2026採用戦線異常アリ!! Web3.0・AI領域の採用市場の“今”

2025/09/30 10:00 (2026/01/07 15:28 更新)
Iolite 編集部
文:Iolite編集部
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2026採用戦線異常アリ!! Web3.0・AI領域の採用市場の“今”

ホワイトカラー不要時代の幕開けと採用市場の行方 生成AIが変える雇用の未来が若者に迫る選択とは?

長いデフレを抜けたことで、現在本邦の採用市場は、求職者有利の状況が続いている……とされてきた。

ところが、生成AIの急速な進歩により、これまで高給取りとされてきたホワイトカラーの労働は、不必要とされていく可能性が囁かれている。特に、人気のあったIT技術職の代替は急ピッチで進んでおりプログラマー不要論まで飛び交っている。

誰も経験したことのない転換の時代を迎えるにあたり、若者は何を見据えて就職活動に臨めばよいだろうか。

Recruitment 1
出所:統計局調査

従来型IT人材は不必要!? 求められる超高度デジタル人材

最近「高度デジタル人材」と呼ばれる人材が全世界的に求められている。AIやブロックチェーン、データ分析などを戦略的に活用し、ビジネスの変革やあらたな価値創造まで担える人材だ。それだけ優秀な人材が必要なのは当然だろう。これからの若者は、そうしたスーパー人材にならなければならないということだろうか。

Recruitment 2

IT化が進行していくなかで、当然だがIT人材の需要は右肩上がりに上昇している。我が国で不足すると見込まれる人数も2030年には45万人に達するとされるが、この人数の大部分が高度IT人材のことを指していると思われる。

プロンプトエンジニアの台頭IT業界を揺るがすあたらしい職業革命

数年前から「プロンプトエンジニア」という聞き馴染みのない職業が、世間で幅を利かせるようになってきた。生成AIに理解のしやすい命令文(プロンプト)を入力することで、より精度の高い成果物を設計、開発、最適化する能力を持つエンジニアのことだ。生成

AIごとの得手不得手を把握しつつ、狙った成果物を得るために、チャート図を設計するかのごとく生成

AI内の思考導線を逆算したプロンプトを考案していく人材は、これからの時代において必要不可だ。一方で、きちんとした完成物納品までの設計プランを構築できるプロンプトエンジニアがいるならば、「コーディングを専門とするコーダー」や、「Webサイトのデザインを行うWebデザイナー」、「UIディレクター」という職業は、すべて生成AIに任せてしまうことができる。設計が完成した後の、最も時間と工数がかかる実装という段階において活躍してきたような人材は、真っ先に首を切られる対象となっていくことだろう。

当然だが、工数が削減されプロジェクトに携わる人頭が激減するわけだから、1プロジェクト辺りに費やされる予算は下がっていく。しかし、これまで1ヵ月10人がかりで回していた100万円の仕事が、1人で回せるようになると考えると、たとえ、予算が50万円に下げられようと利益率は爆増する。もし、予算がそのままなら、1人のプロンプトエンジニアが10本の仕事をこなせば、月の売上1,000万円も現実的となり生産率という観点だけでみれば、劇的なパラダイムシフトが起こってしまうのだ。

これからIT業界を目指す若者はこの前提を踏まえておかなければ泣きをみることになるだろう。

就職して安心は早い!キャリアを切り拓くのは“学び続ける姿勢”

Recruitment 3

経済産業省の「新しい資本主義実現会議」は「三位一体の労働市場改革の指針(令和5年5月16日)」内で、『「キャリアは会社から与えられるもの」から「一人ひとりが自らのキャリアを選択する」時代となってきた。職務ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者が自分の意思でリ・スキリングを行え、職務を選択できる制度に移行していくことが重要である。」と公表している。

つまり、これから社会人となる人は、会社の教育制度に甘えるだけではなく、職場で自らに必要とされるスキルを調査し、スキルベースで学習をし続ける必要があるということだ。このスキルベースという考え方は、今働いている人にも通じる。

