7月13日・14日に開催されたWebX2026の「Web3サロン - AWAJセッション」にて、カルダノ(Cardano)財団のCEO(最高経営責任者)であるフレデリック・グレゴール氏が、パブリック・インフラとしてのブロックチェーンの重要性を説くとともに、日本市場への実効的な提言を語った。
PwCでデジタル金融サービス部門の責任者を務め、スイスのサクソバンクで機関投資家向けビジネスを統括した経歴を持つグレゴール氏。現在は、カルダノの「デジタル信頼インフラ」の普及を目的としたスイス拠点の非営利組織で、100名を超えるチームを率いている。
彼が強調するように、このエンタープライズグレードのプラットフォームは「大阪生まれ」だ。アジア最大級のWeb3.0カンファレンス「WebX」の傍らで、同財団の長期的なビジョン、カルダノ独自の「デジタル国家」ガバナンス、そしてなぜ「暗号資産(仮想通貨)」と「ブロックチェーン」をわけて議論すべきなのかについて話を聞いた。
ヒンザ・アシフ(以下、ヒンザ): グレゴールさんは銀行や監査業界のご出身ですが、何がきっかけでブロックチェーンの世界に惹かれたのでしょうか?
フレデリック・グレゴール(以下、グレゴール): 人類を根本から変え得る、歴史を定義するような技術に携われる機会は極めて稀です。ビットコインの登場により、これまでとは異なる金融市場インフラの可能性がみえました。
さらに重要なのは、銀行や医療といった私たちが当然のように享受しているサービスにアクセスできない人々、あるいは恵まれない地域に生まれた人々にも届く「あらたな信頼のアーキテクチャ」を構築できる点です。PwC時代、私は世界で最も優秀な弁護士や監査人と仕事をしていました。彼らこそが、あたらしい技術が「標準」となるタイミングを見極めるリスク緩和フレームワークを担っていたのです。

ヒンザ: カルダノ財団は、同じエコシステム内のEMURGOとどのように異なるのでしょうか?
グレゴール: 共同創業者のチャールズ・ホスキンソン、ジェレミー・ウッド、児玉健の3名によってカルダノが設立された際、まず2つの営利企業が迅速に設立されました。その後、より長期的な視点での普及を担う非営利組織としてカルダノ財団が作られたのです。3ヵ月や6ヵ月といった短期ではなく、10年単位のタイムスパンで考える姿勢は、日本の価値観にも非常に馴染むものでしょう。
当財団はスイス法に準拠した独立した理事会を持つ独立機関であり、EMURGOやIOGの指揮下にいるわけではありません。私たちは収益センターではなく、ブロックチェーンへの「奉仕機関」として機能しています。
WebXのようなカンファレンスを賑わせる「トークンを取り巻く狂乱」のなかで、グレゴール氏の主張は驚くほど現実的で質実剛健だ。監査証跡、身元確認の標準化、そして「十年単位」で刻まれる時間軸。ロンドン証券取引所における再保険ファンドから、オンチェーンでの政府監査に至るまで、すべてが一貫した糸でつながっている。これこそが、財団が自らを「価格上昇を狙う株主」ではなく「ブロックチェーンへの奉仕機関」と呼ぶ理由だ。
グレゴール氏が日本に残した最後の問いかけは、今回のインタビューを象徴するものであった。「暗号資産」と「ブロックチェーン」を別々の部屋にわけること。そうすれば、日本の慎重なスタンスは「躊躇」ではなく、大きな「アドバンテージ」へと姿を変えるかもしれない。
画像:Asia Web3 Alliance Japan(AWAJ)