金融緩和は依然として大きな影響力を持つが、ビットコインひいては暗号資産市場のカギを握っているのは、マイナーではなく、世界最大のビットコイントレジャリー企業、米ストラテジーのバランスシートなのかもしれない。

JPモルガンのレポートによれば、足元のビットコイン下落要因として大きく2点をあげられるという。1つ目はビットコインネットワークのハッシュレートとマイニング難易度の低下。2つ目が、最大保有企業ストラテジーに関する動向である。
中国が民間マイニング禁止をあらためて強調したことに加え、世界的な電力コスト上昇が重なり、高コストのマイナーが撤退する状況が続いている。中国は依然として世界ハッシュレートの一定割合を占めるが、規制強化と「地下マイニング」が綱引きを続ける構図だ。
結果としてマイニング難易度は一時的に低下し、採掘コストは90,000ドル程度まで下がったと推計される。ビットコインの採掘に必要なコストが価格の下限として機能しやすい値、俗にいう「コストフロア」としてみられる。
しかし、同レポートがより重視しているのはマイナーではなく、ストラテジーの財務耐性であった。ストラテジーの企業価値対ビットコイン保有比率(mNAV)は急落後も1倍強を維持しており、企業価値が保有BTCを上回っている水準で推移している。
この比率が1を割り込めば「ビットコインを売らずに株を買った方が合理的」という市場の論理に転じ、企業の資金調達環境は一気に悪化する。そのため同社は、配当と利払い向けに140億ドル規模のドル準備金を積み増し、最大2年分のキャッシュアウトに耐えられる構造を整えた。
一方で、株式指数プロバイダー(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)がストラテジーのような「デジタル資産トレジャリー企業」を指数から除外するかどうかの協議を進めており、これが市場不安を広げている。
こうした状況を総合し、JPモルガンは「mNAVが1以上を維持し、ストラテジーがビットコイン売却を回避できれば、今回の下落局面は峠を越えた可能性がある」と結論づけた。つまり、足元のビットコイン価格の短期動向は、マイナーよりもストラテジーの財務耐性に左右されているという分析であった。