ビットコイン取引サービスがリリースから3ヵ月強で利用者数は50万人を突破。
うち、約8割が暗号資産取引未経験。
株式会社メルカリの子会社である株式会社メルコインが、フリマアプリ「メルカリ」内でビットコイン(BTC)を取引できるサービスを3月9日に開始した。
同サービスの利用者数はリリースから2ヵ月強で30万人、3ヵ月強で50万人を突破しており、50万人のうち約8割が暗号資産取引未経験となっている。「メルカリ」を通じて初めてWeb3.0に触れるユーザーが爆発的に増えているようだ。
「メルカリ」は国内最大規模のフリマアプリで、利用者同士が衣類や家電製品などを自由に売買できるマーケットプレイス。同サー ビスの累計利用者数は4,800万人、月間利用者数は2,226万人にのぼる(※2023年4月時点)。また、コンビニなどの実店舗及びネットショッピングで利用できる決済サービス「メルペイ」も提供している。
「ビットコインを買い、保有し、価格変動を眺め、売却する」体験をとにかくわかりやすく、簡単に。
そんなメルカリが、ついにWeb3.0サービスを開始した。同社のサービスは、メルカリアプリ内でビットコインを取引できるという非常にシンプルなものになっている。利用者ができることは、アプリ内でビットコインを「買う」こと、そして「売る」ことのみ。
ビットコインの購入は1円から可能で、購入も売却も通常は数秒で完了する。利用時には、メルカリの売上によって得た「売上金」や無償ポイント(友達招待やキャンペーンなどでもらえるメルカリポイント)を使って購入可能だ(銀行口座から日本円を入金してビットコインを購入することも可能)。
通常、暗号資産取引を始める時には本人確認手続きが必要になるが、「メルカリ」や「メルペイ」で本人確認手続きを完了していれば、その手間も省略できるようになっている。「ビットコインを買う」という体験を、とにかく簡単に始められるサービスといえるだろう。
そのための障壁になるような機能は、徹底的に削ぎ落とされている。利用者同士が暗号資産を売買する板取引はなく、ビットコイン以外の通貨も存在しない。また、現時点ではほかの取引所やウォレットへの入出庫機能も備えていない。このようなシンプルな設計にしている理由は、徹底的にWeb3.0初心者の目線に立っているからだろう。
現時点では、暗号資産やブロックチェーンといったWeb3.0の知識が十分に普及しているとは言い難いのが国内の実状だ。そういった多くのユーザーにとって、数多くの通貨を比較して投資対象を決めることや、暗号資産を自身のウォレットに入出庫してDeFiやGameFiを楽しむといった行為は、あまりにもハードルが高い。
Web3.0や暗号資産といった単語を耳にする機会は多くても、実際にそれを体験することは「難しい」 と感じるのが一般的な感覚だろう。
だからこそ、「メルカリ」を通じて多くの利用者が「ビットコインを買い、保有し、価格変動を眺め、売却する」というシンプルなWeb3.0体験を得ることの価値は計り知れない。
Web3.0業界ではGameFi、DeFi、NFT、メタバースなど、次々とあらたなプロダクトが誕生しているが、それらに触れるためには高度な「Web3.0リテラシー」が求められる上に、リスクも少なくないからだ。
「暗号資産にも、Web3.0にも興味はあるが、 その第一歩をどう踏み出せばいいのかわからない」。そういった潜在的な“Web3.0ユーザー”をあらたなテクノロジーの世界に導くサービスとして、「メルカリ」のビットコイン取引サービスは間違いなく最適なものになっている。
ビットコインの購入の仕方
ビットコイン売買は、メルカリアプリ内で提供されている。すでにメルカリアプリをインストールしている場合は、「マイページ」をタップすれば売買可能だ。ビットコイン購入にはメルカリの売上金や無償ポイントが使える。1円から購入できるので、ひとまず少額から始めたいという人も安心だろう。
ビットコインを売却した後は、「マイページ>ビットコイン>設定>メルペイ残高へ移す」という手順でメルペイ残高に移せば 「メルカリ」やメルペイ決済ですぐに利用できるようになる。
マイページには、保有しているビットコインの日本円換算額が表示されるため、ビットコイン価格をすぐにチェックできるようになっている。ビットコインを買い、毎日の価格変動をみるだけでも楽しいはずだ。
メルカリでのビットコインの購入手順
メルカリのWeb3.0領域に関する取り組みと展望
メルカリのビットコイン売買サービスは、 これまでの国内Web3.0業界・事業者に欠けていた大きなピースを補うものになると考えられる。
NFTやメタバースといった単語がメディアで取り上げられWeb3.0業界は大いに賑わっているようにみえるが、実状をみればGameFiやDeFiを使いこなす少数の“Web3.0愛好家”と、それを冷めた目線で眺める大多数の “Web3.0を一切利用しない層”にわかれているからだ。
国内ではかつての“仮想通貨ブーム”などを経てビットコインなどが大いに知名度を獲得しているが、実際に暗号資産取引をしているユーザーは5%程度であると推計されている。そして今のところ、再び“ブーム” が巻き起こり、国内でWeb3.0が普及するような未来はみえてこない。
一方で、国外をみればブロックチェーン技術を活用したプロダクトが次々と生み出されており、Web3.0企業からユニコーン企業も誕生している。ビットコインを法定通貨化する国まであらわれており、暗号資産やブロックチェーンは着実に社会への実装が進んでいるのだ。
国内でも政府によるWeb3.0への注力が始まっており、有望なWeb3.0プロジェクトも誕生しているが、この分野で日本が存在感を発揮するためにはこれまで以上にWeb3.0の裾野を広げる必要がある。
そんななかで、もはや社会インフラの1つともいえるメルカリのWeb3.0参入は、国内のWeb3.0ユーザーを増やす起爆剤になるはずだ。
もちろん「ビットコインを買って、売る」だけでは、Web3.0の入り口に立ったということに過ぎない。それでも、国内で同様の体験を幅広いユーザーに届けられるのはメルカリだけだろう。ビットコイン取引サービスの成功を端緒に、今後のサービス拡充・拡大にも期待したいところだ。
関連記事
メルカリのビットコイン取引サービス、利用者数100万人を突破
メルコインの若きCEOが見据える次のステップと、Web3.0の未来とは。│ 中村奎太 インタビュー