台湾の中央銀行にあたる中華民国中央銀行の朱美烈副総裁が、ホールセール型CBDC(中央銀行デジタル通貨)の技術的研究を終了したと明らかにした。現在はCBDCの導入の可能性を積極的に検討しているという。
7日の基調講演で朱氏は、銀行が現在、CBDCプラットフォームの設計改善に関して、政府機関、産業界、学会、国民からのフィードバックを集めるため調査を実施していることを明らかにしていた。
朱氏は、顧客の日常生活に対しシームレスに統合されたサービスを中心としたコンセプトである「バンキング4.0」に関する広範なプレゼンテーションのなかで、AI、高度なモバイル技術、デジタルイノベーションを銀行業務に取り込んでいくことを強調した。また、講演の半分ほどがCBDCについて掘り下げたものであった。
朱氏は国際決済銀行の調査を引用し、CBDCと現実世界の資産のトークン化について強調。トークン化の基本的な運営基盤として清算機能を備えたCBDCの役割について述べた。特にパーティション化されたデータ環境で、単一の台帳を利用してシステム間の相互運用性を強化する統合台帳テクノロジーの可能性について言及した。
加速するCBDC開発
国際決済銀行からの推進を受け、世界各国の中央銀行が銀行間決済や個人決済におけるCBDCのメリットを検討している。台湾は2020年にCBDCに関する研究を始めた。すでにリテール型CBDCの開発は進展し、消費者と商業銀行5行が参加したパイロット版プロジェクトが進められている。
朱氏は、台湾のCBDC調査における2つの重大な課題を提示した。それは銀行による仲介手数料の取得と、既存の決済システムとの相互運用性を実現することに関する懸念であるという。
CBDCについて、朱氏は「トークン化の運用基盤として機能することができる」と述べている。あわせて、従来の金融機関が現実世界の資産をデジタル化する検証を進めていることにも言及した。しかし、これらのイノベーションは「金融の安定、消費者保護、マネーロンダリング対策、市場の健全性に対して重大なリスクをもたらす可能性もある」と朱氏は警告した。
さらに「金融監督機関はトークン化の発展傾向に応じて規制措置を検討すべきである」と続けている。同氏はさらなるCBDC開発への慎重なアプローチを強調し、最終決定のスケジュールはまだ決定されていないと述べた。
これに関連して、台湾の富邦銀行は米リップル及び香港金融管理局と協力し、香港のCBDCであるe-HKD を使用したリバースモゲージのパイロットプロジェクトを実施した。さらに、同行は中国のデジタル人民元をプラットフォームに統合し、地域のCBDCイニシアチブに対する積極的な姿勢を示した。
参考:基調講演
画像:Shutterstock
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