銀行決済と比べて送金の柔軟性が高い点は大きな魅力。
プログマが日本のステーブルコインビジネスをリードする。
——2023年改正資金決済法が施行されました。今後日本でステーブルコインが利活用されていくと思いますか?また利活用されることで解決につながる課題や領域についてのお考えをお聞かせください。
齊藤達哉(以下、齊藤):まずステーブルコインには、「預金型」「資金移動型」「信託型」の3類型が規定されていますが、パブリックコメント等の通り「預金型」は現時点では実現困難(後述)で、「資金移動型」は100万円の送金上限額がかかるため、現実的には「信託型」が使い勝手が良いと考えています。
その上で、ステーブルコインの特徴として送金先制約の自由度があげられます。少なくとも信託型ステーブルコインは本人確認がされているか否かを問わず、アドレス情報さえあれば移転が可能であり、法的にも整理済みです。
一方、銀行預金の場合、本人確認をして口座を開いている範囲内でしか送金ができません。この違いは大きいと思っています。この点を踏まえると、クロスボーダー決済等の利用可能範囲が広い領域は、ステーブルコイン利用に優位性があります。ステーブルコインであればアドレスを持っている人の居住地が国内・海外を問わず送金できますので、大きな価値を発揮します。
もう1つが、決済対象が何であるのかという観点です。決済対象がブロックチェーン上のアセットの場合には、アセットも資金もブロックチェーンのなかで同時に動くため、いわゆる同時決済が可能となります。ステーブルコインが最もその真価を発揮し、かつ競合する既存の資金決済手段が存在しないホワイトスペースなので、最も相性が良いといえます。
一方で決済対象がブロックチェーン上のアセットではない場合もあります。大きくわけるとプログラマビリティが求められるものとそうでないものがあります。
プログラマビリティが求められないものは自動販売機等の物理的な硬貨さえあれば良いというもの。そこにステーブルコインは必要ありません。
プログラマビリティが求められるものとして1番考えられるのは法人決済です。法人決済はまず請求書が発行され、それを受け取った側が会計処理をします。請求書受領から会計処理までは、すでに自動化が進んでいます。
ただ、それを受けて発注元から発注先に資金移動をさせるプロセスまでは自動化されていません。請求書から会計処理までの内容を別途出力し、別途「法人インターネットバンキングシステム(法人IB)」にログインの上、人手を介して送金オペレーションを実行する手間が都度発生しています。
銀行など金融機関を通じて決済を自動化するには、メインバンクとして利用している各銀行が更新系のAPIを開放する必要があります。
実は、一部の銀行を除き、大多数の銀行は参照系のAPIしか開放できていません。たとえば家計簿アプリから残高はみえますが、法人IB以外の外部システムから直接送金をかけることはできません。なぜなら、銀行内で預金や為替を取り扱う「勘定系システム」に対して不特定の外部システムから更新がかかることを許容することと同義であり、影響範囲があまりに大きく、対応に要する期間やコストを考えると、採算面から現実的ではないためです。
信託型ステーブルコインは、銀行預金(=勘定系システム)に直接手を入れることなく、プログラマビリティを担保した信託で包んで発行するので、外部からでも直接動かすことができます。
よって、請求書受領をインプットに、会計処理と合わせて決済まで一線完結で自動化することも可能となります。ですので、法人決済においてもステーブルコインの価値は発揮されると思いますね。