生成AIの登場で従来型のスキルの陳腐化が顕著となってしまうなか、現在働いている労働者だけでもなく、これから社会に出る学生たちも、学校で身に付けたスキルがすぐに使えなくなる可能性がある。経済産業省は、生成AI時代に必要な人材・スキル(リテラシーレベル)の考え方として『マインド・スタンス(変化をいとわず学び続ける)やリテラシー(倫理、体系的理解等)』『プロンプトの習熟、言語化能力、対話力等』『経験を通じて培われる、「問いを立てる力」「仮説を立てる力・検証する力」等』とまとめている。

長い学生期間の終わりがみえほっとしている人も多いだろうが、これからの時代は一生かけて学ぶ心構えを持たないと、AIに職を奪われてしまう。生成AIがどう進化するか、見通しはまるで立たない。1つの方法に囚われない柔軟な発想と、新情報を常にキャッチアップする能力の両立が、高度デジタル人材への第一歩となっていくだろう。

初任給40万円超もあたりまえ!? 日本でも始まったジョブ型雇用

Recruitment 4
富士通は、2026年度入社の新卒採用から、一律の初任給を廃止。ジョブ型の雇用制度に移行すると発表している。同社は2020年から一般社員や幹部職員を対象にジョブ型雇用を開始し一定の成果をあげている。

人材確保のため、新卒初任給を引き上げる企業が相次いでいる。企業側からすると40万円超の給料を支払うからにはそれなりの働きは期待する。新人が人並みの仕事ができるのは本来すごいことなのだが、人並みの力しか示せないとどうしても「ハズレ」と認識されてしまう。企業はハズレ人材雇用のリスク軽減のため、「ジョブ型雇用」を始めている。

終身雇用からスキル雇用へ変わる日本の雇用と働き方

少子高齢化により、労働者の確保はすべての企業にとって大きな課題となっている。求職者へのアピールとして、労働条件の改善に着手する企業は多い。なかでも、すぐにでもできる条件改善として、賃上げを選択するのは理にかなっている。

しかし、人件費は、企業にとっては経費に計上される。内部留保がある程度潤沢にある企業は経費が膨らんでも耐えられるが、中小企業は経営計画のなかで、経費が異常に膨らむことに耐えられない。

そこで、近年再注目されているのが、「ジョブ型」の雇用だ。ジョブ型雇用では、仕事の内容や役割に応じて待遇を変動させる。たとえ同期入社であっても求職者のスキルに応じて、給料に差をつけることで、求職者は高額な初任給を受け取ることが可能となり、企業としては入社時から高度な専門性を持つ学生を、経営戦略に則った形で獲得することができる。

Recruitment 5

求められるのは肩書きではなく”できること。未来を切り拓くのはあなたのスキルだ。

他方、初任給はおさえられた形となるが、一律で会社に必要な業務を教育し、最終的には一定の給与がもらえるだけの人材に成長させてもらえる雇用形態は「メンバーシップ雇用」と呼ばれる。日本では長らくこの形態での雇用が続いてきた。すべての人材を一定の能力以上に引き上げられるため、日本企業の人材のレベルが高いといわれる一因となっていた。

また、すべての人がある程度の業務をできる体制となるため、仕事から属人性を排除できるというメリットもあった。

だが、誰もができる仕事は、AIで代替できる時代になってしまった。これからは、より属人的な仕事にのみ真の価値が生じる。ジョブ型の雇用は浸透していくだろう。

一方でジョブ型雇用は良い面ばかりではないことにも注意が必要だ。ジョブ型雇用で採用してもらえるだけのスキルを身に付けられなかった人と、優秀な人材の間で経済格差は広がっていくし、ジョブ型雇用ではプロジェクト単位での雇用となる場合も多く、プロジェクトが終了すれば契約解除、すなわちクビになる場合がある。安定した終身雇用を目指す人には厳しい時代となることが推察される。

