イーロン・マスク(Elon Musk)氏率いるテスラは、最近突如として7億6,500万ドル(約1,185億円)相当のビットコイン(BTC)を未確認のウォレットに移動させた。これにより売り圧力の高まりが懸念されるなど、ビットコイン価格にも影響を与えた。
しかし、ブロックチェーン分析会社アーカム・インテリジェンス(Arkham Intelligence)によると、テスラが多額のビットコインを移動させたのはウォレット管理の都合によるもので、依然としてすべてのビットコインを保有していることが明らかになった。
一連の送金で、テスラは保有している11,509BTCを7つのウォレットに分散させた。保有額の大きいウォレット順に、2,109.3BTC(約213億円相当)、1,900BTC(約192億円相当)、1,800BTC(約181億円相当)、1,700BTC(約174億円相当)、1,600BTC(約164億円相当)、1,300BTC(約133億円相当)、1,100BTC(約111億円相当)となっている。
企業によるビットコイン保有量で世界トップ4に入るテスラだが、このウォレットの移動について詳細な説明はない。
一部メディアでは、ビットコインを担保として融資を受けることを目的としてカストディアンに移動したのではないかとの推測もある。
ビットコイン売却の可能性は?
現在、テスラはビットコインをCoinbase Prime Custodyに保管しているとされている。2021年2月に15億ドル(約2,280億円)相当のビットコインを購入して以来、テスラはデジタル資産分野に積極的な投資を続けている。
マスク氏自身が暗号資産(仮想通貨)分野で影響力のある人物であるため、ビットコインの大量移動は、売却の推測を呼び、大きな売り圧力となった。ビットコインの価格は一時、2,000ドル(約30万円)以上も下がった。
具体的な発表はないものの、今のところテスラにビットコインを売却する様子はみられない。アーカムがコメントを発表して以来、ビットコインの価格は戻りつつある。
マスク氏はドージコイン(DOGE)を支持していることで知られる。同氏がドージコインについて発言することで価格は乱高下してきた。
2021年、テスラは自社の電動自動車をビットコインで購入可能にすると発表して。これにより、ビットコインの価格は高騰した。しかし、その後マスク氏がビットコインのマイニングに利用される電力を再生エネルギー化するまで案を凍結すると発表し、一部のビットコインを売却すると価格は大きく下がった。
2022年の夏にテスラは保有するビットコインの75%を売却し、約2億ドル(約304億円)の損失を計上している。その後、テスラは今週まで自社保有のビットコインには一切手を出すことはなかった。
23日に行われた第3四半期決算発表で、テスラは予想を上回る利益を報告した。
テスラは結局、11,509BTCを保有し続けていることが判明した。なおバランスシート上では、1億8,400万ドル(約280億円)相当の保有と記されている。
米国の会計規則では、ビットコインの価値が下がった場合には減損記録の義務があるが、値上がりした場合は、売却しない限りその増加分を利益として計上することができないためだ。
今回のウォレット移動は会計上の問題を回避することだけだったようだ。税金面でもウォレット移動はメリットがある。
もちろんセキュリティ面の強化も目的の1つだろう。分散化させることにより、ハッキングリスクを減らすことができるからだ。
参考:Arkham
画像:Shutterstock
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