暗号資産ミキサー、トルネード・キャッシュの共同創業者ロマン・ストーム(Roman Storm)氏は米国司法省(DOJ)の訴訟で公判に進むことになった。
26日に開催された審問で、ニューヨーク南部地区(SDNY)のキャサリン・ポルク・フェイラ(Katherine Polk Failla)地方判事は、ストーム被告に対する告訴の却下を求める上訴を棄却。
フェイラ判事は、ストーム被告の言論の自由や違法行為の期間が短いこと、トルネード・キャッシュ社の事業に関する主張は、司法省の告訴に対抗するには不十分であり、政府機関は開発業者に対して信憑性のある申立を行ったと判断した。フェイラ判事は
「裁判のこの段階では、ストーム氏が単にコードを書いたという理由で起訴されたという主張を、裁判所は受け入れることはできない。陪審員が最終的にこの主張を受け入れれば、無罪判決が下されるだろう。しかし、法律上、私がそう判断する根拠はなにもない」と述べた。
ロシアの国民的開発者であるストーム氏は、コーディングで起訴されることは言論による起訴に似ていると主張しており、米国憲法修正第1条はコーディングを保護すべきであると主張していた。
これに対して、コードの機能的能力は憲法修正第1条の意味における言論ではないとフェイラ判事は述べている。加えて、裁判所はマネーロンダリングや未登録の送金サービスの運営、制裁回避を防ぎ、安全な金融システムを推進することに政府が大きな関心を持っていることを示している。
「政府の利益は表現の自由の抑圧とは無関係であり、行為を撲滅するためにこれらの法律を適用しても、必要以上に言論に負担をかけることにはならない」と続け、フェイラ判事は、トルネード・キャッシュはほかの送金ビジネスと「意味のある違い」はなく、「利他的な事業」でもないと付け加えた。
ストーム氏は2023年8月、同じくトルネード・キャッシュの共同創業者ローマン・セモノフ(Roman Semonov)氏とともに、暗号資産ミキサーに関する業務でマネーロンダリング共謀、無認可の送金事業運営共謀、国家非常事態法違反の共謀などの罪で起訴されている。
起訴された2人はすべての容疑に対して無罪を主張し、弁護団は3月に、開発者らは単にトルネード・キャッシュのコードを書いただけで、その後に起きたいかなる違法行為について責任を負う必要はないと主張していた。
フェイラ判事は、
「法律は明確だが、マネーロンダリングで有罪とするには、被告人が特定の違法行為について有罪、関与、または詳細を知っている必要はない。政府はストーム氏が根底にある犯罪行為の具体的な性質を知っていた。ましてや参加者であったと主張する必要はなかった」と述べている。
トルネード・キャッシュ、ブラックリストに掲載
トルネード・キャッシュが米政府によってブラックリストに載せられた後、開発者アレクセイ・ペルツェフ(Alexey Pertsev)氏は投獄された。
米政府はこのプラットフォームが北朝鮮のハッカー集団ラザルスによって利用され、マネーロンダリングに加担したと主張。
トルネード・キャッシュの創業者はソフトウェアを作成した罪で起訴されたのではなく、法律に違反した中央集権型の営利企業を運営した罪で起訴されたものである。
5月、ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏はトルネード・キャッシュとストーム氏の訴訟費用を支援するために30ETHを寄付している。これは出身が同じロシアであり、優秀なプログラマーを支持することを意味しているだろう。
参考:報道
画像:Shutterstock
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