Web3.0領域に参入する企業が増加するなか、こうした動きを支えるWeb3.0に特化したスタートアップの価値は今後さらに高まることだろう。こうした企業は将来的に株式上場する可能性も高く、今からでも動向を追うべきだ。
今回、編集部独自の視点で有力Web3.0企業を10社選定し、今後の見通しなどを研究した。
“Web3.0ネイティブ”な企業の存在は今後さらに重要視される
Iolite Vol.4で掲載した「日米株50銘柄徹底研究」では、Web3.0関連事業・サービスを手がける企業やグループを紹介してきた。名だたる企業が現在Web3.0領域に注目しており、実際に事業を進めていることがわかったはずだ。
当然、Web3.0関連事業・サービスを手がけるすべての上場企業を取り上げているわけではないので、その数はさらに増える。今後もWeb3.0に関連する取り組みは増加していくものとみられ、「NFTや暗号資産についてよくわからない」といった方でも、身近なところで大手企業が提供するサービスをみかけることがあるかもしれない。
こうしたサービスを支えるのは創業時よりWeb3.0領域に特化した事業を展開してきたスタートアップだ。現在上場しているほぼすべての企業は最初からWeb3.0領域に関連した事業を展開していたわけではなく、また社の方向性をシフトさせたとしてもWeb3.0関連事業で売上の大半を占めるようになるというのは現時点で考えにくい。
そのため、Web3.0に特化したいわゆる“Web3.0ネイティブ”な企業の協力は不可欠であり、その存在は今後さらに重要視されるものとみられている。
そうしたWeb3.0ネイティブな企業も、当然将来的な株式上場を見据えているはずだ。実際、海外ではWeb3.0関連事業を主として株式上場している企業が多数見受けられる。既存の伝統的な投資家としても、こうした企業は暗号資産に直接投資を行うよりも触れやすいため、エクスポージャーをとる上でポートフォリオに組み入れやすい。
もちろん暗号資産の市況が悪化すれば株価が暴落することもある。逆も然りで、市況が好調であれば爆発的な上昇をみせ多くの利益を得られる可能性もある。
将来の株式上場を見据え 注目すべきWeb3.0企業とは?
国内では直近でWeb3.0関連事業を主として株式上場した企業は見当たらない。しかし、刻一刻とその瞬間が訪れようとしている企業はいくつか見受けられる。
たとえば、NFTやブロックチェーンゲームに関する事業を手がけるHashPortはWeb3.0ネイティブな企業でありながら将来的に株式上場するのではないかと考えられる企業の筆頭候補だ。現在、三井住友と共に売買や譲渡ができないSBT(ソウルバウンドトークン)に関する取り組みを進めており、今後も関係を深めていくことが予想される。
HashPortは国内で初めてIEOを行い、独自トークン・パレットトークン(PLT)を通じて資金調達を行ったことでも知られる。また、精力的にブロックチェーンゲーム制作にも取り組んでおり、その存在感はWeb3.0領域にとどまらず大きくなりつつある。
また、同じくブロックチェーンゲームやNFT領域で実績を有するdouble jump.tokyoも有力候補だろう。同社は取引量等で世界No.1となったブロックチェーンゲーム「My Crypto Heroes」などを開発しているほか、企業向け資産管理サービスの提供などを行う。
現在はゲーム特化型ブロックチェーン・Oasysの活用に焦点を当て事業を進めており、日本のブロックチェーンゲーム領域おいて重要な立ち位置にいる。
HashPortとdouble jump.tokyoの両社に共通するキーワードは“ゲーム”だ。現在、国内の名だたるゲーム企業がブロックチェーンゲーム開発に乗り出しており、日本のWeb3.0を牽引する領域としてゲームを取り上げる声は少なくない。特に大手との連携も増え、実績を重ねる両社は、今後さらに安定した事業基盤を築くことで株式上場に向けた道筋を切り開くことができるはずだ。
また、暗号資産領域ではbitFlyerとコインチェックが株式上場の可能性を秘めている。
