一般社団法人新経済連盟は9月13日、2025年度税制改正提言を公表した。
税率を引き下げ、日本経済活性化を促し、結果税収を増やして国内投資へ結びつけることが目的だ。
新経済連盟では、「税と成長の好循環」を実現させるため、3つの柱を掲げた。
- 「国内投資の促進」=国内外から日本への投資を呼び込んで経済を活性化するほか、AIや暗号資産(仮想通貨)など、あらたな産業の構築を促すために税制面から支援する。
- 「人への投資」=賃上げ促進税制を強化しつつ労働市場の流動性を高め、国内外の高度な人材を確保する。
- 「スタートアップ支援・生産性向上」=研究開発・スタートアップの促進、DX化等を通じ、イノベーションの促進と経済全体の生産性の底上げを図る。
具体策として、法人税、所得税、相続税の税率を引き下げ、地方の財源を強化する見直し、AIの開発強化・利用促進に向けた税制の創設、海外から人・知・金を呼び込む税制見直し、越境経済への適応、研究開発税制の見直しとイノベーションの実装、暗号資産税制、スタートアップ投資の促進や報酬精度の見直しなどをあげた。
提言を公表した背景には、日本が個人、法人ともに所得に対する税率が高いことがある。個人所得への課税率は、シンガポールが22%、米国が37%、インドが30%に対して日本は55%と非常に高い。
世界GDPの推移では33年間で米国は4倍超の成長だが、日本は横ばいだ。米国と日本の税収比較においても、税率が米国の方が低いが、税収は4.4兆ドルと日本の5,128億ドルと比べて圧倒的に高い。
AIの開発強化、利用促進に向けた税制の創設においては、開発強化に向けた優遇制度の適用を提言した。戦略分野ラボ税制を創設し、科学研究データ創出基盤の強化等を目的としてAI関連の研究所等を設立した場合、試験研究費の税額控除率を引き上げること、高品質な日本語の大規模言語モデルの構築を後押しすべく、データ整備・開発を目的としてデータ保有者や開発企業等が連携する取り組みにおいて、国がその計画を認定している場合等に、費用の税額控除等の優遇措置を検討すべきであるとした。
暗号資産税制については、世界でWeb3.0市場が急速に拡大するなか、現行規制や税制が足枷となっており、有望なWeb3.0企業が国外に流出していることを指摘した。Web3.0企業の流出が続けば、日本がWeb3.0市場から取り残される恐れがあるとした。また、スタートアップ支援を含むWeb3.0ビジネス振興の観点からもトークンエコノミー市場形成、発展を促進するための対応は急務であるとした。
暗号資産を分離課税の対象に
暗号資産の取引から生じる利益について申告分離課税(一律20%)の対象とするとともに、損失について暗号資産に係る所得金額から繰越控除すべきだとした。
また暗号資産デリバティブ取引についても申告分離課税を認めるべきと主張している。
暗号資産取引で生じる損益への課税は、納税計算の煩雑さを回避する観点から保有する暗号資産を法定通貨に交換する際に一括で実施すべきであり、また相続した暗号資産の課税のあり方も見直すべきだと提言した。
そのほかにも、暗号資産ETFの取り扱いを可能にすること、一律2倍とされている暗号資産のレバレッジ倍率についてリスクに柔軟に対応できるよう、暗号資産の種類ごとの設定等が可能な精度にすべきとしている。
新経済連盟は2012年、楽天の三木谷浩史社長を中心に設立された経済団体。スタートアップから大企業にいたるまで、IT企業に限らずさまざまな業種の企業が加盟している。
参考:発表
画像:Shutterstock
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