JETRO×Asia Web3 Alliance Japanが示した「日本発Web3.0の次章」 Web3 Salon年末交流会イベントレポート

2026/02/12 11:30
Iolite 編集部
文:Shogo Kurobe
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JETRO×Asia Web3 Alliance Japanが示した「日本発Web3.0の次章」 Web3 Salon年末交流会イベントレポート

2025年の振り返りと2026年に向けたビジョンを共有

12月19日、Web3 Salon主催のもと、多くの起業家や投資家などが集まった年末交流会がJETRO東京本部にて開催された。このイベントは完全招待制で、2025年の振り返りと2026年に向けたビジョンが語られた。

この記事では、当日語られた内容や会場の様子をまとめていく。

Web3 Salonとは?

Web3 Salon image

Web3 Salonは、一般社団法人Asia Web3 Alliance Japan(AWAJ)がジェトロ(日本貿易振興機構)と連携して推進する戦略的な取り組みで、Web3.0エコシステムにおけるイノベーションの促進や投資機会の創出、グローバルなパートナーシップの強化を目的としている。また、ジェトロの支援のもと、世界中のVCを招待し、日本のWeb3.0スタートアップの成長と国際展開の支援を行う。

Web3 SalonではWeb3.0スタートアップ、ベンチャーキャピタリスト、機関投資家をつなげることでイノベーションやコラボレーションを加速させることで、日本のブロックチェーン及びWeb3.0分野での地位向上に寄与することをミッションとしている。取り組みを通じて志を同じくするイノベーターが集い、グローバルな連携やあらたなアイデアの創出、分散型イノベーションの未来を切り拓くための架け橋として、機能することを目指している。

公式サイトはこちら

Asia Web3 Alliance Japan(AWAJ)とは?

Asia Web3 Alliance Japan image

Asia Web3 Alliance Japanは、アジア全域から260以上の企業や個人が参加する団体で、国際的なビジネス機会と日本市場(政府及び企業セクターを含む)との懸け橋となることを目指す団体。アジア及び日本でのWeb3.0業界の協力、成長、革新を促進し、戦略的なパートナーシップの機会を提供するとともに、市場参入支援やWeb3.0業界の規制及び教育に関する活動を行っている。

また、会社設立、ビジネス成長、国境を越えたシナジーに焦点を当て、規制に対する洞察と文化的理解を提供する。さらに、アジアと日本でのWeb3.0企業の利益を念頭に置き、市場拡大のためのカスタマイズされたソリューションの提供も行う。

公式サイトはこちら

JETROが行う“三本柱”によるスタートアップ支援

開会にあたり、JETROスタートアップ支援を担当する鈴木絵理香氏より挨拶が行われた。

Web3 Salon 1

JETROがWeb3 Salonを継続的に開催する背景には、Web3.0領域におけるスタートアップ同士、あるいは投資家・事業会社との横断的な情報共有の必要性があるという問題意識があるという。

特にJETROのスタートアップ支援は、「グローバルアクセラレーションハブを中心とした個別メンタリング」ネットワーク紹介「分野別・地域別に設計されたアクセラレーションプログラム」「海外展示会やカンファレンスを通じたブランディング・ネットワーク支援」の三本柱で構成される。Web3.0領域に限らず、AIやディープテックなど幅広い分野を対象としながらも、「スタートアップドリブンな日本のエコシステム構築」を中核的な目的としている点が強調された。

Web3 SalonとAWAJがはたしてきた役割

続いて、Asia Web3 Alliance Japan及びWeb3 Salonの取り組みについて、代表のヒンザ・アシフ(Hinza Asif)氏が語った。

Web3 Salon 2

Web3 Salonは2025年より本格始動したWeb3.0スタートアップの成長と国際展開の支援を行う取り組みであり、Web3.0スタートアップと投資家、パートナー企業を結び付ける場として機能してきた。