実際、2024年に4,000人規模の退職者募集を余儀なくされた東芝や、テレビ向けパネル工場を売却せざるを得なくなったシャープなどは、ジョブ型雇用を採用していない。この2社の業績があがらないのは、AIやDXに秀でた人材の獲得競争で競合他社に負けているからだという指摘は大手メディアからも漏れ聞こえてくる。

与えられた仕事さえこなせば高給がもらえ、研修や勉強会もないジョブ型雇用は、自分の時間を確保できるすばらしい雇用形態に思える。終業後は、毎日趣味を楽しむことだって可能だ。しかし、スキル以上の能力は決して教えてもらえない働き方だ。空いた時間を使って、あらたなスキルを身に付けたり、人間関係を構築したりなど、努力しなければ解雇が待っている。

実態は今より厳しい雇用であることに注意が必要だ。

Recruitment 6
プロジェクトに応じて必要な人材をその都度集めていくことは、0から人材を育てるよりも効率がよい。ジョブごとにチームビルディングをしていくというのが、ジョブ型雇用の基本的な考え方だ。プロジェクトの進捗は加速するが、一方でジョブが完遂してしまえばそのチームは解散することになる。労働者目線でみると何十年も先を見据えた長期の資産形成の展望が立てにくく、国家単位では経済がシュリンクするとの指摘もある。

AI失業時代に対応できる“職を奪う”人材になれ!

ここでは少し視点を変えてみたい。生成AIを使いこなすことができれば、あなたにスキルがない仕事であっても、受注できる可能性がある。あなたが仕事を奪うことで広がる未来を紹介しよう。

Recruitment 7
AIを開発できるエンジニアの需要は年々増加している。自身がエンジニアにならなくとも、どのAIなら事業に最適か判断し、提言したり委託先を検討できる人材も日本では重宝される傾向がある。

生成AIが得意なことと苦手なことを分類してみよう。「文章や提案書の作成」「要約」「翻訳」といった文章の生成については、圧倒的な速度で対応してくれることは、多くの人が気付いているはずだ。同じく、「企画のアイデア出し」や、「壁打ち」なども人間が行うよりもすばやく多様な意見を出してくれる。「簡易のプログラミング」や「データ分析」も得意といってよいだろう。

一方で「最新情報の検索」や、「非公開情報をもとにした業務」、「将来の予測」や「答えの出ていない問題」については、まるで見当違いな回答を出してくる。

このことから少なくとも現状の生成AIは、「人間でも時間をかければできる業務」については、人間を遥かに超えるパフォーマンスを発揮するが、「予測やまったくの0からものを想像する業務」に関しては、人間よりもスペック的に劣るということがはっきりする。

人間は、たとえ間違ったデータからスタートしていたとしても、自分なりに考えて推論を導き出し、それに向かって進んでいくことができる。万が一間違っていた場合は、きちんと謝り責任を取った上で、修正を加えて歩み続けることもできる。

生成AIは、万が一間違った結論を出した場合に、責任を取ることができないため、プロジェクトに対する欲望や熱意といった推進力を保つことが現状できない。ここに、AIと人間における明確な差がある。

これまでのオフィスでは、時間をかけて丁寧にする仕事というのが評価軸となっていた。

しかし、手仕事で美を追求する職人の世界や、丁寧でなければ人の命にかかわってくるインフラ事業者、ソーシャルワーカー以外で、時間をかけて丁寧に行う仕事がはたして必要だったのかというと、今となっては疑問も大きい。

ノートを麗にとることに長けてはいたものの、テストの点数はよくない学生といった具合の社会人が、日本のオフイスにはたくさんいる。これから社会へ出ていく若者には、ぜひこうした悪しき先輩たちから、仕事を奪い競争力を高める企業のリーダーへと踊り出てほしい。

企業が求めるAI人材とは、何もAIを開発できたり、バックエンドエンジニアとして活躍できたりというだけではない。現状のAIの得手不得手を把握し、自分に与えられたタスクのうち、「時間をかけていた業務を短縮してしまおうと考える力」や、「どういうことを事業化したいという欲望が強い人材」もAI人材と考えてよい。

