AR(拡張現実)グラスなどを手がけるRokid(ロキッド)は8日、「Rokid スマート AI グラス」の日本展開及び日本市場における事業戦略発表会を開催した。
AIを搭載した本スマートAIグラスは7月10日より全国の電気量販店及びECサイト等で販売開始。販売価格は109,800円だ。
発表会では、グローバル市場における実績を始め、スマートAIグラス専用に自社開発した独自新OS「AIOS」の構造や、日本国内の5都市を巡るプロモーションツアーの実施などが明かされた。
また、同社は今後1年間で日本市場に対して少なくとも10億円を投資し、市場開拓とエコシステムの拡大を本格化させる方針だ。
Rokidは2014年に設立したAR及びAI領域における中国発のテクノロジー企業だ。国内クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake(マクアケ)」において7,401人のユーザーが支援を行い、同プラットフォームの13年の歴史における最高記録(2026年5月時点)を樹立した。
事業戦略発表会に登壇したVP, General Manager of Overseas Operations, RokidのZoro Shao氏によると、同社製品は前年同期比600%以上の成長率を記録し、ディスプレイ搭載AIグラスとして世界トップの市場シェアを獲得したという。さらに、米国及び中国におけるAIグラスの市場シェアにおいてもトップを獲得したと報告した。

また、Global Head of Open Ecosystem, RokidのWeiqi Zhao氏によると、AIOSはスマートAI グラス上で多様な AI 体験を実現するための独自基盤として設計。加えて、開発者やパートナー企業が AI グラス向けの AI エージェントを提供できる「Agent Store」との連携により、ユーザーは翻訳、会議、検索、観光、教育など、用途に応じた AI エージェントを選択し、RokidスマートAIグラス上で利用できるようになるという。
ジャオ氏は、AIグラスを購入するだけで終わりにするのではなく、専用アプリとの連携などを通じて「継続的に新機能が追加されるデバイス」にしていくことを強調した。
Ioliteでは事業戦略発表会にあわせてシャオ氏に取材を行った。

──日本市場参入にあたり直販ではなく「Makuake」でのクラウドファンディングという手法を選んだ理由は?
Shao氏:直接販売からスタートする選択肢もあったが、製品に対する市場の反応をテストすることが目的だった。日本の消費者がどのような受容性やプライバシー上の懸念を持つかを事前によく見極めたいと考えていた。
クラウドファンディングでの反応と数字を踏まえて日本での活動を本格拡大させようと考えていたところ、結果としてMakuakeの13年の歴史における全カテゴリでの最高支援記録を塗り替えることができた。今振り返っても、クラウドファンディングからスタートしたのは日本参入において最も正しい意思決定だったと確信している。
──グローバルではMetaなどの大手テクノロジー企業もスマートグラスに注力している。他社と比較したRokidの強みはどこにあると考えるか?
Shao氏:強みは大きく3点ある。
1点目は、「ソフトウェアとOS能力」だ。独自のOSを構築しソフトウェアの性能を引き出すノウハウにおいて、我々は圧倒的な強みを持っている。
2点目は「グローバル最大級のAI開発者エコシステム」を有していることだ。すでに30,000人以上の開発者が参画しており、このエコシステムの拡大スピードは大手IT企業と比較しても引けをとらないと考えている。
3点目は、「ハードウェアの構造・軽量化技術」だ。我々はこれまで単眼・双眼・一体型・分離型・ウェーブガイド(光波長板)など、累計11世代に及ぶ多種多様なAI/ARデバイスを量産してきた。たとえば、競合他社のディスプレイ付き単眼モデルが約69gであるのに対し、我々のプロダクトは双眼ディスプレイとカメラをフル搭載しながら「49g」という驚異的な軽さを実現している。これまで蓄積してきたノウハウを活かし、構造設計と素材選びの面でも明確な差別化ができている。
──発表会では「今後1年間で日本市場へ少なくとも10億円を投資する」と表明したが、具体的な使途は?
Shao氏:10億円というのは、我々にとってあくまで「最低限の投資ライン」に過ぎない。今後のビジネスの広がりに応じて、最大で100億円規模まで投資を拡大する準備がある。
具体的な投資先としては、まず「店舗チャネルの拡大」がある。現在展開している約75店舗での取り扱いにとどまらず、さらに取り扱い店舗を増やすとともに、2027年にも日本国内で直営フラッグシップショップのオープンを目指している。
次に「ローカル組織とエコシステムの構築」だ。日本法人の従業員採用を強化するほか、日本の開発者コミュニティへの投資、本日発表した「5都市ポップアップツアー」などを通じて、日本の文化や地域コミュニティとの融合を図る。
さらに「マーケティング施策」として、より多くのユーザーへ認知を広げるため、日本国内でのアンバサダーの起用なども検討を進めていく方針だ。
──今後のグローバル展開のロードマップにおいて、日本市場はどのような位置付けになりますか。
Shao氏:日本は我々のグローバル戦略において、最も重要度の高い最優先市場だ。今回発表した「Agent Store」や新エージェント機能のグローバル初公開を、他国に先駆けて日本で実施した理由もそこにある。
ロードマップとしては、日本を起点として、2026年8月より米国やカナダなどの北米市場へ展開し、9月にはドイツでの見本市にあわせて欧州・中東市場へと展開を広げていく予定だ。
取材では筆者も本スマートAIグラスの機能を体験した。

まず性能の高さをうかがわせたのは、「リアルタイム翻訳機能」だ。前述のインタビューは筆者とシャオ氏が互いにスマートAIグラスをかけ、通訳を介することなく「中国語と日本語」にて行った。
筆者のグラスにはShao氏が発した中国語が日本語で瞬時に表示され、シャオ氏のグラスには筆者が発した日本語が中国語に翻訳され表示される。表示される内容も日常会話に近い表現・速度感となっており、ノンストレスで使用できた。
また多機能をうかがわせるもう1つの要素として、搭載されているカメラで名刺を読み取ることで、「会社概要をまとめグラス上で表示」する機能だ。これは読み取った情報をAIが瞬時に解析し、事業内容などの企業概要をリアルタイムで表示する機能である。
体験会では読み取った情報に齟齬はなかったものの、もちろん情報が100%正確であるという保証はない。しかし、突発的に発生した名刺交換の機会で多少なりとも使用することができるのではないかと感じた。
本格的に使用を開始する前には専用アプリをスマートフォンなどでダウンロードし、スマートAIグラスとBluetoothで接続する必要がある。多機能ゆえに使いこなすには時間を要すると感じたのも事実だが、まずは自分が使いたい機能だけを使用し、慣れた後に別機能を使うのも悪くないだろう。
いずれにせよ、筆者の目線ではリアルタイム翻訳の性能に驚いたとともに、まだ場面は選ぶものの、一部ビジネスシーンでの使用も可能だと感じた。
一方、多機能かつターゲットとする年収層が高いことから、価格が高めに設定されている点は購買時の障壁になる可能性がある。まずは店舗等で機能を体験し、その上でビジネスシーンなど目的が合致した際に購入を検討することを強く推奨する。
画像:Iolite、プレスリリースより引用