「JAPAN IS BACK」を掲げたスタートアップの祭典 IVS2026イベントレポート

2026/07/24 16:00 (2026/07/24 16:17 更新)
Iolite 編集部
文:Shogo Kurobe
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「JAPAN IS BACK」を掲げたスタートアップの祭典 IVS2026イベントレポート

「JAPAN IS BACK」を掲げ開催されたスタートアップの祭典

7月1日から3日までの3日間にわたり、日本最大級のスタートアップカンファレンス「IVS2026」が今年も京都で開催された。

2023年にオープン化へと舵を切って以降、スタートアップの裾野を広げてきた同イベント。今年は「JAPAN IS BACK」をテーマに掲げた。

日本ならではのスタートアップの進化を世界へ証明すべく、会場は大きな進化を遂げた。みやこメッセを中心とする「IVSエリア」では、起業家から学生、支援者までが自由に交わり、投資や提携、偶発的な出会いを生み出す10,000人規模のプラットフォームを展開。一方で、あらたにホテルオークラ京都に開設された「IVS CORE」は、産業界の決裁権を持つ意思決定者や政府関係者が集い、日本のスタートアップの未来を決する議論を行う完全招待・審査制のエリアとして機能した。

今回、IVSにおいてメディアパートナーとして参加したIoliteでは、編集部が注目したセッションを中心に当日の様子をレポートする。

京都から世界へ スタートアップの底力を発信

オープニングセレモニーでは、主催者であるIVS京都実行委員会をともに構成する自治体の首長が登壇した。

西脇隆俊京都府知事は、国内外からの多くの参加者を歓迎した上で、「スタートアップの成長には人との出会いが重要である。京都が世界中のスタートアップ関係者の出会いの場となり、成長に貢献したいという思いでエコシステムの形成に取り組んできた。4年目を迎え、街中が熱気あふれる交流の場として定着してきたことを実感している」と語った。

さらに、前年にノーベル化学賞を受賞した北川進氏の研究をあげつつ、「京都発の技術が世界をリードすることを示している。定着から進化へ飛躍するターニングポイントとして、皆様とともに日本のスタートアップの底力を発信していきたい」と意気込みを語った。

続いて登壇した松井孝治京都市長は、1,000年の歴史を持つ京都の背景に触れ、「さまざまな文化やバックグラウンドを持つ人々が都を目指して集い、交流したエネルギーがこの街を作ってきた」とコメント。会期中に開催される300以上のサイドイベントにも言及し、「さまざまなバックグラウンドを持つ方々が交流することに意味がある。挑戦者があたらしいエネルギーや気づきを得て、日本の、そして世界のスタートアップの地平を切り拓いていく力を得ていただければ、これほどうれしいことはない」と期待を寄せた。

IVS2026 Opening

また、IVS COREのオープニングには特別ゲストとして岸田文雄元内閣総理大臣が登壇し、自らが推進した「新しい資本主義」と「スタートアップ育成5か年計画」の取り組みについて言及した。岸田氏は「国家戦略として政策を総動員し、スタートアップの裾野は確実に広がった。しかし今後は、そのなかから世界的な高成長企業を次々と生み出す段階に進めなければならない」と指摘。内外からの成長資金の供給拡大やM&Aを通じた出口の多様化、防衛調達を始めとする政府調達の活用によるディープテック支援の強化など、官民でさらなる「高さ」を目指す必要性を強く訴えた。

起業家の定義が揺らぐ時代──多様化する背景と持続的なマインドセットの再定義

初日、メインステージのセッション「スタートアップ起業家のニュースタンダード-多様化する起業家像と、そのマインドセットの再定義-」では、変化するスタートアップの定義や起業家の在り方について議論が交わされた。