柔軟な発想と実行力で、AIを自分の手足のように利用できる人というとすごいことのように思われるが、実態は至ってシンプルだ。今の若年層だと、当たり前にこの位の事は行えるはずだ。翻すと、日本企業の多くが、この程度の活用法もできていないという大きな問題を抱えている……。

Recruitment 8
現在AIに奪われるとされている仕事を並べてみてみると、いわゆるオフィスワーカーの仕事が多いことに気付く。イラストレーターやフォトグラファーは、広告に使いにくいような個性を出す作家性が求められるようになるだろう。

AI人材はなぜ就職に有利?

1:AIシンギュラリティが近い

AIの能力が人間を超えるシンギュラリティは、もう間近だ。そんな時代に、AIの得意領域を把握できていることは大きな強みとなる。

2:ビジネスと労働環境の激変に対応できる

労働環境はAIで劇的に変わる。特に事務作業を行う人間などは不要になる。だが、AIに事務作業指示を出す側の人間は常に必要だ。

3:手を動かす工程は置き換えられる

事務作業だけでなく、たとえば特色を出さないWebサイトの画一的なデザインや、SEOライターなどの仕事はなくなっていくだろう。

今からでもAI人材になれるロードマップ

STEP 1:目標設定

  • 目的を明確にする
  • ロールモデルを明確にする
  • 目標の適宜見直し

STEP 2:情報収集

  • 最新のAIニュース
  • 最新生成AIツール活用事例
  • AIスキルの習得

STEP 3:実践

  • まずは試してみる
  • 仕事で使ってみる
  • 環境を整える

STEP 4:生成AI推進企業で働く

Recruitment 9

日本人学生の起業意識は世界最下位? 就職より起業を狙うべき4つの理由

企業が求めている人材の希望条件が高くなっている上、長期安定雇用が見込めなくなっている。それならば、自分で事業を起こしてしまうという手もある。
実は、日本ではスタートアップ企業を立ち上げるのに際して、潤沢な支援制度が用意されている。学生の特権を使って、会社を立ち上げるという選択肢も悪くない。

REASON 1:国による充実の支援
経済産業省が用意している「J-Startup」、中小企業庁の用意している「StartupGoGo」など、政府系が推進するスタートアップ支援を受けることができる。

REASON 2:低リスクでチャレンジ
ほとんとの学生は生活の基盤を親や学費の支援によって安定させている。つまり、事業が失敗しても生活がただちに困窮するリスクが低く、再挑戦もしやすい。

REASON 3:事業に向き合う時間が潤沢
大学生の長期休暇は、社会人と比較すると遥かに長く、自由時間も多い。この時間をビジネスの準備や起業活動に集中して使える点は大きな強みとなる。

REASON 4:卒業後の選択肢が広がる
起業経験は、採用担者に行動力や実務スキルをアピールする強力な武器だ。活動を通じて、投資家や専門家とのつながりを得られる上、実務経験まで積める。

Recruitment 11

欧米のIT企業創業者をみてみると、大学在学中に自分のやりたいことをみつけたら、自分で資金を調達し、大学を卒業することなくそのまま起業に至るケースが散見される。日本のように新卒一括採用制度がない欧米では、大学卒業という資格自体に対してよほどの名門校でない限りそれほど価値がない。

大学はスキルを身に付ける場所であり、早々に社会で自分のスキルを試したい人にとっては卒業する意味がないのだ。

日本では新卒一括採用という慣習があった。この方法は1度に大量の人間を採用するため、個人のスキルを精査する時間がなく、「とりあえずこの大学の卒業生ならこのくらいのスキルはある」という見込みで採用を続けてきた。

しかし、この悪習もなくなろうとしている。「よい大学に入れば、よい企業に入れる」という考え方が通用しなくなってきた。いずれ、大スキルを精査する時間がなく、「とりあえずこの大学の卒業生ならこのくらいのスキルはある」という見込みで採用を続けてきた。

