現代の安全保障を巡る構造は、かつてないパラダイムシフトを迎えている。
かつてインターネットやGPS(全地球測位システム)がそうであったように、軍事技術が民間へと転用される「スピンオフ」の時代は終わった。現在起きているのは、巨額の民間資本と自由競争によって急進化したAI(人工知能)や先端半導体などの民間技術が、国家安全保障領域へと逆流する、いわば「スピンオン」の構造変化である。
米国では、Palantir Technologies(パランティア・テクノロジーズ)やAnduril Industries(アンドゥリル・インダストリーズ)といった新興の防衛テックスタートアップが、数兆円規模の包括契約を国防総省と締結し、従来の重厚長大なレガシー軍需産業の牙城を崩しつつある。欧州でも、AI戦域解析に特化したHelsing(ヘルシング)が、評価額180億ドル(約2.8兆円)に達する最終段階にあると報じられた。
この地殻変動は日本も例外ではない。日本政府は2026年「第7期科学技術・イノベーション基本計画」を閣議決定し、公式に軍民デュアルユース研究の推進へと舵を切った。その経済安全保障の中枢を担う国策半導体ファウンドリ、Rapidus(ラピダス)が、北海道千歳市の地で2nm(ナノメートル)世代の試作動作検証に成功し、あらたに17億ドル──日本円にして約2,676億円規模にのぼる大規模な追加資金調達を完了させたというニュースは、まさにあらたな時代の胎動を予感させるに十分なインパクトを持っている。