クラリティ法案の停滞が映す、市場ルールと倫理の境界線

2026/07/04 10:00
八木 紀彰
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クラリティ法案の停滞が映す、市場ルールと倫理の境界線

権力とデジタル資産の利益相反

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表向きは「中国との技術覇権争い」という壮大な地政学的ナラティブが語られる一方で、その裏側では政治とテクノロジーが交差し、未曾有の富が瞬時に移動している。

トランプ大統領の2025年度、年次資産開示報告書により、大統領一家が暗号資産プラットフォーム「World Liberty Financial(WLF)」やミームコインを通じて約12億ドルから14億ドルの収益を得ていることが明らかになった。この巨額の利益相反疑惑は、米国市場の構造を決定づけるはずだった包括的規制案「クラリティ法案(CLARITY Act)」の議会通過を暗礁に乗り上げさせている。

民主党側は公職者の暗号資産収益を禁じる「暗号資産腐敗(汚職)防止法案(COIN Act)」を突きつけて一切の妥協を拒否している状況だ。

この「権力とテクノロジーの摩擦」がもたらした、国家レベルのルール機能不全をどのように解釈すべきか。

1989年に制定された連邦利益相反法の改正(18 U.S.C. § 208)は、大統領の決定が経済全体に及ぶという理由から、大統領を適用除外としてきた。当時の立法者が想定していたのは、不動産や伝統的な株式といった資産だ。しかし現代においては、国家元首の政策スタンス1つで時価総額が数十億ドル変動し、数時間で現金化可能なデジタル資産が存在する。不動産からプログラム可能なトークンへと価値とリスクが再配置された結果、1989年の法律の「精神」は完全に空洞化してしまったのである。

ここで注目すべきは、大統領側がこの事態を「国家安全保障」や「中国との技術覇権争い」という二項対立の枠組みにすり替えてみえる点だ。デジタル資産を単なる金融商品から「戦略的インフラ」へと再定義することで、利益相反の指摘を「国益を損なう攻撃」として封じ込めるこの論法は、政治的にかなり複雑な事情を感じる。

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