大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)のCZ(Changpeng Zhao)氏は22日、同社のCEOを辞任したと発表した。
今年6月、バイナンス及びCZ氏はSEC(米証券取引委員会)とCFTC(米商品先物取引委員会)から証券法違反などの容疑で提訴されており、これを受けて米司法省が同氏らを調査していた。
CZ氏はこれについて「私は間違いを犯した」とし、責任をとる形でCEOを辞任すると語った。あわせて、CEOを辞任することがバイナンスやコミュニティ、そして自身にとっても最善であるとしている。
なお、あたらしいCEOにはバイナンスで地域市場部門のグローバル責任者であるリチャード・テン(Richard Teng)氏が就任すると発表された。
テン氏は30年以上にわたる金融業界でのキャリアを有し、バイナンスに入社する前にはアブダビ・グローバル・マーケット (ADGM) の金融サービス規制当局におけるCEOを務めてきた。規制当局らとのコミュニケーションを重視した起用とみられる。
CZ氏は今後について、休暇をとった後にブロックチェーンやWeb3.0、AI領域等のスタートアップへの投資を行うつもりであると明かした。特にDeFi領域に注力する姿勢を示している。
さらに、今後自身がバイナンスやスタートアップのCEOを務めることについては否定的で、表舞台から退くことを示唆した。
米政府は和解を発表
メリック・ガーランド(Merrick Garland)司法長官は21日、バイナンス及びCZ氏と和解したことを明らかにした。
バイナンスと米司法省との間で司法取引が行われ、和解に向かっていることは複数の海外メディア等が報じていた。
なお、和解金としてバイナンスは司法及び金融当局に対して約43億ドル(約6,393億円)を支払うことで合意した。司法省によると、これは米国における企業に科した罰金としては過去最大の規模であるという。
また、CZ氏自身も5,000万ドル(約74億円)の罰金を支払うことになる見込みだ。さらに、司法取引によってCZ氏は今後18ヵ月服役する可能性もある
バイナンス及びCZ氏が認めた罪としては、マネーロンダリング対策の実施や銀行秘密法、そしてイランなどの米国が定めた制裁対象国に対する米国民との取引を可能にしていたことなどがある。
米国から完全撤退へ
和解内容にはバイナンスが米国から完全撤退することも含まれている。
一方、ジャネット・イエレン(Janet Yellen)財務長官によれば、米国法人であるバイナンスUS(Binance US)は本体であるグローバルのバイナンスが撤退する影響をまったく受けないと明かした。
バイナンスUSはバイナンスの関連企業であるBAM Trading Servicesが運営を行なっており、ライセンスを取得していることなどを理由としてあげている。
今後、バイナンスには制裁遵守プログラムの監視人が付き、今後5年間にわたって監督されることとなる。また、CZ氏についてもバイナンスの運営や管理に今後3年間関与することを禁じられた。
参考:CZ氏X、バイナンス発表、裁判資料
画像:Shutterstock
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