SEC(米証券取引委員会)は10日、同国史上初となるビットコイン現物ETFを承認したが、その後ゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は改めて声明を発表し、「ビットコインは不安定な資産である」と主張した。
また、ビットコイン現物ETFの承認を巡りゲンスラー委員長を含む投票権を持つ5人のコミッショナーのうち、3人が賛成票を投じ、2人が反対票を投じたことがわかった。この投票でゲンスラー委員長は賛成票を投じたようだ。
ゲンスラー委員長は改めて自身の考えを声明として発表した。そのなかで、同氏はSECが常に法律に従順であったことを強調した。
前任のジェイ・クレイトン(Jay Clayton)委員長のもとで2018年から2023年3月までSECはビットコイン現物ETFについて20件以上の上場承認を拒否してきた。しかし、グレースケール(Grayscale)との間で係争していた裁判で転換点を迎えたとゲンスラー委員長は言及している。
グレースケールは「グレースケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)」のETF転換を求めたが、SECはこれを認めなかった。しかし、裁判所はSECがグレースケールに対して適切な理由を説明することなく、恣意的に拒否したとして再審査を行うよう判決を下した。
ゲンスラー委員長はこの判決を受け「ビットコイン現物ETFの上場と取引を承認することが最も持続可能な道である」と感じたという。
また、SECの立場について「常に中立」と強調した上で、資家と公共の利益を保護するように設計されているか、また証券取引法とそれに基づく規制と一致しているかどうかに基づき評価した点に変わりはないと述べた。
ほかの暗号資産現物ETFの承認につながるわけではないと強調
一方、今回の承認で重要なこととして、暗号資産現物ETFが現状「ビットコインETF」に限定されていることだと強調している。そのため、ほかの暗号資産現物ETFを承認することにつながるわけではないと釘を刺した格好だ。さらに、暗号資産のほとんどが投資契約に該当するとし、「これらは連邦証券法の対象になる」と警告した。
また、今回11件の申請を同時に承認した背景について、発行者にとって公平な競争条件を整えるためだとし、投資家と市場に利益をもたらす目的があったと説明した。
このほか、ビットコイン現物ETFを提供する企業に対して「商品について完全かつ公正・真実を示す開示を行う必要がある」「各取引所の不正や市場操作を厳しく監督する」などと述べ、規制遵守を徹底するよう呼びかけた。
ゲンスラー委員長はSECが証券以外にゴールド等の貴金属の現物ETFを監督してきた経験について触れ、「この経験はビットコイン現物ETFにも活かされるだろう」と述べている。
ビットコインを認めたわけではない
ゲンスラー委員長は最後に「ビットコインは投機的かつ不安定な資産であり、ランサムウェア、マネーロンダリング、テロ資金供与などの違法行為にも使用されていることに注意すべきである」と改めて自身の見解を示した。
さらに、「我々はビットコイン現物ETFを承認したが、ビットコインそのものを承認、推奨したわけではない。投資家はビットコインや暗号資産に紐付いた商品に関するさまざまなリスクを引き続き留意すべきだ」と続けた。
再三にわたって注意を促す姿勢からも、ゲンスラー委員長自身はビットコイン現物ETFの承認に対して否定的なスタンスは崩していないことがうかがえる。その上で、今回のビットコイン現物ETFの承認は裁判所の判決や政治的背景等を鑑みた結果であることを声明を通じて示唆した格好だ。
参考:発表
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