
「Web3.0×京都」古都としてではなくWeb3.0事業支援のトップランナーとして注目
激減した観光収入、借金問題など逆境のなかで推進するWeb3.0事業支援サポートが注目されている京都の今
京都府は現在3つの課題を抱えているといわれている。その3つとは人口の減少、借金、観光収入の激減だ。
右肩下がりで減少している人口や今後5年間で2,800億円の財源不足が生じるともいわれている借金返済問題も重要な課題だが、借金返済問題にも直結することから、喫緊の課題なのはコロナ禍で激減した観光収入といえる。
実のところ、京都府の観光収入はコロナ禍以前、国内外を含む年間観光客数が5,600万人を超えていた2015年をピークに、2018年は5,275万人と緩やかに減少傾向にあった。2019年はやや盛り返し5,352万人だったものの、コロナ禍に見舞われた2020年はインバウンド消失のほか、安定収入源になっていた修学旅行も激減という惨状で統計さえ集計できない状況となってしまっていた。
そうした状況下で京都府は府民誰もがデジタル技術の恩恵を受けられる社会を目指す「京都府スマート社会推進計画」を打ち出し、現状打開の施策としている。京都府の報告によると、その具体的な施策は以下の通りとなっている。
- 行政のデジタル化の推進
- マイナンバーカードの普及等の促進
- スマート防災の推進
- スマート農林水産業の推進
- オープンデータの推進
- スマートシティの推進
- デジタル人材の育成
- 新産業の担い手となるスタートアップ企業の支援
- デジタルデバイド対策の推進
- WITHコロナ・POSTコロナ社会を見据えたデジタル活用支援」
また、京都府における事業再構築補助金の申請対象に「ブロックチェーン」「NFT」「マイニング」といったIT技術や事業も対象となっており、そういった事業を支援する方針となっている。こちらも具体的な採択事例は以下の通り。
- プロスポーツ業界に対するNFT技術を活用したプラットフォーム
- Web3.0を活用した自社伝統工芸品のIP事業創出
- Webに特化して京都の工芸美術をブランディングし海外向けECサイトでブロックチェーン証明をつけた京都工芸美術品の販売事業
- 昭和初期京友禅デザインのNFT販売
このように現在、京都府では最重要課題の打開策としてWeb3.0事業のサポートや支援に注力しており、実際に各企業・団体もそういった支援やサポートのもと、魅力的なWeb3.0事業を推進している。
京都府の重要な観光資源でもある寺社仏閣においても「デジタル賽銭」(東本願寺)、「デジタル福引き」(山科聖天双林院)、「デジタル授与所」(下鴨神社)といった施策を打っており、特に山科聖天双林院のデジタル福引きは東京都のWeb3.0スタートアップ企業であるSUSHI TOP MARKETINGが京都府と山科聖天双林院の協力のもと、京都府が進めるメタバース共創プロジェクトの一環として、デジタル技術であるNFTを活用した観光とデジタル福引きを融合させたイベントを京都タワーで実施した。
そのほか、京都府ではバーチャル空間において、アバターで就職活動ができる新感覚イベント「バーチャル京都ジョブ博」やサイバーセキュリティにかかるオンラインセミナー、バーチャル空間での展示会など、多くのイベントをオンラインやハイブリッド(対面とオンラインの併用)で実施している。
また、京都府宮津市ではふるさと納税の返礼品NFTを採用。国内最大級のNFTプロジェクト「CryptoNinja Partners」とNFTによる地方創生を推進する株式会社あるやうむとのコラボ返礼品「ふるさとCNP」を2月26日に提供開始。222種類の一点ものNFTを寄付金額30,000円で用意し、あるやうむ独自のポータルサイト「ふるさと納税NFT β版」上で提供している。
暗号資産を必要としない日本円での寄付によりNFT及びCNPをカジュアルに体験しつつ、宮津市の魅力を満喫できる仕掛けを進めている。
CryptoNinja Partnersはそのほかにも、京都府宇治市の宇治橋通り商店街、及びその周辺エリアに、9点のデジタルアートを配置するイベントを行った。
