3メガバンクを始めとする国内大手企業10社が、日本発の大規模言語モデル・サカナAI(Sakana AI)に出資することが決まった。
大手生保や証券会社、NEC、伊藤忠商事なども参加し、合計100億円の資金を提供する。シリーズAで合計300億円を調達したことになる。
サカナAIはGoogleでAI開発研究者らが日本で設立した。先日、米NVIDIAが出資をしたばかり。また、シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタル(VC)New Enterprise Associates(NEA)、Khosla Ventures、Lux Capital、Translink Capital、500Globalらが出資している。
日本の企業連合も投資家として参加し、AIを使ったサービスなどで協業を進める予定だ。
金融機関で参加するのは、三菱UFJファイナンシャルグループ(FG)、三井住友銀行、みずほFG、企業ではNEC、KDDI、富士通、生保では第一生命、証券ではSBIグループ、野村ホールディングス、商事会社では伊藤忠グループなど、日本各業界のリーディングカンパニーが投資家として加わった。
日本のVCでは、グローバル・ブレインを筆頭にJAFCO、みやこキャピタルが引き続き出資を行った。
AIの開発において世界にあらたなインスピレーションを与えたいと考えるサカナAIにとって、シリコンバレーの有力VCやNVIDIAのような世界的企業から出資を受けることは極めて重要だが、同時に日本企業からの投資を受け、パートナーシップを構築することは特別な意味がある。
サカナAIは日本で創業した企業であり、日本を拠点としてグローバルへの展開を見据える。
日本の文化や慣習を重視し、日本社会の課題解決に貢献することが第一の使命だと目標として掲げている。
AIにさらにイノベーションをもたらす
三菱UFJFGのCEOである亀澤宏規氏は声明で「AIは私たちの生活や利用するサービスに入り込み、多くの企業のビジネスモデルに大きな変化をもたらすゲームチェンジャーになると考えている」と言及。
また、「サカナAIは多用な能力を持つ幅広いモデルを融合してあらたな基盤モデルを構築する『進化的モデルマージ』や科学研究のプロセス全体を完全自動化する初の試みである『AIサイエンティスト』を開発するなどこれまでにない発想で日本から世界に向けてあらたな価値を生み出していくスタートアップ企業であると確信している。サカナAIが持つ高い技術力と革新的なモデル開発手法の活用により、MUFGのAI戦略がより一層高度化することを期待している」と述べた。
AIサイエンティストは自律的に科学研究を試みる技術で、革命的なものだ。課された時間的成約に直面すると、実行時間の短縮を試みる代わりにコードを編集して制限時間を増やす動きをみせる。
ただしこの新技術は危険性もふくまれており、監視されていない状況下においては、意図的ではないとしても既存のインフラを不都合と判断し破壊したり、マルウェアを作り出して攻撃する可能性もある。
このリスクを減らすため、サカナAIは安全性に関する懸念の対処として、AIサイエンティストの動作環境をサンドボックス化することで、AIエージェントによる破壊工作を防止できると提唱している。しかしAIサイエンティストを悪用すれば、国家間のIT攻撃において確実に有利になるとされ、軍用化の声も高まっていることも事実だ。
参考:発表
画像:Shutterstock
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