日本の伝統文化と次世代技術トレンドが交わった日 「TEAMZ WEB3/AI SUMMIT 2026」イベントレポート

2026/04/17 17:00 (2026/04/17 17:34 更新)
Iolite 編集部
文:Iolite 編集部
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日本の伝統文化と次世代技術トレンドが交わった日 「TEAMZ WEB3/AI SUMMIT 2026」イベントレポート

日本の伝統文化と次世代技術が融合したイベント

動向の変化が著しいWeb3.0及びAI領域において、最新トレンドを捉え次世代産業の創出を目指す「TEAMZ WEB3/AI SUMMIT 2026」が開催された。

国内における大規模Web3.0関連イベントとして毎年実施されてきた本イベントだが、2026年は東京・港区の八芳園で開催。「Tradition Meets Tomorrow(伝統と未来の融合)」というテーマにあわせ、日本のさまざまな伝統文化と次世代技術が融合したイベント構成となっていた。

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今回もメディアパートナーとして参加したIoliteでは、編集部が注目するセッションを中心にレポートとしてまとめていく。

金融の「頭脳」と「内臓」が進化する時代へ ― 片山さつき財務大臣が語るWeb3.0とAIの現在地【Day1】

オープニングセッションに登場したのは、片山さつき財務大臣兼金融担当大臣だ。かねてよりブロックチェーンの活用などを訴え、Web3.0政策に積極的な姿勢をみせてきた。

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片山氏は「金融取引において重要となるのは、情報の分析・判断と、取引の記録・管理であるが、AIは前者、ブロックチェーンは後者を担う技術である」と整理する。

この構造について、片山氏は「金融の頭脳と内臓の両方が進化している」と表現。特にブロックチェーンは、もはや実験段階の技術ではなく、金融インフラのあらたな選択肢として現実味を帯びてきていると指摘した。

日本における取り組みとしては、2025年に国内初となる日本円建ステーブルコインが発行され、さらにメガバンクによる共同発行の実証実験や、トークン化預金の検討も進展している。

そうしたなか、片山氏は証券決済の高度化に向けた実証実験についても言及。証券の権利をブロックチェーン上で管理し、ステーブルコインなどを用いて売買と決済を連動させる仕組みの検証が進められていると説明し、これによって「証券取引プロセス全体の効率化・高度化が期待される」と語った。

さらに、ブロックチェーンの応用領域として貿易金融を例にあげ、貨物の輸送や通関情報をブロックチェーン上で共有し、そこにステーブルコインやトークン化預金を組み合わせることで、物流と決済を連動させる仕組みについても言及した。こうした取り組みは、単なる送金の高速化・低コスト化を超え、業務プロセス全体の変革につながるとする。

さらに、今後はブロックチェーンとAIの融合により、自律的で効率的な金融サービスが実現する可能性も指摘。AIはすでに検討フェーズから実装フェーズへと移行しつつあり、金融庁としても今後、健全な活用を後押ししていく方針であることを強調した。

最後に片山氏は、ブロックチェーンやAIといった分野は、急速な技術革新の最中にあり明確な正解が存在しない領域であると語った。その上で、多様な視点や経験を持ち寄ることの重要性を強調し、あらたな議論や発見がビジネス創出につながることへの期待を示し、講演を締めくくった。

「null²(ヌルヌル)」から「null⁴(テトラヌル)」へ 落合陽一氏が描くAI時代の“人間の居場所”【Day1】

メディアアーティストの落合陽一氏とマクニカグループの宮城教和氏が登壇したセッションでは、大阪・関西万博で大きな話題を呼んだパビリオン「null²(ヌルヌル)」の進化系プロジェクトについて語られた。

デジタルとフィジカルの融合をテーマとして展開された「null²」では「AIが人間を超えた後の世界」を表現し、来場者数は外観だけで約1,200万人、内部体験者も50万人を超えるなど、国内でも屈指の動員を記録。その「null²」を“転生”させる形で構想されているのが「null⁴(テトラヌル)」となる。