株式会社ALPHAの立岡恵介氏がモデレーターを務め、従来の「Jカーブを描く急成長」や「資金調達を経てのIPO」という型にとらわれない多様な起業家たちが登壇した。

concon株式会社の髙橋史好氏は、インドでのインフルエンサー事業の売却を経て、群馬の伝統工芸である「高崎だるま」を現代的に再定義する事業を展開。資金調達を行わず、伝統技術と強固なIPコラボレーションを武器に、モナリザや金閣寺のように長期的価値(LTV)を最大化する「長さ」を意識した経営スタイルを提示した。

一方、株式会社HAKKI GROUPの小林嶺司氏は、ケニアやインドなどのグローバルサウスで信用スコアリングを用いた中古車のマイクロファイナンス事業を手がける。新興国特有の与信課題に対して、日本で立ち上げた法人としての資本レバレッジを活かす構造を構築し、社会課題解決と事業性の両立を追求する姿を示した。

さらに、M&Aによるロールアップ手法で地方や個人経営の優良ECブランドを集約・成長させるforest株式会社の湯原伸悟氏は、自身のポジションを「中小企業の親父」と形容。組織化とバックヤード共通化という確かな仕組み化によって事業群を成長させるアプローチを解説した。

登壇者らに共通していたのは、AI時代だからこそ代替できない「執着心」や「耐えしのぶ力」、そして周囲の目を気にしない「鈍感力」というマインドセットだ。従来の枠組みを超えた起業家たちの姿は、これからのスタートアップ像におけるあらたなスタンダードを力強く提示していた。

IVS2026 Startup

官民一体で進む「オンチェーン金融」への道筋

Web3.0メディア「NADA NEWS」プロデュースのもと、2024年以来の開催となる暗号資産特化のステージ「CRYPTO STAGE」では、「AIとオンチェーン金融で再び「日出る国」へ」と題したパネルディスカッションが開催された。

KDDI株式会社の黒田千春氏がモデレーターを務め、政界・金融界・Web3.0業界を牽引するキーマンが登壇。日本の金融市場が迎える大きな構造変化と未来への展望が語られた。

登壇者は、自由民主党の「次世代AI・オンチェーン金融PT」座長を務める衆議院議員の木原誠二氏、株式会社三井住友フィナンシャルグループの磯和啓雄氏、国内最大規模のウォレットユーザー基盤を有する株式会社HashPort代表取締役の吉田世博氏の3人だ。

セッション序盤では、2026年5月15日に自民党PTが出した提言書「次世代AI・オンチェーン金融PT提言」の狙いを、木原氏自らが解説。AIの急速な発展で無人の経済活動が行われる未来を見据え、「日本が主権を維持し、グローバルで勝つためにはブロックチェーン基盤との融合が不可欠だ」と強調した。

提言の核心は、決済や送金を始めとする金融分野のオンチェーン化を起点とし、暗号資産やステーブルコインといった通貨サイドに加え、RWA(現実資産)に代表されるアセットサイドの双方をオンチェーン化することにある。

木原氏は「通貨とアセットの双方が融合して初めて、日本経済全体のオンチェーン化とAI実装が加速する」と説き、政府の成長戦略に本方針を明確に位置づける姿勢を示した。さらに、金融機関のプラットフォームとしての役割再定義や国債のオンチェーン化推進に向け、年内の決着を目指す意志を表明した。

IVS2026 Kihara

金融機関の立場から磯和氏が実務の現状を解説。提言の波及効果について触れ、「単一のキラーユースケースを追求するのではなく、社会全体で金融活動が便利になる構造変化こそが本質だ」と指摘した。大手銀行による資金管理の効率化実験等を紹介しつつ、運用対象であるRWA側のトークン化の遅れに言及。「決済とアセットの両輪を揃えて提供することが重要だ」と述べた。

吉田氏は、日本のコンセンサスがグローバルレベルでのデジタルアセット市場の動向と呼応している点を評価。HashPortが推進するウォレットインフラの展開や、KDDIと連携したPontaポイントとステーブルコインの相互接続、医療分野や実店舗における決済事例を提示し、インフラが身近な生活基盤へ浸透しつつある実態を報告した。

