米国議会で、やや奇妙な法案が可決された。住宅供給改革を目的とする「21st Century ROAD to Housing Act」である。表向きは住宅政策だが、そのなかに中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行禁止条項が盛り込まれていた。しかも内容は、米連邦準備制度によるCBDC発行を2030年末まで禁止するというものだ。
一見すると住宅政策と金融政策は無関係に思える。しかしこの条項は、現在の米国の金融覇権、暗号資産政策、そしてトランプ政権の思想を読み解く上で重要な意味を持つ。なぜCBDCは住宅法案に潜り込んだのか。そしてトランプ政権はなぜCBDCに反対しているのか。その背景を整理してみたい。
今回の住宅改革法案は、米国における住宅供給不足の改善を目的としたものである。住宅建設の規制緩和や供給促進などが柱であり、本来は金融制度とは直接関係がない。しかし、この法案にCBDC発行を2030年まで禁止する条項が追加された理由は、CBDC単独の法案では政治的対立が強く、成立が難しいからだとされている。
米国議会では、政治的に対立の大きい政策をほかの重要法案に付随させる「ライダー条項」として成立させる戦術がしばしば用いられる。住宅政策は有権者の関心が高く、超党派の支持を得やすいテーマのようだ。そこで、停滞していた反CBDC政策を住宅法案に組み込み、成立の可能性を高めたとみられている。言い換えれば、住宅供給という国民的課題の裏で、議会は『反CBDC』というトロイの木馬を金融政策の中心地へと滑り込ませたともいえる。