「null⁴」は2027年に開催予定の国際園芸博覧会に向けて準備が進められている。人間よりも大きく賢い存在と共存しながら、自然のなかで再び自らの在り方を見出していく——。「null⁴」では、そうした未来像を体現する試みであるという。

最大の特徴は、「動く建築」という点にある。AI制御によって建物自体が回転し、対話し、さらには“喋る”存在として設計されている。鏡面構造を活用し、周囲の自然や庭園の風景を映し込みながら変化し続けるその姿は、建築であり彫刻であり、同時に環境そのものを再構築する装置でもあると強調した。

落合氏によれば、空間設計もユニークだという。昼は花畑と一体化した静的な庭園空間として機能し、夜はDJライブが開催されるダイナミックな場へと変貌する。こうした二面性を持つ設計は、「AI時代において人間はどのように存在するのか」という問いへの1つの応答でもあると強調された。

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このほか、横浜・みなとみらいのランドマークタワー内に設置される常設型のミュージアムシアターとして「null²ⁿ(ヌルヌルネクサス)」を2026年に開業する予定であることも明らかにした。大型LEDを活用した没入型空間が構築される予定で、大阪万博のレガシーを都市空間へと引き継ぐ拠点となる。

最後に、落合氏はテクノロジーとアート、そして文化を融合させることで、「日本発のあらたな価値創出を実現したい」と強調した。分断が進む世界において、調和を生み出すコンテンツをいかに構築できるか——その問いに対する挑戦が、改めてスタートした。

AI時代は「弱者がより苦しむ」可能性 成田悠輔氏が指摘する社会の分断とWeb3.0の課題【Day1】

「AI × Web3:未来社会の再構築 ― ビジョンと現実」と題したセッションでは、経済学者の成田悠輔氏と、Binance Japanの千野剛司氏が登壇。千野氏がモデレーターを務めた。

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セッション冒頭、成田氏は今後2〜3年の短期的な変化について、極めてシビアな見方を示した。AIの進展により、「むしろ弱い立場の人々がさらに苦しむ構造が強まる」と指摘する。特にホワイトカラー層や若年層といった、これまで安定的とされてきた人々ほど影響を受けやすく、資本家や既得権益層との格差は一層拡大する可能性があるとした。

一方で中長期的には、AIによって個人の能力が飛躍的に拡張される可能性にも言及する。だが同時に、「文章を書く、プログラムを書くといった知的労働は価値を失う」とし、今後は「“人を動かす力”こそが最も重要な能力になる」と強調した。

こうした変化の先にあるのは社会の二極化である。AIと情報に飲み込まれる大衆と、そこから離脱する人々。こうした社会では「学校や会社、資本や権力から距離を置いて、衣食住に集中するような生き方も1つの選択肢になる」と成田氏は語る。

議論はWeb3.0にも及ぶ。成田氏は一般認識について「“怪しい詐欺”というイメージにとどまっている」と指摘。その要因として「何ができるのかが伝わっていない点」をあげた。

これに対し千野氏は、ユーザーへの価値訴求の難しさを認めつつ、「ポイントや還元といったわかりやすい体験から入ることが重要」と説明。実際に暗号資産による還元サービスなど、実用面からの普及を進めているとした。

さらに成田氏は、AIとWeb3.0の融合が「金融の無意識化」をもたらす可能性に言及。AIが個人に代わって意思決定を行うことで、あらたな“間接金融”が生まれる未来を示唆した。

その反面、AIを活用した詐欺の拡大にも警鐘を鳴らす。「今最も進んでいるAI金融は投資詐欺だ」とし、従来の規制では対処が難しいあらたなリスクの存在を指摘した。

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AIとWeb3.0は、利便性とリスクの双方を内包しながら、社会構造そのものを変えつつある。技術の進化が加速するなかで、人はどの立場を選び、どう生きるのか。その問いが改めて浮き彫りとなったセッションであった。