後半では、JCBA(一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会)に新設される「ウォレット・AI部会」の取り組みや、AIエージェントが取引を行う自律型経済におけるルールメイキングへ議論が及んだ。 

AIエージェントによる取引が増加するなか、責任境界の明確化やノンカストディアルウォレットへの規制環境整備、将来的な税制改正など課題は多い。木原氏は「ハードローのみで変化の早い技術に対応するのは困難であり、自主規制を始めとするソフトローとの組み合わせが不可欠となる」と語り、民間主導のアジャイルなルールメイクに期待を寄せた。

IVS2026 Crypto AI and On-Chain Finance

日本版「ウォール・ストリート2.0」実現への課題と展望

IVS2026の2日目、CRYPTO STAGEにおいて「トークン化MMFから始まる金融の再構築──「ウォール・ストリート2.0」は日本でも実現するか」と題したセッションが開催された。

Solana Superteam Japanの佐藤茂氏のモデレーターによる進行のもと、伝統的金融(TradFi)の第一線で市場を牽引するアセットマネジメント3社が登壇。BlackRock Japanの田中勇毅氏、野村アセットマネジメントの野本氏、Franklin Templetonの湯浅氏が、暗号資産ETFの普及からオンチェーン金融の最前線である「トークン化MMF(マネー・マーケット・ファンド)」、さらには将来的な日本の金融構造の変化について活発な議論を展開した。

セッション冒頭では、2024年に米国で初めて暗号資産の現物ETFが承認されて以降の市場変化に焦点が当てられた。BlackRock Japanの田中氏は、暗号資産ETFがはたした最大の功績について「DeFiと伝統的金融という、これまで分断されていた2つの世界を接続した点にある」と指摘。通常の証券口座を通じて暗号資産へアクセスできるようになった意義を強調した。

日本市場における暗号資産ETFの解禁時期について、野村アセットマネジメントの野本氏は「ETFに関しては金融庁との議論を踏まえると2028年頃の登場が想定され、投資信託であればそれより早期に登場する可能性がある」との見解を示した。その上で、分散投資のツールとして、情報の適切な開示や先物・現物を活用した商品設計を模索していく姿勢を提示した。

議論は、ブロックチェーン上で取引されるオンチェーン資産、とりわけトークン化MMFへと展開した。

オンチェーンMMF「BENJI(ベンジー)」を展開するFranklin Templetonの湯浅氏は、MMFをブロックチェーン上に構築した最大の実績として「金融商品がソフトウェアへ変化したこと」をあげた。プログラム化により、パブリックチェーン上で1秒単位の保有記録と利息の計算・分配が可能となり、投資家間でのP2Pの即時移転や担保管理など、あらたなユースケースが開拓されている実態を明かした。

米ドル建てオンチェーンMMF「BUILD(ビルド)」を展開するBlackRockの田中氏も「将来的に株式や債券、ETFを含むあらゆる資産がオンチェーン化される世界を見据えている」と語り、品質の高い運用手段を提供することが運用会社の使命であると述べた。

日本において「ウォール・ストリート2.0」ともいえる金融インフラの再構築が実現するまた、今後3〜5年で市場を牽引するプレイヤーについて、3社は口を揃えて「銀行」の役割が極めて重要になると予測。決済や送金、預金領域を抑えている銀行が先行し、ステーブルコインやトークン化預金などの決済基盤を普及させることが不可欠であるとの見方で一致した。

さらに、株式や債券などのトークン化を進める上では、投資信託法や社振法といった既存の法体系との整合性や、制度の予見可能性を高める官民一体の取り組みが必要であると提言された。

登壇者らは、ユーザーがブロックチェーンの存在を意識することなく恩恵を受けられるUXの創出と、日本の堅実なコンプライアンス基盤を強みとした取り組みが、あらたな金融システムの確立につながると締めくくった。

