提言書では、暗号資産の取引口座が今年10月時点で1,100万口座を超え、利用者預託金も2.9兆円に達した状況を踏まえ、「2005 年にFX取引が旧金融先物取引法(2007年に金融商品取引法へ統合)の対象とされた当時の状況(2007年当時約 80 万口座)と比べても、多くの国民が暗号資産を投資対象として取引していることがうかがえる」と表現している。
また、「こうした流れをさらに推進し、暗号資産を国民経済に資する資産とするため」とし、下記3点の施策を推進することが必要だと示した。
- 暗号資産取引による損益を申告分離課税の対象へ
- 暗号資産に関する規制の枠組み等について
- 国民経済に資する資産となるためのサイバーセキュリティへの取り組み
まず税制については、現状、暗号資産取引により発生した利益は雑所得として扱われ、所得税と住民税をあわせると最高で55%が課税される。諸外国と比べても税率が厳しいことを踏まえ、20%の申告分離課税の対象とすることや、3年間の損失繰越控除を認めること、そして暗号資産デリバティブ取引についても申告分離課税の対象とすることについて検討すべきだと記載した。
また規制の枠組みについては、暗号資産について「本質的には、ブロックチェーンを機能させるための必須の要素」と表現し、金融取引のみならず、DAOのガバナンス、オンラインゲームでの決済手段などでの利用が拡大していると指摘。通信キャリアやゲーム会社、アート・アニメ等の非金融事業者がWeb3.0分野での事業を拡大させていると説明する。
さらに、暗号資産が投資対象として金融商品と位置付けられていないことについて触れ、「利用者保護に留意しつつ、暗号資産の一部を金融商品として法的に位置付け、金融商品取引法の規制対象とすることも考えられる」と見解を示した。
多様な意見を尊重しつつ、最適な規制法の枠組みはどうあるべきかについて検討を進めるべきだとし、暗号資産をETFの対象とすることについても検討すべきだと強調している。
最後に、暗号資産を国民経済に資する資産とするためにサイバーセキュリティ強化について触れている。利用者資産の保護の観点からも暗号資産取引所には強固なサイバーセキュリティの確保が求められているが、暗号資産は国境を越えて流通する特性を有しており、事業者単独でのセキュリティ確保及び強化には限界があると提言書では記載。そのため、事業者間及び国際的な連携を図る枠組みが必要だと強調し、各事業者におけるセキュリティレベルの一層の向上を図り、こうした取り組みについて政府が協力に後押ししていくべきだと提言している。
参考:塩崎氏X、緊急提言資料
画像:Shutterstock
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