北朝鮮のハッカーが3月、暗号資産(仮想通貨)ミキシングサービス・「トルネード・キャッシュ(Tornado Cash)」を通じて1億4,700万ドル(約230億円)にのぼる暗号資産をマネーロンダリングしたことが判明した。ロイター通信が国連制裁監視団の機密文書を入手したとして報じた。
ロイター通信によると、監視団らは5月10日に提出した機密文書で国連安全保障理事会制裁委員会に対し、2017年から2024年の間に暗号資産企業に対する北朝鮮によるサイバー攻撃の疑いがある97件、総額約36億ドル(約5,600億円)を調査したと述べた。
監視者らは暗号資産分析会社ペックシールド(PeckShield)とブロックチェーン調査会社エリプティック(Elliptic)からの情報を引用し、このなかには今年3月に洗浄される前に、暗号資産取引所HTXから1億4,700万ドルが盗まれた昨年末の攻撃も含まれていたと委員会に報告した。
監視団は2024年だけで「11件にのぼる暗号資産のハッキング、総額5,470万ドル(約85億円)」にのぼる被害を監視していたと報告。その多くは「小規模な暗号資産関連企業で雇用された北朝鮮のIT職員によって行われた可能性がある」と付け加えた。
国連加盟国や民間企業によれば、海外で活動する北朝鮮のIT人材は「国に相当な収益」をもたらしていると監視団らは述べている。
トルネード・キャッシュを巡る制裁
米国はトルネード・キャッシュが北朝鮮のハッカーたちによるマネーロンダリングに関与しているとの見方を強め、2022年に同社へ制裁措置をとった。
共同創設者のうち2人は昨年8月、北朝鮮に関連するサイバー犯罪組織を含む10億ドル(約1,550億円)以上のマネーロンダリングを幇助した罪で逮捕され起訴された。
また、2022年8月にオランダで逮捕された共同創設者のアレクセイ・ペルツェフ(Alexey Pertsev)氏は今月14日の裁判で、マネーロンダリングの罪で64ヵ月の懲役刑とする有罪判決を受けた。共同創設者ローマン・ストーム(Roman Storm)氏の米国での裁判は9月23日に開始される予定だ。
トルネード・キャッシュなどの暗号資産のミキシングサービスは、ユーザーによるさまざまな暗号資産取引をまとめることで追跡を難しくさせ、送金元の秘匿性を高めるものだ。これまでに北朝鮮のハッカーを始めとしたさまざまな犯罪集団などがこうしたミキシングサービスを利用してマネーロンダリングを行なっていたとされており、米国を中心に取り締まりが強化されている。
参考:ロイター
画像:Shutterstock
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