IVS2026 Crypto Wall Street 2.0

人間主体から「AIエージェント主体」へシフトする決済インフラ

2日目のセッションでは、世界的に急拡大するステーブルコインの活用と、急速に台頭するAIエージェントの融合をテーマにした「『AIエージェント×ステーブルコイン』:世界のデジタル決済最前線の『衝撃』と、日本における『実装』」が行われた。

本セッションには、Circleの榊原健太氏、Stripeのダニエル・ヘフェルナン氏、JPYCの岡部典孝氏、Progmat, Incの齊藤達哉氏、そしてトレーダム株式会社の阪根信一氏といった、決済・金融インフラを牽引するキーマンが登壇した。 

人間主体の金融構造から、自律的に思考し行動する「AIエージェント」主体のあたらしい経済圏へと移行するなかで、ステーブルコインがはたす決定的な役割と、日本市場における現実的な実装アプローチについて議論が交わされた。

セッション冒頭、Stripeのダニエル氏は、近年同社が注力するステーブルコイン決済の背景と、AIエージェントを巻き込んだ「エージェンティック・コマース(Agentic Commerce)」の概念について解説した。従来のeコマースでは、人間がブラウザを開き、アカウント作成や住所・クレジットカード情報の入力を行うプロセスが不可欠であった。しかし、OpenAI等と共同開発されたプロトコルなどの登場により、AIが自律的にツールやリソースへアクセスし、マイクロ決済をミリ秒単位で処理する未来が現実化している。

これに対しCircleの榊原氏は、「既存の金融システムや決済網は、人間が手動で操作することを前提に設計されている」と指摘。AIエージェント同士が超高速・超少額で相互に仕事を依頼・決済する世界においては、ミリ秒単位での即時決済性と極めて低い手数料を両立できるパブリックチェーン上のステーブルコイン以外に選択肢がないと語った。

実際、JPYCの岡部氏も「日本円連動型ステーブルコインであるJPYCは、すでにAIモデルの決済や、AI経由の購買テストで稼働し始めている」と報告。2035年に向けた世界のステーブルコイン決済額の爆発的な増加予測について、「人間同士の取引だけでは説明がつかない。大半はAIエージェント間、またはAIと人間との相互取引によるものになる」との見解を示した。 

AIエージェントの未来図に加え、セッションでは足元で急増する実物経済でのステーブルコイン需要についても深掘りされた。

特に新興国との貿易決済や国際ロジスティクス領域においては、従来のSWIFT(国際銀行間通信協会)経由の銀行送金が抱える「着金スピードの遅さ」や「高い中間コスト」が大きな課題となっている。日金間のクロスボーダー取引において、数日かかる資金移動が即座に完了することは、小規模な事業者にとって事業資金の回転率を向上させる大きな強みとなる。

一方で、金融市場や機関投資家の観点からみると、単に法定通貨に都度戻す決済スタイルだけでなく、オンチェーン上でステーブルコインのまま資金を運用し、資金効率を極限まで高める「オンチェーン完結型」の口座モデルへの期待が高まっていることが共有された。

IVS2026 Crypto AI Agent Stablecoin

将来的なポテンシャルの一方で、日本国内でステーブルコイン及びAIエージェント決済を本格普及させる上でのハードルについても率直な議論がなされた。

1つ目の課題は、現行ライセンス制度や会計・監査上の制約である。JPYCの岡部氏は、資金決済法における発行・移動の額面制限や、大企業の監査法人によるオンチェーンアセット保有に対する慎重姿勢をあげつつも、データ監査システムの整備や段階的な実証・運用によって解決を目指していると語った。

2つ目は、既存金融機関との接続と「受取側の利便性」である。トレーダムの阪根氏やStripeのダニエル氏が指摘したように、法人や一般消費者がステーブルコインを受け取った際、最終的に即座に日本円として銀行口座に着金する仕組み(オフランプ環境)が整っていなければ、事業者の導入障壁は高いままとなる。