2025年の取り組みとして、まずシンガポールにて開催された「TOKEN2049」において初の試みとなる「Japan Hub」と称したパビリオンについて紹介。また、Rippleとのパートナーシップ締結や、自身が公私にわたって取り組んできた成果などを赤裸々に語った。

なかでも印象的だったのは、「成功だけでなく失敗も共有する」という姿勢だ。海外アクセラレーターへの不採択や、想定通りに進まなかった国際展開など、リアルな失敗談が語られた上で、それでも挑戦を続ける意義が強調された。こうした姿勢からは、成功のみではなく、失敗も糧にしながらあらたな領域での挑戦を拡大させていくWeb3 Salonの真摯な姿が垣間見えた。

シンガポールとUAEの実像——4名のプレイヤーが語った現在地

イベント中盤では、海外展開をテーマとしたスタートアップパネルが実施された。登壇したのは、GOLFINの小松賢氏、MEC Laboの吉目木淳司氏、Laplaceの廣田裕介氏、ANDLAWのGOKI KATO氏の4名。実際にシンガポールやUAEで事業展開を進めてきたスタートアップの代表者たちである。

議論では、シンガポールが依然として情報と人材が集積するハブである一方、Web3.0・暗号資産領域では規制面での慎重姿勢が強まっている点が共有された。

一方、UAEについては、規制当局と対話しながら新たな金融ルールを共創できる余地があり、RWA(リアルワールドアセット)やDeFi分野において実証を進めやすい環境が整いつつあるという声が目立った。

Web3 Salon 3

各登壇者の発言にも印象深いものがあった。GOLFINの小松氏は、シンガポールにおけるTOKEN2049に関連した取り組みとして、ゴルフトーナメントを現地で開催した経験を紹介した。会員権が1億円規模ともいわれるゴルフ場を1日貸し切り、参加費を無料にするという大胆な施策は、短期的には大きなコスト負担となった。

しかし結果として、シンガポールを起点に英国や中東へとネットワークが連鎖的に広がり、日本帰国後には「なぜそんな場所を貸し切れたのか」というストーリー自体がフックとなり、逆に出資や事業提携のきっかけにつながったという。

小松氏は「海外ではプロダクトの説明以前に、相手の記憶に残る体験を設計できるかが重要だ」と述べ、イベント=コストではなく、ブランディング投資として捉える視点の重要性を強調した。

さらに、MEC Laboの吉目木氏は、今回のシンガポール渡航の目的を「資金調達ではなく、ブランディングと検証」と位置付けていたようだ。

TOKEN2049を含む大型イベントには、Web3.0関係者に限らず、エンタメ、投資、ファミリーオフィスなど多様な層が集まる。そうした環境のなかで、自社のデザイン力や制作力を直接みせ、率直なフィードバックを得られたことが最大の収穫だったと振り返る。帰国後にはLinkedInを徹底的に整備し、英語での発信を強化した結果、TOKEN2049での取り組みをきっかけとしたミーティングを週1回程度の頻度で行うに至ったという。

また、吉目木氏は「海外に行く前と後では、同じ自己紹介でも相手の反応がまったく違う」と述べ、露出実績が信頼の初期値を引き上げる効果を指摘した。

RWAを手がけるLaplaceの廣田氏は、UAEでの資金調達とマーケットディスカバリーの難易度について言及した。UAEのVCは、日本以上にグローバル水準のリターンを厳しく求める傾向があり、「100社に投資して1社が数百倍になる」ことを前提に選別している。

そのため、ピッチでは技術的な優位性以上に、「なぜこのプロジェクトが将来スケールするのか」「なぜその舞台がUAEである必要があるのか」を、数分で説明する必要があるという。

一方で、UAE特有の特徴として、「ドバイへの還元」を明確に語れるプロジェクトは評価されやすい点もあげられた。Laplaceでは、現地の規制当局にも積極的にロビーイングを実施しており、当局にスタートアップのリクエストや規制整備に働きかけをしている。世界中の不動産をソーシングし、UAEの成長戦略に貢献できる点をユニークなポイントとして提示した。