「Web3.0は後退していない」——川崎ひでとデジタル大臣政務官が語る日本のAI・ブロックチェーン戦略【Day1】

自民党所属の川崎ひでとデジタル大臣政務官は、日本におけるAI及びブロックチェーン戦略について語った。

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まず、高市政権へ移行したことに伴い、政府方針からWeb3.0がみられなくなったことについて触れ、「日本がWeb3.0に消極的になったのではないかという誤解が生まれている」と指摘。その上で、「単語自体が消えたことと、取り組みが後退したことはまったく別だ」と強調した。

政府の基本方針は、「人口減少下でも成長し、グローバルで競争できる日本」を実現することにある。そのためにはAIやブロックチェーンといった先端技術を“手段”として柔軟に活用していく必要があり、「特定の言葉に固執せず、実効性のある政策を進める」姿勢を示したと川崎氏は強く訴えた。

その具体的な取り組みとして、自民党ではあらたに2つのプロジェクトチームが立ち上げられている。1つは、AIとブロックチェーンを活用した未来の金融システムを構想する「次世代AIオンチェーン金融構想プロジェクトチーム」。もう1つは、その実現に向けた法制度の整備を担う「決済イノベーション推進プロジェクトチーム」である。

川崎氏は、日本が直面する課題として「制度の古さと整備の遅れ」をあげた。文化的な魅力や安全性を持ちながらも、法制度がイノベーションのスピードに追いついていない現状に強い危機感を示す。

こうした状況を打破するためには、「危機感」「未来ビジョン」「実行力」の3つを同時に推進する必要があるとし、今回のプロジェクトチームはそのための体制であると説明した。ビジョン策定と法改正を並行して進めることで、これまで課題とされてきた政策決定の遅さを克服していく狙いだ。

最後に川崎氏は、AIとブロックチェーンを掛け合わせたあらたな金融モデルを日本から発信していく意欲を示し、「この場に集まるプレイヤーとともに、日本発のイノベーションを加速させていきたい」と呼びかけ、講演を締めくくった。

暗号資産からAI、宇宙まで——堀江貴文氏×國光宏尚氏が語った多層的な論点【Day1】

堀江貴文氏と國光宏尚氏によるセッションは、モデレーター不在のフリートーク形式で進行し、暗号資産の黎明期から現在、そして未来までを横断する多角的な議論が展開された。

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まず、堀江氏は、ビットコイン黎明期に投げ銭のような形でBTCを受け取っていた経験や、イーサリアムのクラウドセールに参加していたことを明かした。

そのなかで特に印象的だったのは、初期に保有していたイーサリアムのウォレットにアクセスできなくなっていたエピソードである。ウォレットのパスワードや仕様上のバグが原因で長らく資産を引き出せない状態にあったが、近年になって売れるネット広告社グループの協力により復旧に成功した。これがきっかけとなり、「再びクリプトへの関心が高まった」と堀江氏は語った。

また、日本発のハードウェアウォレット「OpenLoop」にも言及。マルチシグや多通貨対応など高い機能性を備えた国産プロダクトとして紹介し、「日本にも十分な技術力がある」ことを示唆した。

このほか、ステーブルコインについては日本円建ステーブルコイン・JPYCに触れ、「円の価値を国際的に高める手段になり得る」と評価。グローバル市場におけるシェア獲得の可能性にも言及した。

さらに議論はWeb3.0による資金調達モデルへと広がる。堀江氏は、DAOやトークンを活用することで、宇宙通信インフラのような巨額プロジェクトにも資金が集まる可能性を示し、「技術はすでにあるが、日本に足りないのはスピード感と資金である」と指摘した。

加えて、日本の強みとして「言語の壁によって優秀な人材が国内にとどまっている」点をあげ、AIによる翻訳技術の進展がこの優位性をさらに強化する可能性があると語った。

その一方で、詐欺広告や誤情報の拡散といった課題にも触れ、AI時代における情報リテラシーの重要性を強調。改めて国産プロダクトへの期待を述べ、セッションを締めくくった。

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「日本円ステーブルコインがカギを握る」——オンチェーン金融時代における競争戦略と連携の重要性【Day2】