この点について登壇者らは、「ステーブルコインは既存の銀行金融と対立するものではなく、補完関係にある」と口を揃えた。既存金融の強力なコンプライアンスや着金インフラと、ブロックチェーンの流動性・即時性をブリッジさせることで、段階的に安全な実装を進めていくアプローチが提示された。

会場からの「最初にどの産業からエージェンティック・コマースが浸透するか」という質問に対しては、言語バリアをAIが超える「インバウンド・国際観光予約」や、クラウド環境での「超少額開発リソースの即時調達」などが有力な初期ユースケースとしてあげられた。

テクノロジーで解決を目指す「持続可能な食」の未来

世界的な地政学リスクや気候変動が深刻化するなか、日本の一次産業と食糧安全保障の未来を巡るセッション「食糧安保の再定義:テクノロジーが築く「持続可能な食」の防波堤」がメインステージで開催された。

日本の食料自給率は現在38%と低い水準にとどまっており、さらに農業従事者の高齢化と人口減少による生産基盤の脆弱化が急速に進んでいる。こうした深刻なリスクに対し、行政、アカデミア、農業団体、アグリテック・スタートアップという多様な立場から最前線で挑むキーマンが集結。テクノロジーを活用した現場課題の解決と、持続可能なイノベーションの在り方について熱い議論が交わされた。

セッション前半では、日本の食を巡る現状の歪みと構造的課題が提示された。バイオ炭を活用した高機能ソイル(育苗土)等を開発する株式会社TOWINGの西田宏平氏は、「化学肥料の多くを海外輸入に依存している現状では、実質的な自給率はさらに低い」と指摘。こうした危機的状況を「従来の農業手法を変革するための大きな構造転換のチャンス」と捉え、有機肥料への転換や海外生産現場の課題解決に挑むスタートアップの立場から市場機会を強調した。

農林水産省の阿部尚人氏は、食料安全保障の概念について「単なる自給率の数値向上にとどまらず、輸入ルートの多角化や資材の調達安定化、国内生産の持続性確保が不可欠だ」と解説。気候変動や世界的な需要高まり、地政学リスクにより海外からの資材・食料調達が不透明になるなか、生産現場の急速な人口半減にどう対応するかが国家的な重要課題であると訴えた。 

また、一般社団法人 AgVenture Labの小里司氏は、都市部の消費者を支えてきた従来の相場形成や流通構造に触れ、「生産コストを反映した適正価格への理解と形成が進まなければ、離農に歯止めがかからず食料供給自体が立ち行かなくなる」と強い危機感を表明。京都大学成長戦略本部の鶴英明氏は、諸外国の事例や自動車産業等のコスト構造と比較しつつ、食料生産にかかる適正な価値とコストを社会全体で受容していく意識改革の必要性を説いた。

セッション後半では、「農業(Agriculture)」と「テクノロジー(Technology)」を掛けあわせた「アグリテック」をどのように生産現場へ浸透させ、社会実装していくかという実践的テーマへ議論が及んだ。

多くのテクノロジーやバイオ系プロダクトが誕生する一方で、開発者と生産現場の認識ギャップが普及の大きな障壁となっている。TOWINGの西田氏は、「農業は地域や作物ごとに課題や環境がまったく異なり、単に優れた技術を提示するだけでは広がらない」とし、現場のニーズにピントをあわせる丁寧なコミュニケーションと、オープンイノベーションによる段階的なステップアップの重要性を語った。

AgVenture Labの小里氏も、スタートアップが現場の商習慣や実際の苦労を深く理解することの重要性を強調。全国農業協同組合連合会(JA全農)や農林中央金庫などの専門家が伴走し、スタートアップと現場をつなぐプラットフォームとしての役割を今後も強化していくアプローチを示した。