しかし、この悪習もなくなろうとしている。「よい大学に入れば、よい企業に入れる」という考え方が通用しなくなってきた。いずれ、大学卒業という肩書は効力を失っていくだろう。

はたして、研究者を目指す人以外が大学に入学するメリットはなくなってしまうのだろうか。実はそんなことはない。大学では、キャンパスの設備や教室を利用し、イニシャルコストをかけずに、起業へチャレンジすることができるのだ。大学にいる間なら、社会で役立つスキルを求める学生を対象に、起業支援プログラムやインキュベーション施設の用意など、専門家による充実した起業サポートを受けることが可能だ。

社会人になってからこうしたサポートを受けると、どうしても仕事をしながらとなり時間がかかるが、学生時代なら長期休暇もあり、集中して起業準備ができる。何よりまだ若いので、失敗したとしてもリスクがほとんどない。むしろ学生時代に起業に挑戦したという経験は、プラス要素として企業からみられるだろう。大学に入り、何をやりたいかという目標がみえてきたなら、起業を検討してみるのもありかもしれない。

Recruitment 12
出所:経済産業省令和6年度大学発ベンチャー実態等調査

日本の大学発ベンチャー企業の数は、諸外国に比べるとかなり少なく、大学から革新的なビジネスが生まれないことはさまざまなところで指摘されている。しかし、グラフをみればわかる通り、大学発起業数は右肩上がりに増えており、日本で学生実業家として羽ばたくことは、かつてのような夢物語ではなくなっている。


Column:3省合意の改正で何が変わるの?

2022年に「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方(三省合意)」が改正された。学生のキャリア形成支援におけるロードマップが明記されている。

大きな変化は、インターンシップに参加した学生の情報を企業が採用活動で利用できるようになったこと。インターンシップの定義は「企業における実務体験」「高度な専門性を要求される実務の職場体験」の2つだ。

自分で起業できなくても、企業での実務経験を経た学生は就職活動でより有利になる改正となった。

Highly Skilled AI Personnel News 1「米国でAI人材争奪戦が激化!! スタートアップ企業を悩ませるリバース・アクハイヤーとは?」

Recruitment 13

アレクサンドル・ワン

Scale AI社の共同創業者かつ元CEOであり、現在はMeta(旧Facebook)のチーフAI責任者。
1997年にニューメキシコ州で生まれた中国系米国人で、幼い頃からプログラミングや数学の神童として実績を残していた。MIT入学後、わずか1年で中退し、2016年にAIの学習に不可な「データラベリングとモデル評価サービス」を行うScale AI社を創業した。


人材のために企業を買う時代生成AI競争が生んだあたらしいM&A

生成AI開発で世界の最先端を行く米国のAI人材採用事情は、「ジョブ型雇用」の採用で右往左往している日本のさらに数段先に行く加熱具合をみせている。象徴する用語が、「アクハイヤー(Acqui-Hire)」だ。英語の「買収(Acquire)」と「雇用(Hire)」を組み合わせた造語である。

端的にいうなら、優秀な人材を確保するために、企業ごと買収してしまうという手段だ。

M&A(企業買収)というと、同業他社を買収し市場シェアを拡大したり、新規事業へ参入するためにノウハウを持つ会社を購入したりといった目的が一般的だろう。キャッシュを多く持つ企業を買収して資金調達力の向上を狙うといった特殊な事例もあるが、基本的には「少ないコストで事業を拡大すること」「ビジネス基盤を育てる時間をお金で買うこと」が目的だ。

ところが生成AIの開発トレンドの変遷はとにかく早い。そのため、ビッグテック企業がゼロから生成AI開発人材を育てているど"アキレスと”状態に陥ってしまい、永遠に追いつけなくなる。幸か不幸か、あたらしい産業である生成AI開発において注目されている企業はスタートアップが多い。そこで、シリコンバレーでは事業そのものの発展性よりも、優秀な人材獲得を主目的としてM&Aが行われるようになったのだ。

