破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの元CEO、サム・バンクマン=フリード(Sam Bankman-Fried)氏は、昨年秋に有罪判決を受け、懲役25年の実刑判決が下った。
顧客から80億ドル以上(約1兆1,200億円)を詐取した大規模な詐欺を実行した罪で有罪判決を下した裁判官を非難し、14日に控訴した。
連邦陪審は、昨年秋にニューヨークで行われた1ヵ月に及ぶ裁判の後、バンクマン=フリード氏を詐欺、共謀、マネーロンダリングなどの罪で有罪の判決を下した。
3月、マンハッタンの連邦地方裁判所のルイス・A・カプラン(Lewis S Kaplan)判事は、バンクマン=フリード氏に懲役25年の実刑を言い渡した。
102ページに及ぶ控訴状のなかで、バンクマン=フリード氏の弁護士は、FTX創設者の証拠提出能力を制限し、同氏の弁護を妨げたカプラン判事の判決を指摘し、控訴した。
弁護士のアレクサンドラ・AE・シャピロ(Alexandra A.E.Shapiro)氏は「サム・バンクマン=フリード氏は無罪と推定されたことは1度もない。彼の裁判を担当した裁判官は彼を有罪と推定していた」と指摘した。
マンハッタンのニューヨーク南部地区連邦検事ダミアン・ウィリアムズ(Damian Williams)氏の広報担当者は、同事務所は今回の控訴についてコメントする予定はないと述べた。
連邦裁判所の有罪判決に対する控訴は、実際には見込みが低い。バンクマン=フリード氏は、2022年11月にFTXが破綻した直後に検察が彼を詐欺罪で起訴した時から無罪を主張してきた。
彼は裁判の直前から勾留されているブルックリンのメトロポリタン拘置所で刑に服している。
2年前、バンクマン=フリード氏は暗号資産業界の億万長者のシンボル的存在であった。しかし、FTXへの預金取り付け騒ぎで同社の資金不足が露呈し、その後FTXは破綻。刑事捜査に至った。
FTXでバンクマン=フリード氏の直近で幹部3人が詐欺罪を認めた。裁判では同氏に不利な証言を行っている。
その1人で、傘下企業アラメダ・リサーチのCEOであったキャロライン・エリソン(Caroline Ellison)氏は9月24日に判決が言い渡される予定だ。
顧客は資金を実際に失っていない
シャピロ弁護士は控訴のなかで、FTXの顧客は破産手続きで資金を回収する準備ができているため、実際には損失は出ていないとバンクマン=フリード氏が法廷で主張することを禁じたカプラン判事の判決を批判した。
「政府はFTXの顧客、貸し手、投資家が永久に資金を失ったとする虚偽の説明をした」と訴状には記されている。「つまり陪審員は全体像の半分しかみることが許されなかった」と主張した。
訴状ではまた、カプラン判事が、裁判で検察側が攻撃したビジネス上の決定のいくつかとバンクマン=フリード氏が法律上の助言に基づいて行ったという証言を不当に妨害したとも記されている。
シャピロ氏は裁判中、カプラン判事が下した判決に異議を唱えた。その判決では、バンクマン=フリード氏が証言台に立つ前に、陪審員の立ち会いのない場所で「証言前証言録取」を受けるようバンクマン=フリード氏に義務付けたものだ。
判事はこの審問はバンクマン=フリード氏が弁護士との話し合いについて陪審員にどこまで話せるかを決定するために必要だったと述べた。
シャピロ氏はバンクマン=フリード氏の証言のプレビューは「前例のない手続き」であり、「プレビュー審理の本来の目的を超えた反対尋問を検察官が行うことを許可した」と主張した。
あらたな裁判は別の裁判官のもとで行われるべきであると訴状に記されている。しかし過去の例をみると、控訴は却下される可能性が高いのではないかといわれている。
参考:報道
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