「オンチェーン金融の未来」をテーマに、Startale Group CEOの渡辺創太氏とSBI VCトレードの近藤智彦氏によるパネルディスカッションが行われた。セッションでは、日本円ステーブルコインを軸に、グローバル競争のなかでの日本の立ち位置と戦略が議論された。

まず渡辺氏は、オンチェーン金融の急速な進展と、その中心に位置するステーブルコインの重要性を強調する。米国では規制当局も積極的に関与し、金融のデジタル化は紙からオンライン、そしてオンチェーンへと不可逆的に進んでいると指摘した。

しかし現状、オンチェーン上の通貨の約90%は米ドル建てであり、ほか通貨の存在感は限定的である。そのなかで日本円をオンチェーンに取り込むことは、通貨価値の維持・向上のみならず、国際競争力の観点からも重要であるとした。実際、海外市場においても日本円ステーブルコインへの需要はすでに存在しているという。

これに対し近藤氏は、日本市場における実務的な観点から課題を提示した。オンチェーン金融の基盤となるステーブルコインにおいて、日本円建ての存在は不可欠であるが、制度上の制約が大きいと指摘する。

特に資金移動型や海外発行のステーブルコインには100万円の上限規制があり、実務上の障壁となっている。この制約を回避できる「信託型」ステーブルコインこそが、今後の金融プロダクトの基盤になるとの見方を示した。

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また、ステーブルコインの役割は決済にとどまらない。渡辺氏は、アセットマネジメント領域における活用可能性にも言及する。米国ではステーブルコインをバランスシートに計上可能とする動きが進み、金融機関による保有が拡大している。円資産をステーブルコイン化することで、送金やスワップの効率性が飛躍的に向上する点も重要である。

普及に向けた最大の課題としてあげられたのがUXである。従来のウォレットは秘密鍵管理などの複雑さが障壁となっていたが、アカウントアブストラクション(使いにくい口座ルールをプログラム可能なスマートコントラクトに置き換える技術)の進展により、Web2.0と同様のユーザー体験が実現しつつある。今後は証券・銀行・ウォレットを統合した「スーパーアプリ」が登場し、その中核にステーブルコインが組み込まれていくとの見通しが示された。

さらに議論は、トークン化市場とインフラ戦略へと展開する。渡辺氏は、株式やリアルアセットのトークン化は不可避であり、米国ではすでに国策レベルで進行していると指摘。日本もこの流れに乗り遅れることはできないと強調した。

こうしたなかでカギとなるのが「垂直統合」である。取引所、ウォレット、チェーン、ステーブルコインといった各レイヤーを統合することで、全体最適を実現する必要がある。すでにCoinbaseなどのプレイヤーが先行しており、単体事業者では競争が難しい局面に入っているとの認識を示した。

近藤氏も、SBIグループの強みとして複数ライセンスを活用した横断的なサービス展開をあげる。銀行・証券・信託といった機能を組み合わせることで、発行と流通の両面を担うことが可能であり、ここにStartaleの技術が加わることで競争力が高まるとした。

両者は、日本発でグローバル市場を狙うためには、単独ではなくパートナーシップが不可欠であるとの認識で一致する。渡辺氏は、SBIとの連携を「世界市場で戦うための基盤」と位置づけ、近藤氏もまたStartaleの技術力や海外展開力への期待を示した。

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一方で、SBIの持つ金融基盤と実行力も大きな強みであり、両者の補完関係が競争優位を生み出す構図が浮き彫りとなった。

オンチェーン金融の時代においては、技術単体ではなく、制度・インフラ・パートナーシップを含めた総合的な戦略が問われる。日本円ステーブルコインを起点とした取り組みが、グローバル市場における日本の存在感を左右する重要な要素となりつつある。

「AIとWeb3.0は分離して語れない」——塩崎彰久議員が語る次世代金融と政策の論点【Day2】

自民党の塩崎彰久衆議院議員は、AIとWeb3.0の融合が進むなかでの政策的な取り組みと、今後の金融のあり方について見解を示した。モデレーターはHashPortの吉田世博氏が務めた。

まず塩崎氏は、自民党内における政策議論の変化に言及する。これまでAI政策とWeb3.0政策は別々に扱われてきたが、実際には関与する議員が重複しており、分野としても急速に接近しているという。