あくまで才能のある人材の獲得が目的のM&Aなので、買い取った会社の事業については考慮されないケースが多い。買収した先のサービスや事業がそのまま存続することは少なく、多くはサービス終了→人材が大企業発のプロジェクトに参加という流れになる。

この手法には批判も多い。「それまでサービスを利用してきたユーザーを切り捨てるのか」「事業価値が乏しい企業を購入することが人材獲得のコストとして正当化できるのか」「そもそも強制的な手段で採用した人材が、定着に結び付くのか」

などの声があがる。批判を受けビッグテックは、さらに絞った形での人材確保に動いている。それが「リバース・アクハイヤー(Reverse Acqui-Hire)」だ。ドライな目でみると、ビッグテックがほしいのは、プロダクトの開発を先導した特定の人材のみだ。そこで「スタートアップから主要人材だけを非常に高額な報酬で引き抜き、プロダクトや会社そのものは残す」という手法が使われ始めた。スタートアップは独立を維持できるためユーザーが不便となることもなく、優秀な人材のみ採用できるため、M&Aよりははるかに安いというのが大企業の言い分だ。


Keyword:リバース・アクハイヤー

大企業がスタートアップから主要人材を採用し、プロダクトや会社そのものは残すという採用手法。規制の目を逃れつつ、人材やイノベーションの源泉を獲得できるが、法的・倫理的な問題も多い。米国のAIやスタートアップを巡る過当競争環境において注目される戦略だが、多くの懸念も伴うため、今後の規制や業界動向に注目が集まっている。


企業ではなく人を買うリバース・アクハイヤーの課題

だが、スタートアップ企業からカリスマ的な人材が抜けた後に、その企業が無事に運営できるのだろうか。

2025年5月、AIによるコーディング補助ツール「Windsurf」を開発したスタートアップ企業・Codeium社をOpenAI社が買収しようとしていたとの報道が出た。Codeium社は2021年創業でありながら、OpenAI社が提示した金額は約30億ドル(約4,500億円)といわれ、典型的なアクハイヤーだった。この買収は、結局破談になったとされる。

報道が出てから2ヵ月後、現在AI開発競争に参画しているGoogleが、約24億ドル(約3,600億円)を支払い、Codeium 社のCEOら中心メンバーの移籍と、Codeium 社が所有していたー部独占ライセンスを購入したと発表した。

中心メンバーがいなくなったCodeium社はその後、現在AIエージェント開発で注目を集めるCognition AI社に買収されたが、技術と権利だけを剥がされもといた従業員らは解雇を検討されているようだ。また、今年6月にはマーク・ザッカーバーグ氏が率いるMeta社がデータラベリング企業のScale AI社の株式の49%を143億ドル(約2兆円)で取得したと発表。この出資は、同社の技術への投資ではなく、同社をここまで大きくしたCEOのアレクサンドル・ワン氏を引き抜くことが最大の目的といわれている。

Meta社は今後、ワン氏に同社のAGI、ASI開発のリーダーを任せる予定だという。

たった1人の優秀な人材に対して国家予算レベルの金額が動くようになってきた一方で、一般的に優秀程度の人間は容赦なく切り捨てられる。日本においてこのようなリバース・アクハイヤーの動きがあらわれてくるかどうか、注目したいところだ。

Recruitment 14
Windsurfを開発したCodiumを巡る一連の騒動は、リバース・アクハイヤーの問題を象徴する出来事として人々に刻み込まれることとなった。そもそも超高額でスタートアップや特定の人材を買い取ることが一般化すると、そこが人生のゴールとなってしまい、若者のイノベーションを奪うという意見があった。実態はもっと悲惨でイノベーション機会だけでなく職そのものが奪われたのだ。

Highly Skilled AI Personnel News 2 日本の高度AI人材が有利に働ける環境は自動車産業などの製造業!?

