成熟化に伴い変革が加速する暗号資産の現在地を知る 「Japan Blockchain Week Summit 2026」イベントレポート

2026/07/28 17:00
Iolite 編集部
文:Shogo Kurobe
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成熟化に伴い変革が加速する暗号資産の現在地を知る 「Japan Blockchain Week Summit 2026」イベントレポート

8年目を迎えたクリプトエコシステムをつなぐ架け橋

2026年7月12日、東京・渋谷ストリームホールにて、一般社団法人Japan Blockchain Weekが主催するサミット「Japan Blockchain Week Summit 2026(JBWS 2026:以下、JBWS)」が開催された。

JBWSは、7月1日〜15日にかけて首都圏を中心に展開される日本最大級のWeb3.0イベントウィーク「Japan Blockchain Week 2026」におけるメインイベントの1つだ。

2026年のJBWSは、Bitmine Immersion Technologies(以下、Bitmine)がタイトルスポンサーを務め、国内外から起業家、開発者、投資家、政策関係者など1,000名を超える参加者が集結した。会場では、Web3.0の将来像を始め、AIと暗号資産(仮想通貨)の融合、オンチェーン経済の進化といった最先端のテーマに加え、NFTの現在地など、多角的な議論が交わされた。

今年で8年目を迎えたJapan Blockchain Weekは、日本とグローバルのクリプトエコシステムをつなぐ架け橋として確固たる地位を築いている。この記事では、編集部が注目した当日の主要セッションの模様をレポートする。

暗号資産を「長期的な資産クラス」へ Binance Japan代表・豊崎亜里紗氏が描く成長戦略

イベントの開幕を飾る最初のセッション「Opening Talk & Fireside chat」では、主催者であるJapan Blockchain Week代表の藤本真衣氏と、7月1日付でBinance Japanの代表取締役に新任した豊崎亜里紗氏による対談が行われた。あらたなリーダーのもとで、Binance Japanが描く今後のビジョンについて深掘りする場となった。

Mai & Arisa

豊崎氏は大学でコンピューターサイエンスを専攻し、分散型システムを学ぶなかでブロックチェーン技術の可能性を見出したという。

大学卒業後は外資系証券会社でのデリバティブトレーダーや、Googleでの検索商品の開発及び商品戦略を経て、2021年からDeFi領域に本格参入。過去5年間にわたりDeFiデリバティブ市場「Cega Finance」の開発を手がけ、2025年に事業売却を完了させている。

数あるオファーのなかからBinance Japanのトップを選んだ理由について、同氏は「ブロックチェーン技術の社会実装」をあげた。DeFiの領域で一定の成果を残したものの、業界の規模感に課題を感じ、社会実装を進めるためにはより広く技術を普及させる必要があると判断したという。

日本の金融庁からライセンスを取得し、確固たる信頼の基盤を築いているBinance Japanであれば、「世界最大の流動性と日本での信頼を両立させながらビジョンを展開できると確信した」と語った。

続いて豊崎氏は、日本で拡大を続けるBinance Japanならではの強みと、今後の成長に向けた「3本の柱」を提示した。現在同社は国内最多となる66銘柄を取り扱っており、過去半年間における円建てのビットコイン(BTC)及びイーサリアム(ETH)の取引量で国内No. 1を記録している。

今後の成長戦略として掲げた3本の柱は以下の通りである。

 

  • 信頼の基盤強化:当局との関係性を引き継ぎつつ、ユーザーのオンボーディングをより滑らかにし、安心して利用できる環境を整備する。また、暗号資産を短期的な投機対象としてではなく、ポートフォリオの5〜8%を長期的に割り当てる「長期的な資産クラス」として定着させる認識作りを行う。
  • PayPayとの協業:昨年末から開始したPayPayとの協業を通じ、日々の生活へのデジタル資産の組み込みを推進する。NISAの普及やインフレの波が訪れるなか、暗号資産への認知と理解を広め、あらたな資産クラスとしての認知拡大を図る。
  • 日本市場に合わせた製品展開:グローバルグループの強みである多種多様な製品展開を活かしつつ、日本のユーザーのインサイトを吸い上げたプロダクト開発を行う。今後はあらたな資産クラスやライセンスの取得も検討していく。

 

最後に豊崎氏は、現在の暗号資産市場について「マスアダプションへ向かう節目にある」と見立てを示した。今後の日本の税制や規制の改正がユーザーの行動を大きく後押しすると語り、「アップダウンが激しい業界ではあるが、めげずに技術への信用と明確な目的を持つことで、これから伸びる時にすばらしい機会が訪れる」と強調した。

参加者をアーリーアダプターと称賛し、業界の未来をともに作り上げていこうと力強く呼びかけた。

Mai & Arisa 2

トム・リー氏が語る資産クラスとしての「Ethereum 2.0」への変革と中長期的な強気シナリオ

スペシャルキーノートには、米Fundstratの共同創業者でありBitmineのチェアマンを務めるトム・リー氏が登壇した。

リー氏は「イーサリアムこそが“富の不気味の谷”を解消する解決策」という自身の考えについて述べたとともに、弱気相場が続く市場心理に対して慎重ながらも、中長期的には楽観的な見解を示した。

