暗号資産(仮想通貨)ポンジスキーム「フォーカウント(Forcount)」(後のウェルシス)を推進したトップの1人、ファン・タクリ(Juan Tacuri)容疑者が16日、懲役20年の判決を受けた。
ニューヨーク南部地区裁判所のダミアン・ウィリアムズ(Damian Williams)米連邦検事は、声明で「タクリ容疑者は最先端の暗号資産投資に関わっていると主張していたが、実際には最も古い手口の1つであるポンジスキームを実行していた。タクリ容疑者はフォーカウントの最も有名な推進者の1人で、多数の被害者から何百万ドルも巻き上げた」と述べ、「今日の判決は、長期的に詐欺は利益にならないということを厳しく思い出させるものになるだろう」と続けた。
フォーカウントは、暗号資産のマイニングを行う会社であるとされ、暗号資産関連の投資商品を購入した被害者である投資家に利益をもたらすと約束していた。タクリ容疑者などこのスキームの創設者及び推進者は、同社の暗号資産取引とマイニングから得られる利益によって被害者の投資額が保証され、6ヵ月以内に投資金が2倍になると謳っていた。
実際には、フォーカウントは暗号資産のマイニングや取引を行っておらず、タクリ容疑者らは被害者の資金を使ってほかの被害者に利益分として支払い、スキームをさらに推進、拡大していき、自分たちの資産を増やしていた。
タクリ容疑者は全米中で容疑に及び、ほかの参加者とともにパーティーや説明会を開催し、被害者を誘い、投資を促した。大規模なイベントでは、フォーカウントの投資商品や報酬プランを説明し、同プロジェクトへ投資することで「経済的自由を得られる」と主張していたようだ。
被害者は現金、小切手、暗号資産を使用してプロモーターから投資商品を購入することでフォーカウントスキームに投資した。被害者は投資後、オンラインポータルサイトにアクセスし、収益を確認することができた。しかし、サイトで利益が蓄積されていることを確認できたものの、ほとんどの被害者は利益を引き出すことができず、最終的にすべての資産を失っていた。
対照的に、タクリ容疑者などのプロモーターは数十万ドルを引き出して宣伝費に使用したり、高級品や不動産などの個人的な支出に利用していた。2018年4月には、オンラインポータルサイトの口座から資金を引き出そうとした被害者が苦情を申し立てたものの、引き出すことができなかったようだ。
あたらしい暗号資産も発行
苦情が増えると、フォーカウントは独自の暗号資産の販売を開始。タクリ容疑者らが「MindexCoin」と呼んだトークンを、企業が商品やサービスの支払いに受け入れることで、最終的にかなりの価値を付けると主張していた。実際には価値を生み出すことなく、被害者にさらなる経済的損失をもたらすこととなった。
なお、タクリ容疑者は懲役刑に加え、1年間の保護観察処分を受け、約360万ドル(約5億4,800万円)の賠償金の支払いも命じられた。フロリダ州の住宅と所有財産もすべて没収されている。
参考:ニューヨーク州南部地区検事局
画像:Shutterstock
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