特にAIがチャットボットから自律的に意思決定を行うエージェントへと進化するなかで、金融領域におけるWeb3.0との融合は不可避となっている。こうした背景から、「AI・web3小委員会」を設置し、両領域を一体的に議論する体制を整えたと説明した。

議論は、「EXPO 2025デジタルウォレット」の成果にも及んだ。吉田氏は、同プロジェクトが100万ダウンロードを達成した点について「キャズムを超えた」と評価する。三井住友銀行を中心としたコンソーシアムのもと次世代キャッシュレス決済をテーマに設計され、決済と行動データを統合することで体験価値を高めた点が特徴である。

また、SBT(ソウルバウンドトークン)を活用し、来場や体験ごとにデジタル証明を付与した結果、1,000万枚規模の発行につながった。ここから得られた示唆として、「ウォレットが普及しない理由は個別に解消可能であり、UXやガス代といった障壁を取り除けば利用は拡大する」との認識を示した。

一方で、課題としてあげられたのがステーブルコインの未実装である。吉田氏は、万博前にステーブルコインが導入されていれば、さらに大きな成果につながった可能性を指摘。実際に現在は飲食チェーンでの決済実証も始まっており、QRコードのみで導入できる手軽さや手数料削減効果から、普及のポテンシャルは高いとした。

これに対し塩崎氏は、米ドル建てステーブルコインの普及が日本の通貨主権に与える影響に言及する。利便性の高さからドル基盤が優位に立つ可能性がある一方、単純に規制で抑制するのではなく、モニタリングと制度設計によってバランスを取る必要があるとの認識を示した。

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さらに塩崎氏は、今後の政策設計において3つのパラダイムシフトが必要であると指摘する。

第1に「AIソブリン」であり、特定の企業や国家への過度な依存を避ける設計が求められる。そして第2に、「人間の役割の再定義」であり、AIが意思決定を担う時代において、人間がどこに責任を持つのかを明確にする必要がある。最後、第3に「信頼の設計」であり、規制のみならず技術的担保とユーザーリテラシーを含めた三位一体の構築が不可欠であるとした。

今後のビジネス機会については、バーティカルAI領域の成長性を強調する。特に日本固有のデータを持つ産業や規制の強い分野では独自サービスが生まれやすく、金融、医療、介護、行政、防衛などが有望領域としてあげられた。

最後に塩崎氏は、「Web3.0という言葉が不要になるほど技術が社会に浸透するべきだ」と述べ、すでにその段階に近づいているとの認識を示した。その上で重要なのは規制の強さではなく「規制の明確性」であると強調する。国の方向性が明確であれば、企業は安心して投資と開発を進めることができるためだ。

今後発表予定のAIホワイトペーパー2.0にも触れながら、日本としての戦略を明確に打ち出し、民間の取り組みと連動させていく必要性を訴えた。AIとWeb3.0が交差する次世代金融の構築に向け、官民連携の重要性があらためて示された。

「オンチェーン金融は誰のものになるのか」——制度・UX・リスクの壁を越えるための論点【Day2】

UPBOND代表の水岡駿氏をモデレーターに迎え、オンチェーン金融の現状と今後の展望について議論が行われた。登壇したのは、eoleの瀧野諭吾氏、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)の朏仁雄氏、Slash Vision Labsの佐藤伸介氏である。

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セッションでは、インスティテューショナル領域からコンシューマー領域へと広がるオンチェーン金融の可能性と課題が多角的に議論された。

まず論点となったのは、既存金融のオンチェーン化の現状である。朏氏は、証券領域におけるブロックチェーン活用は依然としてプライベートチェーンが中心であると指摘する。マネーロンダリング対策や税務処理、配当管理といった課題が存在するため、パブリックチェーンへの移行は限定的にとどまっているという。

一方で、不動産や社債といったアセットのトークン化は着実に進んでおり、市場規模も拡大している。特に証券会社間の決済にステーブルコインを活用することで、効率化が進む可能性があるとした。ただし、一般ユーザーが直接参加するフェーズにはまだ至っていないとの見方を示した。