セッションの冒頭でリー氏は、足元の暗号資産市場におけるマクロ経済環境の厳しさを分析した。FRB(米連邦準備制度理事会)による金融政策が利下げからタカ派寄りの姿勢へシフトしたこと、米国におけるクラリティ法案の法制化が停滞していること、さらにはAI分野への過剰な資金集中(AI FOMO)によって暗号資産への関心が一時的に押し下げられていることなどを懸念点としてあげた。

しかし同氏は、テクニカルアナリストの分析を引き合いに出し「市場心理は底値圏にあり、弱気な見方は底値で行われている」と強調。著名投資家として知られるベンジャミン・グレアム氏及びウォーレン・バフェット氏の「市場は一時的に企業の成功を無視することがあっても、最終的にはそれを証明する」という言葉を引用し、短期的な価格迷走の先に実質的な成長が正当に評価される時期が必ず訪れると語った。

同氏は特に、イーサリアムの成長余力に強い期待を寄せる。ウォール街によるトークン化プロジェクトの拡大や、Robinhoodが展開するレイヤー2チェーンの急成長、さらには世界中の開発者コミュニティにおける圧倒的な支持率をあげ、「従来の金融基盤からオンチェーンへの移行が加速している」と分析した。

かつてAmazonやNVIDIAが長い停滞期を経て事業規模を拡大させ株価を急上昇させた歴史を引き合いに出し、現在のイーサリアムはまさに「Ethereum 2.0」へ向かう変革期にあるとした。

さらに、自律型AIエージェントが台頭し人間の代わりに富を創出する未来において、人間とAIの関係における“不気味の谷”現象を克服するための信頼基盤としてブロックチェーンが機能する「AIと暗号資産の融合」を予測した。

最後に、設立1年で約574万ETHを取得(登壇時点)し巨大なステーキングネットワークを構築したBitmineの取り組みを説明し、「大きな富は頻繁な売買ではなく、じっと耐えて待つ時間から生まれる」というチャーリー・マンガー氏の金言で講演を締めくくった。

Tom Lee 2

ゼロ知識証明が開く「プライバシーインフラ」の未来 資産運用とAI時代におけるプライバシーの重要性

続いて行われたパネルディスカッション「プライバシーのためのゼロ知識証明 — 資産運用に不可欠な最新技術」では、プライバシー保護技術の最前線で開発を進めるエキスパートが集結した。

Tanéの六人部生馬氏がモデレーターを務め、RAILGUNのアラン・スコット氏、INTMAXの日置玲於奈氏、及びNyx Foundationの足立智紀氏がパネリストとして登壇し、透明性を前提として発展してきたパブリックブロックチェーンにおいて、なぜ今プライバシーが不可欠なのかという根本的な問いについて深掘りされた。

Privacy Session

登壇者からは、伝統的金融では当然のように担保されているプライバシーやセキュリティが、パブリックチェーン上のDeFi(分散型金融)や日常決済においては著しく欠落している現状が指摘された。

アドレスや取引履歴がすべて公開される現状は、個人の人身安全や給与支払いにおける格差発覚、さらには日常的な購買傾向の特定といったリスクをはらんでいる。

さらに金融面においては、機関投資家のトレーディング戦略や保有資産状況が監視され、狙い撃ちにされるなど、大口資本の本格的な参入を阻む致命的なハードルとなっている。

これに対し、ZKP(ゼロ知識証明)を活用したRAILGUNやINTMAXといったソリューションが、透明性と検証可能性を維持しつつ秘匿性を担保する不可欠なインフラになると主張された。

さらに議論は、エコシステムにおけるコンポーザビリティの維持や、AIエージェントが自律的に決済を行う未来、そして量子コンピューターの台頭を見据えた暗号解読リスクへも及んだ。

AIの台頭によってトラッキングやヒューリスティック分析が高度化するなか、IPアドレスやRPCコールといったサイドチャネルからのデータ漏洩を防ぎ、耐量子暗号に対応した強固なプライバシー層をプロトコル全体に組み込むことの重要性が確認された。

登壇者らは、ユーザーが今すぐ実践できる自衛策としてVPNやパスワードの定期的な更新、あるいはBraveやSignalといったプライバシー重視型ツールの併用を推奨。単に取引を隠す機能にとどまらず、DeFi・決済・AI・耐量子といったあらゆる領域において、プライバシーは次世代のデジタル社会を支える「必要不可欠なインフラ層」であるという共通認識を示し、セッションは締めくくられた。

ブロックチェーンが持つ本質的な価値とクリプト文化の現在地が示されたイベントに

今回のJBWS 2026を通じて強く印象付けられたのは、市場の制度化やインフラ構築といったビジネス面での議論にとどまらず、クリプトカルチャーの深みや現在地を提示するセッションが数多く展開された点である。

会場では、AIとの融合や機関投資家向けのプライバシー技術といった最先端のテーマが交わされる一方で、かつてのブーム期を経て成熟期を迎えたNFTのあらたな活用事例や、コミュニティ主導のオンチェーンカルチャーに関する貴重なセッションが多数取り上げられた。

短期的なトレンドの移り変わりに左右されず、ブロックチェーンの本質的な価値やWeb3.0特有のエコシステム文化を再発見できる場となったことは、本イベントならではの魅力といえるだろう。

Web3.0の実用化とカルチャーの熟成が両輪となって進む現在、技術とコミュニティの今を包括的に捉えた今年のJBWSは、オンチェーン化に関する話題が多勢を占めるなかで特に貴重な機会になったのではないだろうか。

画像:Iolite


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