Recruitment 15
画像:京浜急行電鉄

品川駅西口地区 A地区新築計画

東京都港区高輪3丁目にあった「シナガワグース」跡地を利用して、地下4階・地上29階建て予定の建物を建築しようという再開発計画。京浜急行電鉄とトヨタ自動車が共同で行う。2029年開業予定。品川駅と周辺をつなぐ歩行者ネットワーク整備やバス乗降施設の強化など、国際交流拠点としての空間創出を目指す。


日本製造業が切り拓くエッジAIの未来戦略

AIが進化すればするほど、人間の仕事は代替され、雇用は減る。これは、金融とIT産業に国家のリソースを全振りをしてしまった結果、工業を崩壊させてしまった米国の状況をみれば明らかだ。あくまでも理想だが、日本では従業員の雇用は守りつつ、生成AIを使うことで今よりもさらに生産性をあげていく形が望ましいとされる。

偶然だが、日本という国は”もっている。幸運なのは「日本が生成AI開発で世界に遅れをとっている」という事実だ。

現在世界で何億円、何兆円と稼ぐ生成AIの開発者たちが行っているのは、世界中の利用者の90%が満足する回答ができる汎用型モデルの開発だ。当然だが開発には莫大な資金がかかるため、これからこの分野で日本企業が戦っていくにはハンデが大きすぎる。

一方で、ビッグテックは90%の需要を満たす開発競争に躍起になっているため、残り10%の需要を汲み取る余裕がない。

こうした細かな需要を汲み取り、ビジネスへと育てていくのは、日本の製造業の得意分野だ。日本の道路事情を考慮し小回りと燃費を向上させた軽自動車は今や世界市場を席巻しており、誰がこんなものを使うのだと笑われていたウォシュレットは、日本を象徴する先進技術として一般的になった。

Recruitment 16

日本の製造業の象徴でもあるトヨタ自動車は、2029年を目途に東京にAI開発拠点を立ち上げる。トヨタ自動車がここで開発を目指しているのは、自動運転技術を支える「エッジAI」だ。

米国や中国に比べて、日本の自動運転技術が遅れているという指摘があるが、これはある面では正しくない。広大な土地を持ち広い道路を真っすぐ敷くことができたこれらの国と、起伏が激しく狭く曲がりくねった道路が多い日本の国土事情では、自動運転技術に求められるそもそもの技術レベルが異なる。

ある程度真っすぐで広い道路なら、通ラグが発生しても事故につながりにくいかもしれないが、日本の道路事情ではわずかなラグが大事故につながってしまうだろう。そのため、日本の自動車産業では、通うグが起こらないように、車体そのものにAIを搭載するエッジコンピューティング技術が重視されている。

これは、自動車産業だけの問題ではない。

どうしても、職人が手作業で行わないと誤差が計測されてしまう旋盤作業を、それでも機械に任せられるように職人と一緒になってデータを計測し解析するAl。出荷基準を満たす農作物を画像認識で自動検品するAIといった、日本ならではの需要を満たすために開発した特定分野の特化型AIが、やがて大規模LLM技術と結びつき世界市場を席巻する可能性は十分にある。

これから、生成AI技術者として活躍したい人はIT企業に加えて、製造業も1つの選択肢となり得るのではないだろうか。


Keyword:ローカルLLM&エッジAI

大規模言語モデル(LLM)を、クラウドではなく、PCやスマートフォン、オンプレミスサーバなどのローカル環境に導入して動作させる形態のこと。データが外部に送信されないためプライバシー保護に優れるほか、データ処理をクラウドに依存せず、末端(エッジ)で行うため、リアルタイム処理が可能となり低遅延で安定した動作が可能となる。

一方で、クラウドのような高性能GPU群が使えないため、制度や応答速度に制限がかかるとされてきたが、DeepSeekの登場で可能性が大きく広がっている。

Recruitment 17
日本の道路事情を複雑にしているのが、地方道でよくみかける、劣化により消えてしまった中央分離帯の存在だ。自動運転AIは道路に描かれた情報で自分の位置を認識するため、日本で自動運転を普及させようとすると、道路全体の再整備かまったく異なる技術の開発が必要となる。

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Iolite(アイオライト)Vol.17

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