グローバルの動向としては、BlackRockのトークン化MMF「BUIDL」が象徴的な事例としてあげられた。米国債を裏付けとし、パブリックチェーン上で発行される同プロダクトは、DeFiとの接続性を持ち、資金流入を加速させている。暗号資産からステーブルコイン、MMF、さらにトークン化株式へと資産を移動させる一連の流れは、すでに海外では一般化しつつある。日本との差は依然として大きいものの、この潮流自体は不可逆であるとの認識が共有された。

こうしたなかで焦点となるのが、「オンチェーン金融は一般ユーザーに開かれるのか」という点である。瀧野氏は、日本における遅れの要因として、個人が高度な金融運用を行うハードルの高さを指摘する。リスクや制度を理解しながら最適な判断を行うことは容易ではなく、その解決策としてAIエージェントによる運用最適化を提案した。

同氏が展開するレンディング事業では、ビットコインを対象に年率8%程度のリターンを提供しており、約50億円規模の資産を運用している。複数の資産を組み合わせた運用を裏側で行うことで、ユーザーは意識せずとも高度な金融サービスの恩恵を受けられる設計となっている。今後は未上場企業への投資機会をトークン化し、一般投資家にも開放する構想も示された。

一方、コンシューマーへの普及という観点では、決済領域からのアプローチが重要であると佐藤氏は指摘する。現状、日本ではステーブルコインの認知が低く、自分には関係ないものと捉えられている。これを打破するため、同氏はクレジットカードという日常的なインターフェースを通じて、ステーブルコインを一般化する戦略を取っている。

また、USDCを採用する理由については、「既存の円決済との差別化」にあると説明する。すでに国内ではキャッシュレス決済が普及しているなかで、あたらしい価値を提供するには外貨利用といった従来にない体験が必要であるとした。将来的には複数通貨を自由に選択できる環境の実現を見据えている。

リスクに関する議論も重要な論点となった。朏氏は、証券業界とDeFiの間には投資家保護に対する考え方に大きな差があると指摘する。証券市場では厳格な規制と補償制度が整備されている一方、DeFiでは流動性リスクやスマートコントラクトリスクが存在する。オンチェーン金融を広く普及させるためには、これらのリスクを適切に説明し、健全な商品設計を行うことが不可欠であると強調した。 

セッションの最後には、各登壇者が一般ユーザーにもたらされる変化について言及した。佐藤氏は、ステーブルコインを「当たり前に使えるもの」にすることを目標に掲げ、運用と決済の融合を目指すと述べた。朏氏は、リスクと可能性の両面を踏まえながら、誰もが恩恵を受けられる仕組みの構築の必要性を強調する。瀧野氏は、AIとブロックチェーンによって情報格差や資産運用格差が縮小し、ユーザーが意識せずとも恩恵を享受できる社会の実現に言及した。

水岡氏は総括として、「技術はすでに整っている」としながらも、今後は規制やリスク管理と向きあいながら一般ユーザーへの価値提供を進めていく段階に入っていると指摘した。オンチェーン金融が真に社会実装されるかどうかは、制度・UX・信頼の設計にかかっていることがあらためて浮き彫りとなった。

「税制とスピードで競争力を取り戻す」——玉木雄一郎代表が語るWeb3.0政策と日本再成長戦略【Day2】

国民民主党代表の玉木雄一郎氏は、日本におけるWeb3.0及び暗号資産政策の現状と今後の方向性について言及した。これまで同党は、Web3.0関連ビジネスを政策面から支援してきた経緯があり、同氏も継続的に業界との連携を図ってきたという。

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まず玉木氏は、現在の環境について非常にエキサイティングな時代であると位置づけた。米国では関連法整備が進み、クラリティ法も重要な局面を迎えている。一方、日本でも暗号資産の売却益に対する課税が見直され、従来の最大55%から、株式などと同様の20%分離課税へと移行する方針が示された。