京都府宇治市公認のご当地ゆるキャラ「チャチャ王国のおうじちゃま」「ちはや姫」「星乃パン太郎」のキャラクターや、商店街のアイテムを3Dデータ化し、商店街の各所にデジタルトロフィーとして設置、「Continuum.Social(https://www.continuum.social/)」のアプリ「サイバートロフィー」を使うと、ARで表示されたデジタルスーベニアをアプリ内に獲得することができる。獲得したデジタルスーベニアは将来NFTアートに変換されるというものだった。
紫雲山大泉寺ではブロックチェーンを活用したあらたな参拝証明の形「アート御朱印NFT」を開始した。かつて御朱印は和紙で作られた御朱印帳に達筆な文字と寺社の名の入った朱色の印を押してもらうものだったが、今では参拝記念であったり、さまざまな形に変化している。
「アート御朱印」はそのなかでも先鋭的なもので、みた目も昔ながらの文字だけの物ではなく切り絵や水墨語、消しゴム判子、デジタルで描かれた物、エアブラシを使った物なども増えており、あらたな仏教美術の世界を形成し始めている。
そうしたアート御朱印とNFTをハイブリットしたのがアート御朱印NFTだ。アート御朱印NFTは世界で最もNFTアートを扱うプラットフォームの1つ「OpenSea」にて公開されている。
そのほか、学生の多い街としても知られる京都市において、Web3.0の仕組みを活用することで、アートと融合したクリエイティブな街づくりのエコシステム構築するアイデアとして企画された「NEO KYOTO NFT ARTs」というイベントが開催されたほか、株式会社ONDが「関西と京都からWeb3を盛り上げる」を目的に企画したNFTホルダー限定の隠れ家バー「BAR KRYPTO」を企画するなど、京都府では府が現状の課題の解決策として大々的にWeb3.0事業の支援やサポートなどに注力している。
そうした状況から京都府は地方自治体によるWeb3.0事業支援のトップランナーとして今注目の自治体といえるだろう。
京都のWeb3.0事業
【アート御朱印NFT】
京都室町の紫雲山大泉寺では2021年12月14日に世界で最もNFTアートを扱うプラットフォームの1つ「OpenSea」にてアート御朱印NFTを公開した。アート御朱印とは切り絵や水墨語、消しゴム判子などで製作する御朱印で、あらたな仏教美術の世界を形成し始めている。
導入している企業・団体→『紫雲山大泉寺』
100名以上の申し込みあり
【デジタル賽銭】
京都府東本願寺は2020年10月12日より参拝者が納める賽銭としてキャッシュレス決済を導入した。東本願寺境内の「御影堂」や「阿弥陀堂」、飛地境内である「大谷祖廟」などにQRコード決済の「J-Coin Pay」と「Union Pay」のバーコードが印字されたパネルを設置。スマートフォンなどで読み取り、金額を入力して支払うことができる。
導入している企業・団体→『東本願寺』
現金を持たない外国人参拝者も賽銭が可能に
【デジタル福引き】
東京都のWeb3.0スタートアップ企業のSUSHI TOP MARKETINGが京都府と山科聖天双林院の協力のもと、京都府が進めるメタバース共創プロジェクトの一環として、デジタル技術であるNFTを活用した観光とデジタル福引きを融合させたイベントを京都タワーで実施した。
導入している企業・団体→『京都タワー』『SUSHI TOP MARKETING』
20日間で5,906名(5,906個)もの方々にNFTを配布
【NEO KYOTO NFT ARTs】
学生の多い街としても知られる京都市において、Web3.0の仕組みを活用することで、アートと融合したクリエイティブな街づくりのエコシステム構築するアイデアとして企画されたイベント。京都市内の学生が未来の京都の空間やコンテンツをイメージしたNFTアートを作成して、グローバルに向けて展示・販売するプログラムとして開催された。
導入している企業・団体→『公益社団法人京都市観光協会』
販売収益の一部が市の教育に寄附
【デジタル授与所】
京都府京都市左京区にある世界遺産・下鴨神社ではお札やお守りなどを授けてくれる授与所で、「iD」「楽天Edy」「WAON」「nanaco」「Suica」などのキャッシュレス決済に対応している。京都府東本願寺とは逆に賽銭はデジタル未対応で現金のみとなっている。
導入している企業・団体→『下鴨神社』
電子決済希望の外国人観光客のニーズに対応
〈関連記事はこちら〉