MAS(シンガポール金融管理局)は23日、暗号資産(仮想通貨)領域に対する個人投資家への規制を大幅に強化することを発表した。暗号資産やデジタル決済トークンサービスプロバイダーに対するあらたな投資家保護措置だ。暗号資産取引所、ステーブルコイン関連事業者、従来の金融機関も規制対象となる。
新規制は個人顧客間での暗号資産投機を阻止することが目的であるという。これらの新措置は消費者に対する潜在的なリスクに対処し、暗号資産取引をする個人の安全確保を目的としているという。
この規制は2024年半ばから段階的に施行される予定だ。企業活動、消費者のアクセス、テクノロジー、サイバーリスクの管理に焦点を当てている。
あたらしい規制では、プロバイダーは利益相反を特定し、軽減させ、開示する義務を負う。また、デジタル決済トークンのリストを管理するポリシーを公開し、顧客からの苦情処理や、裁判になった際には解決するための手順を定める必要がある。個人投資家のプラットフォームへのアクセス方法についても詳細に概説する必要があるという。
さらに、顧客のリスク認識を説明することに加え、暗号資産取引に関してはインセンティブの提供を中止することや、暗号資産による資金調達、レバレッジ取引も禁止する意向だ。
加えて、デジタル決済トークンプロバイダーは、クレジットカードによる暗号資産の購入も禁止し、顧客の純資産を決定する際に暗号資産の価値を釣り上げることも制限することが義務付けられる。
テクノロジーとサイバーリスク管理の観点から、MASはデジタル決済トークンサービスプロバイダーに対し、金融機関に課せられている要件に沿って、重要なシステムの高い可用性と回復可能性を維持することを義務付けている。
MASの副マネージングディレクターであるホー・ハーン・シン(Ho Hern Shin)氏は声明で、「デジタル決済トークンサービスプロバイダーは自社のプラットフォームを見直し、自社のサービスを利用する消費者の利益を守らなければならない。消費者に対して、デジタル決済トークンサービスを行う際には警戒を怠らず、細心の注意を払い、海外に拠点を置くものを含む、規制されていない事業体と取引しないことを求める」と述べた。
また、MASのデジタル決済トークンサービスプロバイダーが暗号資産取引に関連する潜在的リスクを軽減する措置を講じることで、消費者の利益が優先される必要性があると主張した。これらの措置は複数の側面を網羅しており、サービスプロバイダーが消費者を保護する方法で運営されることを保証することにもつながるという。
MASはデジタル決済トークンサービスプロバイダーに対して法定に裏付けられた要件を導入し、顧客資産を分別管理することを義務付けた。顧客へのリスク開示と共に、毎日の調整と適切な管理を必要とするとしている。
CBDCに関する動きも活発
MASは7月、資産を評価するための「プロジェクト・ガーディアン」を発表。デジタル資産に関連するリスクを軽減するためのパイロット版を実施するため複数の金融機関が参加する業界団体を設立した。
先日、MASはシンガポールドルでホールセール型CBDC(中央銀行デジタル通貨)を発行するパイロットプログラムを開始した。このパイロット版では、商業銀行全体で即時決済におけるCBDC使用の実現可能性と効率性を調査することから、これまでのシュミレーションから実装への移行を意味する。
パイロット版では、参加銀行によるトークン化した負債の発行が行われ、個人顧客がシームレスに取引を行えるようになった。
参考:発表
画像:Shutterstock
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