しかし、日本の競争力は過去と比較して大きく低下している。2017年にはビットコイン取引の約半分が日本で行われていたが、現在では数%にとどまる。その背景には、高い税率と複雑な税制、そしてETFの未整備といった制度的課題があったと指摘する。こうした状況を改善するため、同氏は与党とも連携しながら法整備を進めていると説明した。

一方で、最大の課題としてあげたのが「政策実行の遅さ」である。仮に2026年に法改正が成立しても、実際の適用は2028年になる見通しであり、このスピードでは国際競争に対応できないと強調した。

本来であれば2027年からの適用も可能であり、制度の前倒しが必要だと訴える。あわせて、ETFの解禁やレバレッジ規制の見直しについても言及し、現在2倍に制限されている個人レバレッジを10倍程度まで引き上げるなど、ビジネス環境の改善を進める必要性を示した。

また、認知面の課題として「暗号資産」という名称にも言及する。現状の呼称にはネガティブな印象が残っているとして、「デジタルアセット」への名称変更を提案。より広い社会受容を促すべきとの考えを示した。

中長期的な視点では、「金融のオンチェーン化」が不可避の潮流であると指摘する。インターネットによって取引がオンライン化したように、今後は金融そのものがブロックチェーン上に移行していくとし、Hyperliquidのような少人数で高収益を生み出す事例をあげながら、あたらしい市場の可能性に言及した。

玉木氏はこれまで東京証券取引所の株式会社化やPTS導入にかかわってきた経験にも触れ、「市場の効率化とデジタル化は今後さらに重要になる」と指摘。オンチェーン化によって証券会社や銀行の役割そのものが変化し、市場構造の再編につながる可能性があるとの認識を示した。

こうした変化に対しては、リスクではなく「成長機会」として捉えるべきだと強調する。現在、日本では暗号資産口座数が1,300万を超え、約10人に1人が保有する規模に達している。今後は不動産やエネルギーなどのリアルアセットもトークン化され、巨大市場へと発展する可能性があると分析した。

重要なのは、これらの動きを規制によって抑制するのではなく、適切に後押しすることである。日本の政策は後追いになりがちだとしつつも、「未来を先取りし、先手でルールを作る」姿勢の必要性を訴えた。 

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また、新技術に伴うリスクについても言及。イーロン・マスク氏の発言を引き合いに、「一定のリスクがあっても、全体としてメリットが大きいのであれば導入すべき」との立場を示した。日本では小さなリスクでも導入が止まりやすいが、それでは成長は実現できないと指摘する。

最後に、同党の特徴として意思決定の速さと柔軟性をあげ、新分野への積極的な対応を進めていく姿勢を強調した。あわせて、現役世代・若年層を重視する政策にも触れ、「未来を担う世代への投資が日本の成長につながる」と述べた。

Web3.0及び暗号資産分野については、海外に流出していた人材やビジネスが国内に回帰すれば、税率引き下げが結果的に税収増につながる可能性もあると指摘。若い世代の挑戦を後押しすることで、日本経済の再成長を実現したいと締めくくった。

日本の産業構造はあらたな局面に

クロージングでは、株式会社TEAMZのCEOであるTianyu Yang氏が登壇。「TEAMZ WEB3/AI SUMMIT 2026」で得たつながりなどを有意義に活かしてもらいたいというメッセージを発信するとともに、次回開催に関するアナウンスを行った。次回は2027年4月6日、7日にわたって、今回と同様に八芳園にて開催される予定だ。

Tianyu Yang image

「TEAMZ WEB3/AI SUMMIT 2026」は、伝統と最先端技術が融合する八芳園を舞台に、Web3.0とAIが社会インフラとして実用フェーズに入ったことを強く印象付けた。

政府の政策提言から機関投資家の動向、各事業者の新発表まで、多角的な議論を通じて技術の本質が浮き彫りとなり、AIを「頭脳」、ブロックチェーンを「内臓」とする比喩に象徴されるように、ステーブルコインや証券決済、貿易金融など国内の実装は加速している。

本イベントは、技術革新が日本の産業構造を根底からアップデートするあらたな局面を迎えたことを示したといえる。

画像:Iolite

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