがようやく動き出せる状況になりました。
これまで、まずスマートコントラクトと紐付けてお金を動かすには、暗号資産取引所が金融庁より許可を取得した暗号資産でしかできませんでした。しかし、従来の暗号資産は大きな価格変動が起こり得るため、保持しているだけでリスクが有り、資金移動という点では非常に使いづらいのが現状です。
一方、ステーブルコインではそうした価格変動のリスクがないため非常に魅力的です。スマートコントラクト完結でお金を動かしていきたい領域では特に魅力的です。
そのなかでもWeb3.0上で完結するdAppsには大きな影響がみられるのではないかと考えています。たとえば、ゲームだったりシェアリングエコノミーであったりなど、Web3.0完結のアプリケーションを作る上でステーブルコインの需要は高まっていくでしょう。
DAOを本質的に普及
——ガイアックスでは先日ステーブルコイン市場への参入を発表し、DAO領域での活用を打ち出しましたが、具体的にどのような取り組みを行う予定ですか?
峯:この取り組みを進める上で、「DAOでお金の管理を行う」というのが非常に重要なポイントとなります。スマートコントラクトベース、言い換えるとプログラムベースでお金を管理する場合、安全かつ自分たちの範疇で管理を行いたいという状況があると思います。
たとえば、実際に「Nouns DAO」というプログラム完結で動いているDAOがあります。Nouns DAO はfounders(創業者)とNounを組み合わせた「Nounders」と呼ばれるメンバーにより開始されたNFTベースのコミュニティで、毎日NFTを1体ずつ販売しています。
ここではNFTの販売で集まったイーサリアム(ETH)を、NFTを購入したユーザーたちが「このイーサリアムを◯◯に使いたいです」と提案し、投票により賛同を得ることができたらそのお金を利用できるという点が特徴のDAOです。
一方、Nounsで用いられているイーサリアムに外的要因等で問題が生じると価格変動が生じるため、資金が減る場合があります。
Nouns DAOの場合、スマートコントラクト上で資金を管理し、使い方が提案され、投票によって使い道が決まります。実際にそのように運用が行われている点は良いですが、資金が減ってしまうのでイーサリアムのボラティリティはネックとなってしまいます。また、別の側面で、暗号資産を購入しないとDAOに参加できないという問題もユーザーの参入障壁を上げています。
DAOで資金管理を行う良い方法は何かというと、「参加障壁が低く、安全にスマートコントラクトベースで管理できるもの」だと考えています。
DAOは完全にルールに基づいたプログラムベースの分散型自律組織ですので、管理するだけでなく送金・分配をプログラム完結で行えるところが求められます。比較的ボラティリティが低く、安全かつ便利に利用できるというところで、ステーブルコインの需要が高まっていますし、今後も注目されていくと思います。
我々はDAO組成のサポート等を行う組織ですので、まずはステーブルコインが安全に使うことができるお金であるという認識を広めていきたいと考えています。そして、ステーブルコインをDAOの流通通貨として推進していく予定です。
——本取り組みを行う上で重要視している点はなんでしょうか?
峯:重要視すべきところは資金管理におけるリスクが低いことです。また、やはりプログラムベースですべて実現できるというところも大切ですね。
DAOではルールに従い決定を行い、資金の移動が行われます。その資金の移動を行う際、本来であればDAO上で独自の暗号資産が流通することがベストだと思います。ビットコインがその代表例だと思いますが、暗号資産の登録の問題も有り、実際にそれを今から行うにはハードルが非常に高いです。
その点、ステーブルコインであれば価値を高めていかないといけないというハードルもないですし、スマートコントラクト上で使えるお金として機能します。ですから、ステーブルコインというのはDAOを実現するための重要なピースなのだろうと考えています。
DAOやステーブルコインの本質的な普及に努めていく
——ガイアックスが「ステーブルコイン× DAO」の取り組みで実現したいビジョン、さらには自社の強みを活かして今後どのように普及させていくのかお考えをお聞かせください。
峯:私たちはDAOの組成等をサポートしていき、社会の課題や企業・自治体の抱える問題を解決するために尽力していきたいと思います。まだ世の中に組成されたDAOの数は多くないなか、我々は複数の企業や自治体、または社内でテストを行うなど、DAO組成の実績及び知見を重ねています。その点は他社と比べて大きなアドバンテージになっていると考えています。
今後は、ステーブルコインの発行体や仲介者となる方々と連携しながら取り組みを進めていきます。現状、ステーブルコイン関連のプレイヤーでは発行体側の動きが活発なのですが、我々は利用者側のポジションに立って具体的な事例を作りながら貢献していきたいと思います。
知見を広めながら、DAOやステーブルコインの本質的な普及に努めてまいります。
Profile
◉峯荒夢│Aram Mine
株式会社ガイアックスweb3事業本部責任者兼一般社団法人日本ブロックチェーン協会理事、芝浦工業大学SIT総合研究所研究所客員研究員。2015年よりブロックチェーンの研究開発を開始。情報サイトBlockchain Bizを運営し、ブロックチェーンに関わる3冊の書籍の出版に携わる。鳥取県智頭町・静岡県松崎町らとの「美しい村DAO」のシステム開発や、早稲田大学・芝浦工業大学などと連携し、スマートシティーへ向けたLiDARネットワークの開発も行う。ブロックチェーンの国際標準を策定するISO/TC307国内審議委員会委員も務める。
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