bitFlyerについては、かねてより株式上場に意欲的な姿勢をみせていた創業者の加納裕三氏が社長に復帰したこともあり、今後動きが加速していくものとみられる。bitFlyerでは3年間で4度にわたり社長が交代しており、まずは社内の基盤固めが急務だ。
また、暗号資産の市況悪化も重なり業績も決して良い状況とはいえないため、株式上場までにはしばらく時間を要することだろう。
一方、コインチェックはすでに株式上場に向け動きをみせており、米ナスダックにおいてThunder Bridge Capital Partners IVとの合併によるSPAC上場を目指している。当初は2023年内に上場する予定であったが、期間を延長した。
コインチェックの親会社であるマネックスは暗号資産事業を重要視しており、上場を通じてサービスの拡充や顧客基盤の安定化を図るとしている。
このほか、日本連動型ステーブルコイン「JPYC」を提供するJPYCや、国内有数のウォレット企業であるGincoもさらなる飛躍の可能性を秘めた企業としてあげられる。
JPYCは決済に焦点を当て積極的にライセンス取得等を行っており、先日発表した決済サービス「JPYC PAY」が広がりをみせれば加速度的に株式上 場に向けた動きを強めるかもしれない。
Gincoは暗号資産やNFTなどの需要が高まれば必然的に企業としての価値も高まるため、まずは市況の改善とそれに伴う実績の上積みが必要となるだろう。
大手との連携を強めるHIKKYやGaudiyも注目すべき存在としてあげられる。
HIKKYは「世界100都市のメタバース化」などを掲げメタバース事業を展開しており、VRイベント等で実績を重ねる。特に世界最大のVRイベントと位置付ける「バーチャルマーケット」では120万人以上が来場するなど、HIKKYのメタバースは高い人気を誇る。
米Metaがメタバースに注力すると発表したことで一時メタバースはブームとなったが、現在それほど注目度が高まっていないのが現実だ。しかし、こうした時期に事業を着々と進める企業の信頼度は後に高くなり、再びブームが訪れた際には業界を牽引する存在になる可能性もある。
Web3.0要素を取り入れたファンコミュニティ組成を手がけるGaudiyは、日本の強みであるIPに焦点を当て事業を拡大させる。ソニーやKDDIなどから出資を受けるほか、今後は強力なIPを有するサンリオと共にサービスを展開していく予定で、動向次第では非常に早いタイミングで株式上場する状況も考えられる。
Web3.0のマスアダプションで必要不可欠なNFTを中心に事業を拡大させるMintoやスタートバーンも、業界の動向次第ではあるが早期の株式上場の可能性を秘めた企業だ。
MintoはLINEと提携し展開した「うさぎゅーん!」のNFTが約30万ダウンロードを記録するなど、Web3.0領域において屈指の実績を持つ。また、「北斗の拳」や「キャプテン翼」といった人気IPを活用したメタバースも開発しており、こうした事業が好調であれば株式上場に向け動きを加速させる可能性もある。
スタートバーンはデジタルアートに焦点を当て、作品の真贋証明を可能とするインフラを構築する。近年、ブーム時と比べてアート系NFTの需要は落ち込んでいるが、それがデジタルアートの将来性や需要減につながるわけではない。
アートにおいて課題となっている真贋を証明する技術は将来的に必ず必要となるため、今後の動向に注目が集まるはずだ。
将来的な上場を見据え今するべきこと
いずれの企業も暗号資産の市況や、NFT・メタバースの需要などに大きく左右されるため、現時点ですぐにでも株式上場することは考えにくい。そのため、まずはこれらの企業が現在何をしていて、今後どのような展開が予想されるのかを把握することから始めるべきだろう。
本項では今回名前をあげた企業における今後の見通しや特徴を紹介している。ぜひ参考にしてもらいたい。
※掲載データについて・公式及び業界団体HP等に掲載されている9月1日時点の一部情報を参照しています。
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