最後に、ANDLAWのGOKI氏は、シンガポールとUAEを比較する視点として、「人・金・物・情報・規制」という5要素で市場を分解する考え方を紹介した。採用は東南アジア、資金はUAEやシンガポール、情報はグローバルイベントで取得するなど、1ヵ国にすべてを求めない戦略が重要だという。

特に強調されたのが、UAEにおける規制当局との距離感である。DeFiや金融領域において、既存ルールに従うだけでなく、規制当局と対話しながらあたらしい枠組みを共創できる余地がある点は、日本との大きな違いだと語られた。

「海外で成功するには、英語力や表層的なグローバル感覚よりも、その土地の文化や宗教、法制度をどこまで理解できるかが問われる」

特にこの言葉は、会場の多くの参加者にとって印象深いメッセージとなった。

Web3 Salon 4

このセッションでは、資金調達の難易度や、投資家が求めるリターン水準の違いなど、グローバル市場ならではの現実も率直に語られた形だ。「なぜその国なのか」「その国にどのような価値を還元できるのか」という問いに明確に答えられなければ、資金もパートナーも得られない。海外展開の華やかな側面だけでなく、地に足の着いた戦略設計の重要性が浮き彫りになった。

暗号資産レンディングサービス「BitLending」プレゼンテーション

イベント後半では、Iolite及び暗号資産レンディングサービス「BitLending」を提供するJ-CAMよりプレゼンテーションが行われた。BitLendingは暗号資産を預けることで利回りを得られる運用サービスであり、Fireblocksを活用したセキュリティ体制などが紹介された。

Web3 Salon 5

新プログラム発表:金融インフラとしてのWeb3.0へ

最終盤では今後の取り組みとして「Japan Financial Infrastructure Innovation Program」が発表された。本プログラムは、DeFi及びFinTech領域において、規制対応を前提としたWeb3.0プロジェクトを日本発で創出することを目的とする数ヵ月規模のイノベーションプログラムである。

特徴的なのは、資金提供やメンタリングにとどまらず、規制当局、金融機関、事業会社、技術パートナー、専門家を巻き込んだ「エコシステム型」の設計である。Rippleを始め、トヨタ・ブロックチェーン・ラボ、SMBC日興証券、セキュリタイズなどがパートナーとして参画し、参加スタートアップはRippleメインネット上でのプロトタイプ開発に取り組む。

Web3 Salon 6

重点領域として掲げられたのは、ステーブルコイン、次世代決済、RWAトークン化、貿易金融、デジタル資産を活用した信用創出の5分野だ。いずれも、日本のWeb3.0業界において「可能性は大きいが、実装が進みにくい」とされてきた領域であり、規制と技術の接点を実証する意義は大きいといえるだろう。

日本のWeb3.0は“共創”のフェーズへ

セッション終了後にはネットワーキングが行われ、終了間際まで質の高いコミュニケーションが図られていた印象だ。

Web3 Salonによる年末交流会は単なる交流会ではなく、日本のWeb3.0が次のフェーズに進むための方向性を示す場であった。

海外市場への挑戦と同時に、日本国内で規制と向き合いながら金融インフラを再構築していく。その両輪を回すためには、スタートアップ単独ではなく、官民・国内外を横断した共創が不可欠である。

2025年は「挑戦と試行錯誤の年」だったとすれば、2026年は「実装と連携の年」になる可能性がある。Web3 Salonを起点に広がるこれらの動きは、日本発Web3.0が「構想フェーズ」から「実装フェーズ」へ進むための1つの現実解になり得る。議論にとどまらず、どこまで具体的なプロジェクトと事業創出につながるのか。その行方を引き続き注目だ。

画像:Iolite(Shogo Kurobe)

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