さらに、農林水産省の阿部氏は「多様な現場に対して画一的な技術の適用は困難だが、新規参入者が容易に営農できるパッケージ化された技術や正しい情報提供が今後のカギになる」と語り、官民学が一体となったビジョンの提示と環境整備の必要性をまとめた。

テクノロジーによる生産性の向上だけでなく、文化や現場の商習慣に寄り添った泥臭い泥仕合と多角的な連携があってこそ、日本の食糧安全保障は真の防波堤を築くことができる「アグリフード・エコシステム」の未来像を指し示すセッションとなった。

IVS2026 Agritech

高レベルのピッチイベントになった「IVS2026 LAUNCHPAD」

審査員より“過去最高レベル”と評されたメインイベントの「IVS2026 LAUNCHPAD」。500社以上の応募から選ばれた15社の決勝登壇者が白熱のプレゼンテーションが繰り広げた。優勝者には「スタートアップ京都国際賞」が贈られるとともに、受賞特典として1,000万円の賞金も授与された。

さまざまなスタートアップがしのぎを削るなか、2026年のトップには株式会社Space Quartersの高橋宗徳氏が輝いた。

IVS2026 LAUNCHPAD

高橋氏が率いるSpaceQuartersは、従来の「ロケットの先端サイズに収まる完成構造物しか打ち上げられない」という物理的制約に着目。パネル状の建材と独自の高精度汎用ロボットシステムを宇宙空間へ輸送し、軌道上や月面で直接組み立て・溶接を行うコンストラクション技術を開発している。

このアプローチにより、構造物の輸送・施工コストを最大10分の1に抑えつつ、大型アンテナやモジュールなど10倍以上のスケールを持つ高収益インフラの構築を可能にし、宇宙利用における投資対効果(ROI)を100倍化するイノベーションを提示した。

高橋氏は表彰式で次のように語った。

「2022年の創業以来『宇宙で大型構造物を建てる』という一点だけを見据えて歩んできた。『コンセプトは面白いが本当に実現できるのか』という数多の疑念と向き合い続けてきたが、メンバーとともに自分たちのゴールを信じぬき、開発と試行錯誤を重ねてきた。今日、その構想がもつワクワク感を多くの皆様に伝えられたことが何よりうれしい。日本の高度な精密ロボティクスや建築技術、ファクトリーオートメーションの歴史へのリスペクトを胸に、人類が真に宇宙を利用できる未来を日本から切り拓いていきたい」

社会インフラの課題解決から宇宙フロンティアの開拓まで、日本のスタートアップエコシステムが持つレベルの「高さ」と「可能性」を世界へ強烈に示した格好だ。

IVS2026 LAUNCHPAD 2

成熟化に伴う過渡期だからこそ描かれた未来志向の姿

今年も3日間にわたり開催されたIVS2026は、盛況のうち幕を閉じた。京都の街全体がスタートアップの熱狂の渦に包まれ、あらたなイノベーションを生み出すエネルギーがひしひしと伝わるイベントであった。

IVS2026 image1
IVS2026 image2

さまざまなカテゴリのブース出展やセッションが行われたが、今年は「成熟化に伴う過渡期」という印象を受ける内容が多かったように感じた。

たとえば、ブース出展をする企業のプロダクトの大半がAIに関連したものであったが、「ただAIを使ったサービス」ではなく、AIの活用が当たり前という前提のもと、「AI活用の先にみえた課題解決」に焦点を当てたサービスが非常に多く見受けられた。

また、CRYPTO STAGEで繰り広げられたセッションも暗号資産の金商法への移行を見据えた内容が展開されており、規制の厳格化への嘆きよりも、むしろ未来志向のポジティブなセッションが繰り広げられたといえる。

IVS2026で語られた想いや熱意が、どのような形で花開くのか。本イベントに参加したプレイヤーたちがあらゆる分野で活躍することに期待したい。

画像:Iolite、IVS2026


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